佐分利敏晴

生態心理学とアニメーションを中心に、医療、教育、臨床心理学、自然科学のハイブリッドで、…

佐分利敏晴

生態心理学とアニメーションを中心に、医療、教育、臨床心理学、自然科学のハイブリッドで、様々なことを思うまま書き記していきます。古い作品ですが「マリア様がみてる」の解題を扱ったブログがあります。http://t-sub.air-nifty.com/affordance

マガジン

  • 「リズと青い鳥」感想と解題

    アニメーション映画「リズと青い鳥」の感想と解題をまとめました。

最近の記事

  • 固定された記事

自己紹介(今さら)

ひとしきりアニメ語りをし終えたあとでの自己紹介です。自分のことを他の方に知ってもらうために紹介文を書く、ということになると、ほとんどやったことがありません。それでもやっておいた方がいいと判断して、私が私を紹介する文章を書かせていただきます。 私のことを一言で紹介するなら、次のようになります。 肩書きをたくさん持っている、専門に学んできたことがたくさんある障害者 一言でいうとしてもここまで長くなるほど、私は複雑な背景を持っています。 障害者、有り体に言えば統合失調症と解離性

    • TVアニメドラマ「義妹生活」第6話「酢豚と雨」鏡を使った撮影の技

      TVアニメドラマ「義妹生活」の第6話「酢豚と雨」について、書こうと思っていたことがある。 一つは、アニメーション版では付け加えられた環境の変化について。原作小説にはない、ゲリラ豪雨が降るという要素が加わった。それによって、悠太の焦りがより迫ってくる感じがあった。 次に、エレベーターの中で、帰ろうとする沙季と迎えに行こうとした悠太が鉢合わせしてしまうシーンについての話である。 この場面の作り方に、少し驚いた。 「イマジナリーラインを越えてないか?」と。 実際のカット(画面

      • アニメドラマ「義妹生活」感想と解題②第5話「レイトショーとガチなやつ」について

        アニメドラマ「義妹生活」第5話「レイトショーとガチなやつ」では、およそ20分ある物語のうちおよそ6分をレターボックスサイズの劇中映画に当てている。しかもその「作品」に独自のスタッフとキャストが準備されている。こういった「贅沢な作り」が、作品に「意味的な余裕」を生んでいると思う。 「意味的な余裕」は「描かれないこと」を作り、「描かれないこと」があることを提示することによって「隠された意味」があることを知覚させることに成功しているように感じられる。結果それはこのアニメドラマに「

        • アニメドラマ版「義妹生活」8話までの感想と解題①「無口なドラマ」と「雄弁な映像」

          「義妹生活」というアニメを見ている。ここでも取り上げたことがある、同名の小説をアニメにしたものだ。Youtubeでの3話までの先行配信からずっとリアルタイムで追い続けているが、漸くこの作品の「ジャンル」がわかった気がする。 アニメ作品「義妹生活」は、「アニメドラマ」である。 これが私が至った結論である。 「アニメドラマ」と呼べる作品としてどのようなものがあるかを考えてみると、これがなかなか難しい。もっとじっくり考えてから、これについては考えてみたい。 画面の特徴1.固定

        • 固定された記事

        自己紹介(今さら)

        • TVアニメドラマ「義妹生活」第6話「酢豚と雨」鏡を使った撮影の技

        • アニメドラマ「義妹生活」感想と解題②第5話「レイトショーとガチなやつ」について

        • アニメドラマ版「義妹生活」8話までの感想と解題①「無口なドラマ」と「雄弁な映像」

        マガジン

        • 「リズと青い鳥」感想と解題
          7本

        記事

          ネタバレが多いクロス解題「僕の心のヤバイやつ 8」(原作)×「義妹生活 10」 その2

          今回は「逆境的小児期体験(Adverse Childhood Experiences : ACEs)」と、特に「義妹生活9巻、10巻」についてのお話です。 逆境的小児期体験とは、以下のように説明されます。 https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2019/192011/201907005B_upload/201907005B0011.pdf こう書くと「トラウマのことじゃね?」と思う方も多いでしょう。実際、これらは小児期に

          ネタバレが多いクロス解題「僕の心のヤバイやつ 8」(原作)×「義妹生活 10」 その2

          ネタバレが多いクロス解題「僕の心のヤバイやつ 8」(原作)×「義妹生活 10」 その1

          アニメ「僕の心のヤバイやつ」を初めて見ました。第2期の最初からということでかなり遅めですが、「乗り遅れ感」は少ししかありません。というのは、これを見てから原作のマンガを一気読みしてしまったからだと思います。 アニメの「僕の心のヤバイやつ」は、様々な点ですぐれているな、と感じる作品になっているかと思います。 「ゆっくり歩いた」がそのまま「ゆっくり歩く場面」として実現できていること。 キャラクターのかたちとこころの造形。 雰囲気にぴたりとはまる牛尾憲輔氏の音楽。 総合的な質の良

          ネタバレが多いクロス解題「僕の心のヤバイやつ 8」(原作)×「義妹生活 10」 その1

          義妹生活(小説版)8巻の表紙と9巻の表紙の違いについて(今さら)

          12月中に1本記事を作ると、毎月更新が継続するということで、今さらながらこの話題に触れる。小説版「義妹生活」8巻の表紙の特徴と、9巻の表紙の特徴について語らせていただく。 1〜7巻の表紙はどうなっているか 小説「義妹生活」の表紙は、ずっと主人公の二人の生活の一部を切り取ってきた。そして私が注目しているのは、二人の視線である。この「何気ない」一場面は、それぞれの巻の物語を象徴しているのではないか。それも、位置関係というよりも、二人の視線の絡まりあい方が非常に特徴的だ。 1

          義妹生活(小説版)8巻の表紙と9巻の表紙の違いについて(今さら)

          インポスター・フリーレン、インポスター症候群・シュタルク

          9話の戦闘は神作画なのか 気になったことではあったので、今更だがアニメ版「葬送のフリーレン」第9話の戦闘の場面の話をしたい。素晴らしい作画であることは確かだが、「神作画」と絶賛されるほどではなかったと、個人的にはそう感じている。 その手前の場面、シュタルクがジャケットを着る場面も確かに素晴らしい動きの作成が成されていたが、その場面も「動きのデザインとして優れている」と同時に「動きを見せるための技術が十全に用いられている」とは言えるものの、そこまっで褒めるほどか、と問われれ

          インポスター・フリーレン、インポスター症候群・シュタルク

          葬送のフリーレンにおける魔族と、北海道で死んだ一頭のヒグマについて

          肉の味を覚えたクマの末路 葬送のフリーレンにおける魔族の生き方と食い物についての情報を見た。まだ何かあるかもしれないが、もし、単純に「魔族」が「ヒトを捕食するためにヒトの言葉を真似て擬態する魔物」であり、ヒトの肉以外食べない習性を持っているのだとしたら、これほどに生存について危なっかしい生き物もいないと思った。 全く、「○○しか食べられない」進化という名の変容をした、袋小路にいる動物というものは悲しいものである。○○しか食べられないというのに国を作るほどに魔族が繁栄してい

          葬送のフリーレンにおける魔族と、北海道で死んだ一頭のヒグマについて

          自分の在り方を悩む主人公たち

          いくつか作品を読んでいて、主人公が自分の在り方について、自分はどういう人物なのか、どうなりたいのか、どのように変化していくのか悩む作品が比較的少ないな、という印象があります。 そのような意味で、さまざまな悩みと主人公本人の在り方が結びついている「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」というアニメーション作品は珍しく、また、骨太なものでありました。 最近読んだお話の中で、主人公が自分の在り方についてほとんど悩まないという作品にも出会ったことがあります。作品名は挙げま

          自分の在り方を悩む主人公たち

          何かね、「生活には生活アニメを」「生活アニメには生活音楽を」って、しみじみ思う。「日常系」じゃなくて、「生活系」。「サバイバル」じゃなくて「生活」。「義妹生活」のお供には、今は亡きNujabesのlo-fy hiphop。

          何かね、「生活には生活アニメを」「生活アニメには生活音楽を」って、しみじみ思う。「日常系」じゃなくて、「生活系」。「サバイバル」じゃなくて「生活」。「義妹生活」のお供には、今は亡きNujabesのlo-fy hiphop。

          「義妹生活」第8巻 感想と解題 2人に何が起きていたのか

          このタイミングでこの感想を上げるというのは時季外れにも思えますが、8月末には次巻が発行されてしまうので、今書いておかないと次への準備ができなくなるかもしれませんので、ここで書かせていただきます。 義妹生活、8巻の感想と解題、とくに浅村悠太と綾瀬沙希に何が起きていたのか、それが果たして「共依存」という切り口で説明するのが最適解か、というところまで記していこうと思います。 わたしは一応臨床心理学をかじっているので、工藤英葉先生よりちょっとだけですが詳しいのではないかと自負して

          「義妹生活」第8巻 感想と解題 2人に何が起きていたのか

          TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」第12話 感想と解題 これまでを振り返って

          そつなくまとめた高品質の「アニメーション」 TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」が12話を迎えました。 全体を通して総合的に観てみれば、それなりに好印象高評価の作品でありました。 確かに様々な問題も内包していますが、1つのまとまった作品として一区切りさせるには色々とトリッキーなこともしなければなりませんでしたでしょうし、それを含んでもリアリティを失わず、それでいて「アニメーションの自由」を謳歌する作りにもなっていました。 第12話の「無理」と「フィ

          TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」第12話 感想と解題 これまでを振り返って

          TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」第11話 感想と解題②子どもの伴走者

          前回の続きです。細かいところもちょっとずつ突きます。 プロデューサーがありすの親と面談を始めようとする場面。急速PANの後、プロデューサーをとらえるカットになったとき、彼はちょっと目をそらすような描写があるのが気になっていたのですが、彼は自分の左腕の腕時計を観ているのだと推測されます。「ありすがまだ来ていない」のは、「何かがあった」ことくらいしか考えられません。だからこそプロデューサーは焦るのです。 ありすを探している途中、一度だけ事務所の様子が描かれています。ここであり

          TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」第11話 感想と解題②子どもの伴走者

          TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」第11話 感想と解題①子どもの現実

          まるで映画を見ているかのような二十数分でした。 TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」第11話の感想と解題です。今回は橘さん……ありす、と、プロデューサーの物語でした。 アニメーションであることを活かした映像 第1話と比較しながら このお話は「ストイックな」演出になっていて、BGMが少なくリアルな効果音や役者(声優)の言葉や息遣いがよく聞こえる作品となっていました。これらのことについては多くの方が指摘されているとおりです。 その一方で、アニメーション

          TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」第11話 感想と解題①子どもの現実

          TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」第10話 感想 

          煙たい。本当に煙たい。 TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」第10話の感想です。 今回は「大人回」といってもいいほどに、先輩アイドルの面々、上司など多くの「大人」が登場しました。しかしながら、彼らがみな大人であったかといえば、それは疑問です。 プロデューサーの上司の一人は「仕事だから」「現実を見よ」と彼に言いますが、プロデューサーにとっての仕事は「U149の面々の活躍する場を確保する」ことであり、彼にとっての現実はU149のメンバーの面々が彼を待っ

          TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」第10話 感想