見出し画像

TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」第8話 感想と解題 遠近法の話とと鏡像の話

TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」第8話、今回は桐生つかさカリスマJK社長アイドルと佐々木千枝ちゃんを中心にした物語でした。

人工的でも遠近法

今回のお話も絵作りは丁寧にできていたのですが、私の目を引いた絵作り上の工夫や魅力は2つありました。1つはこの遠近法(パース)です。

アイドルマスターシンデレラガールズ U149 第8話より

このカット、作中でも何気ない移動の場面なのですが、気をつけなければ破綻する構図でもあります。パースの付け方は消失点を2箇所持っている二点透視法で、さらにレンズ効果を考慮してあり、遠近法に沿った床にある線は超広角レンズで起きる歪みが作られています。

カメラの場所から見て最も近くにいる小春が最も大きく描かれており、つぎに実際の身長で彼女より頭1つ大きなプロデューサー、みりあと千枝は同じくらいの大きさに描かれています。ですから、この絵から遠近法のガイドを取り払うと、非常におかしなことが起こります。下手に作ると、小春が「大きな人」に見えてしまいます。

だからこそ、床や天井、店の中など設計したパースを正確に反映した背景が必要になります。

人物たちを動かしながら見てみると、その不自然さは大きく軽減されます。小春もカメラに向かって歩いてくるように動かされているため、それほど不自然なことにはなっていません。

この場面は最初のレイアウトを作り、設計された二点透視法に合わせて背景となる絵を作り、それぞれの人物がどこにいてどちらに動いていくかを計算して、動きを作る絵を作る必要があります。アニメーションの絵作りにおいては当然のこととは言え、油断はできないところです。

鏡の向こう

もう一つ気付いたこととして、千枝をカメラに収めるときに鏡が多用されていたことが挙げられます。実際の千枝ではなく、鏡に映った千枝が私たちの眼に見えるようにカメラの位置が選択され、実際の千枝の居場所などが巧妙に隠されているのです。

時には、鏡と鏡の間が壁のように横たわっており、空間を切断するかのように鏡に映った世界に入り込んでいます。例えばつぎに引用する場面のように。

アイドルマスターシンデレラガールズ U149 第8話より引用

千枝自身は画面左下の角、頭部だけが映り込んでいます。そして、鏡の中の千枝が衣装を前に、不安とも緊張ともうれしさとも付かない絶妙な表情をしています。まるで、千枝自身は鏡の中の方に居て、手前に居るはずの千枝本人はどこか別の場所にいるかのようです。

その、自分自身との距離感が、彼女の自信の無さや、自分自身を冷静に見つめる「自分を客観的に見ている誰か」の存在を示唆しているようにも見えます。

いざ衣装を身に着けて舞台に立つ、という場面で、彼女自身の腕が衣装に手を伸ばし、千枝は周囲の励ましや誘いを力に変えて舞台に立つのです。

アイドルマスターシンデレラガールズ U149 第8話より引用
奥に鏡があり、衣装と千枝を写しているのがカメラにとらえられている
手前のピントが合っている左手が千枝自身の左手

今回はこのあたりで。

この記事が参加している募集

よろしければサポートの方もよろしくお願い申し上げます。励みになります。活動費に充てさせていただきます。