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ジブリ私記・シーズン1

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ぼくの知っているジブリのことを書きました。
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2024年8月の記事一覧

踏み外して~ジブリ私記(9)

踏み外して~ジブリ私記(9)

★01
 最近は隔週で文章教室を受講するために東京と松本間を日帰り往復している。教室が開かれる前にちょっと時間をあけて東京に着いて、必ず書店とタワレコに立ち寄る。めぼしい本もすぐ買わず、記録しておいて、松本へ帰ってから地元の図書館や大学図書館にないか、確認する。なにしろチェックしているのは学術書なので、3000円は平気、6000円とかある。ネットで情報を集めたり、図書館で現物を確かめておかないと、

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ジブリの幻影くさぐさ~私記8

ジブリの幻影くさぐさ~私記8

 ぼくがこの私記を書いていくことで実現したいことのひとつに、あのジブリの給与明細のことがある。事情を知らないひとは、ぼくの名前を検索すれば給与明細の画像が出てくるはずだ。ぼくの名前は、ネット上ではジブリの給与明細と深く結びつくことになった。あれを流通させた当時ぼくは、ジブリの給与の額さえ伝えればあとは見たひと次第の解釈にゆだねればいいと楽観的だった。
 しかしあの給与明細はもっともっと知られていい

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あだ名と仮説~ジブリ私記(7)

あだ名と仮説~ジブリ私記(7)

 前回はぼくが宮崎さんにつけられた「あだな=逸材くん」の去就について書いた。
 それにしても、ひとりの青年がある会社に新入社員として入社したら、期待の意味をこめてあだ名をつけられる。
 まあよくあることだろうけど、ジブリファンからしたら、「あれれ?」とか思ったり、はしなかったでしょうか?
 そう『風立ちぬ』とまったく同じシチュエーションですよね。
 青年堀越二郎が飛行機製造会社に入社したとき、その

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③売らんかな、は結構ラクなんですよね。何書けば当座の注目を集められるか、とか。だからそういうの関係ないんです。むしろ意地悪な人たちの目論見をかいくぐって最後まで=気が済むまで、書き終えることが目標です。

②現段階では、ひと投稿、ひと投稿が手探りで書かれています。あの話題この話題ふわっと頭に思い描けるのですが、先々を決めるアウトラインは決めていません。
ひと投稿を書いている過程で書き手の内部で予想のつかないドラマが起きています。
それこみで、新たな投稿を探りたいと思っています。

①ジブリ私記はひっそり始まりました。ひと桁代の投稿はそれぞれ100人前後の読者がいるだけです。正直もう少し読者はいてもいいのになあと思いますが、へたに目立つと炎上をたくらむひともいるだろうし、先行きについては複雑です。

ひそやかな通達~ジブリ私記(6)

ひそやかな通達~ジブリ私記(6)

 もう30年も前のこと、ジブリはおそらく、将来の演出家になるだろう人材を発掘するという隠された目的をもちながら、表面上はあたかものんびりした構えでアニメ塾『東小金井村塾』を開いた。
 しかし塾生に選ばれた十数名の若者の誰もが「この塾で認められれば、もしかたしたらジブリに入社できるかもしれない」と考えていたはずだ。
 しかしそうした思惑は塾の開口一番、塾長の高畑さんの口から否定された。「そんな期待を

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どうこう、したとて~ジブリ私記(5)

どうこう、したとて~ジブリ私記(5)

 この『私記』を書くまでには、実にずいぶん時間が必要だった。せめて連載の序盤くらいはしっかり段取りを立てようと、あれこれ考えていたのです。
 この『私記』を書くにあたってはいくつか動機があったのだけれど、そのひとつに、ツイッターでアップした例のジブリの給与明細のことが念頭にあったのです。

 ふとある日、気づくのです。私がこのツイッター(X)上でその存在を知られているのは、本領のアニメ論考ではなく

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こうなった、いきさつ~ジブリ私記(4)

こうなった、いきさつ~ジブリ私記(4)

 このつづきものでは、くりかえしをいとわないことにします。
 全部を読んでくれるマメな読者はめったにいなかろうし、同じ事件、同じ光景を何度でもすこしずつさまを変えて描くのはこのつづきものの「試み」にふさわしいと思うからです。
 なのでこれから何度でもくりかえし書きつけるだろうけれど、ぼくがジブリに入ったきっかけになったのは宮崎さんから「お前には才能がある」と言われ、「だからお前はジブリに入るんだ」

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新しい帰還~ジブリ私記(3)

新しい帰還~ジブリ私記(3)

 ネット界隈ではぼくは『ジブリの給与明細を暴露したひと』ということになっているのだろうけど、ぼく自身は『20年の雌伏のときを経てジブリに還ってきたやつ』だと思っている。
 ぼくは一度ジブリに雇われた。普通の新入社員じゃない。宮崎さんから口説かれる形で入社したのだ。しかし理由はいろいろあるが、ぼくはそれから2年とちょっとでジブリを辞めた。その後、ぼくはジブリに入社する前に想定していた大学院に入り直し

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もう、そういう関係じゃなくて~ジブリ私記(2)

もう、そういう関係じゃなくて~ジブリ私記(2)

 ジブリにはうらみつらみは沢山あるけれど、いいところもいっぱいあった。
 たとえば「平等」。ふつうの会社のように目上のひとを「部長」とか「課長」とか役職で呼ぶことがない。みんな「さん」づけ。ペーペーの新入社員でも監督のことを「宮崎監督」ではなく「宮崎さん」と呼んでいた。「鈴木プロデューサー」ではなくてただ「鈴木さん」。スタッフ同士も基本的に「さん」づけだった。私は新入社員だったから「石曽根クン」と

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2年とちょっと~ジブリ私記(1)

2年とちょっと~ジブリ私記(1)

 これからしばらく私が体験したジブリのことを書き継いでみるとしよう。
 と言っても私がいち新入社員としてジブリに入社したのは『もののけ姫』の製作時だから、もう30年近くも昔のことをふりかえることになる。
 しかも私がジブリに在籍していたのはわずか2年とちょっとにすぎない。何十年も係わり、籍をおいた古参のスタッフからすれば、貴様になにを語りえようかと言われてもしかたない。それはそうだと気も引ける気持

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