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魔女の宅急便@ほぼ全画面分析~その4

前回分はこちらからどうぞ。


【58】新天地の街へ訪れ、時計台のおじさんと空中でこんにちは。
右で首と胴体半分だけで「(組み線で)切れている」おじさんと、右からゆっくりと接近するキキ。
この、距離を縮めていく感じがなぜかアニメ的に素敵なんですな。

時計の文字盤のスケール感もいいですね


【59】新天地の最初は物量の嵐で魅せてくれますね。
何枚セルを重ねているんだろう?
それにしてもこの勾配曲線の坂の造形は素晴らしいですね。
街にモデルがあると聞きましたが、このΩ型の坂もモデルどおりなんでしょうか。


【60】飛んでいるキキ視点からの路上の風景が「全セル」ですね。
なんか「全セル」が登場すると「来たー!」って思っちゃうんですが、みなさんはどうですか?


【61】新天地に来て、魔女として注目されていて、面はゆい気持ちが一瞬口許をよぎります。


【62】宮崎アニメは「橋げたの下をくぐらせる」のが好きですね。
『紅の豚』では改造を終えた赤い飛行艇が、未明に川辺を、橋をいくつもくぐった末に飛び立ったのを思い出します。


【63】乙に澄まして飛んでいたら大事故寸前。あわてて道の角を曲がって、そうっと着陸するキキ。
肩がうわずって、両脚に緊張が走っていて、いたたまれないフォルムがよく造形されています。


【64】事故寸前のキキの振る舞いに、叱責に現れた警官。
アゴにへこみ(えくぼ?)があって、細かいところまで人物造形が凝ってます。作画監督か誰かの趣味のような。


【65】向こうから、泥棒呼ばわり(トンボの機転の利いた助け)を聞いて、キキのことを忘れて行動に出る警官。
警官の立ち姿のシルエットが、銭形警部そのままですな。


【66】また橋げたの下をくぐらせる。しかも下り勾配だってわかる空間造形。見事です。
通りを隔ててこちらに向かってくるヒゲとメガネのおじさん、誰がモデルがいそうな胴長のシルエット。


【67】敷石の舗道が全セルです。
このときのジジの歩きは2コマでしょうか?動きの質感が違います。


【68】警官から助けてもらったとは知らずトンボのアプローチに冷たいキキ。表情のひとつひとつが多彩ですよね。


【69】キキは怒ると(特に異性に対して怒ると)ガニ股になって歩く癖がありますね。
足の運びがガニ股なだけでなく、腰の位置の低さが強調される歩きなんですよね。この作画、誰の発想なんでしょう。


【70】泊まるところを見つけられず、公園の噴水台で途方に暮れるキキ。
セルと背景の「噛み合っている」様(組み線の問題)が如実に出るのが「階段」だと思うのです。
実際、このカットのキキは背景の階段に「身を預けて」いるかのようです。


【71】噴水台の階段に腰掛けるキキ。セル画のキキは、背景になっている階段の土台に「身を任せ」て、セルと背景がうまく「噛み合って」います。「噛み合い」は魔女の黒いワンピースの腰から下の広がりとして表現されています。


【72】途方に暮れつつグーチョキパン店の前を通り過ぎようとするキキ。画面の右端には伏線になる乳母車を押す女性が見えますね。


【73~1】「セルと背景が噛み合っている様子」はこんな何気ない情景にも反映していますね。
「セルで出来たキキの腕」は、異質な素材であるはずの「背景美術」に身を預けるように、もたれていますね。レンガ塀に隠れたキキの下半身はもちろん存在しません。

【73~2】これも「セルと背景の噛み合い」。
この石堤はキキとオソノさんの下半身を「隠している」わけではないのです。石堤の背景と「噛み合い・連携する」ことで「キキたちの下半身」は「存在しなくても・よくなって」いるのです。


【74】さて色トレースの効用。
このカットでは「おしゃぶり」の輪郭線は黒トレースですね。


【75】おしゃぶりのクロースアップ。やわらかい印象の肌色の色トレースになっています。


【76】おしゃぶりをお届けするため石堤の上から飛び降りるキキ。
ここでも「3層構造」が登場します。
①手前の「高み」と、③奥の「落差」をつなげる②「中間の石堤」。
石堤の陰に一瞬隠れてから現れることで、運動の奥行きを形づくる「3層構造」も披露されています。


【77】おしゃぶりを届けに右方向・横長へと飛ぶこのシーンも、横へ長い背景を用意し、セルと背景の割付けに苦労しているはずです。


【78】おしゃぶりを届けるキキ。
宮崎アニメが好んで使う「両側が高い塀になっていて、斜め奥に長く空間が伸びる」さまが採用されています。

【79】おしゃぶりの色トレース。全景の中での大小にあわせて、トレースの色を使いわけていますね。


【80】宮崎アニメは「いいひと」ばっかりになりがちな傾向があるのですが、このパン店の女性客の冷たい表情なんて、むしろちょっと怖い印象すらありますね。


【81】このしょぼくれた・おじさんの客も、生気がないですよね。貧困層かな?と勘ぐりたくなる風貌。
こういう、ハッとさせられる風貌の人物がときどき『魔女』には登場するんですが、これはスタッフの誰の貢献なのでしょうかね?


さて、ここらで項をあらためましょう。
「その5」でまたお会いしましょう。
ご清聴ありがとうございました。


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