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沈黙の春:世界中の子どもに、生涯消えることのない
『センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目をみはる感性』を
授けてほしい (ニンゲンにきいてみた: 音楽プロデューサー 稲葉瀧文さん)


ニンゲンにきいてみた: 音楽プロデューサー 稲葉瀧文さん
「アニマルSDGs x うた」。EMI
=Education(教育) x Music(音楽) x Intractive(対話)を提唱する音楽プロデューサーの稲葉瀧文氏。アニマルSDGs編集部では、稲葉氏のブログ「恩学」より、自然のこと、動物との関係のこと、人間だからできること、などをテーマに発信してきます。

解剖学者で昆虫好きな養老孟子さんがこのようなことを言っていました。


昔は高速道路を走っていると窓ガラスに虫がバンバン当たってきて
すごく汚れていたのに、最近その汚れが少なくなってきたと思いませんか。
虫が減っていることには、気候以外にもいろいろな要因がありそうで、
相当深刻な問題だと感じています。1990年から2020年までの30年間で、
世界中で昆虫の8・9割が消えてしまったと言われています。



つまり生き物が増えなくなっている。

増えにくい環境を作ってしまっているのではないかと。
虫の変化を見ているだけでも、相当な危機が迫っていることがわかります。
虫がここまで減ると、次に鳥が減りますから。
虫が減ると植物が実らなくなって、山で食べられるものが少なくなります。

昆虫が居なくなると山の生態系が崩れるので動物たちの食糧が無くなる。
最近、鹿や熊が町中に出てきて餌を探すようになったのはそのこともある。
それをくい止めるのは犬を放し飼いにすることが一番効果であるが、
今の日本では無理な話であろう。
昔より地域住民のつながりが弱くなったから難しいのだと言います。

養老孟子



「センス・オブ・ワンダーを授けて」

海洋学者レイチェル・カーソンが残した言葉。



私たちは大人になって、つまらない人工的なものに
夢中になっていないだろうか。
自然の中に身を投じ、「センス・オブ・ワンダー」すなわち
「神秘さや不思議さに目を見張る感性」を子どもたちに授けることが、
今後、地球を守っていく私たちの使命だ。 

『沈黙の春』の著者
レイチェル・カーソンの最後のメッセージ

 

1962年に出版された名著『沈黙の春(Silent Spring)』は、
出版されるやいなや社会を揺り動かした。
なぜなら、急速な経済発展に伴い、農薬や化学物質が次々と開発されていた時代に、
その乱用の危険性を先駆的に鋭く訴える内容だったからだ。
こうした化学物質は、動植物の食物連鎖によって生体内に濃縮して蓄積され、
やがて環境汚染を引き起こす。



 レイチェル・カーソンは、最後は人間まで汚染される
と警告したのだ。人間が自然の生態系を大きく壊しているという
彼女の告発は、当時のアメリカ大統領をも動かし、
のちに環境保護庁が設立されるきっかけとなった。
もし、この時、彼女が警鐘を鳴らさなかったら、
地球環境は今よりもさらに汚染が進んでいただろう。



 「静かに水をたたえる池に石を投げこんだときのように
輪を描いてひろがってゆく毒の波。石を投げこんだ者はだれか。
死の連鎖をひき起こした者はだれなのか」

 

「沈黙の春』が出版された2年後、彼女は癌でこの世を去った。
56歳だった。亡くなった翌年に出版された彼女の遺作
『センス・オブ・ワンダー(The Sense of Wonder)』の中で
レイチェルは、幼い甥のロジャーとアメリカ・メイン州の森や海岸を
一緒に探索した美しき日々を回想している。



 ある秋の夜、彼女は当時1歳8ヶ月だったロジャーと海に出かけ、
ゴーストクラブを探しに行く。ロジャーは海辺に轟く波の音、風の歌、
暗闇に怖がることなく、自然の力に包まれた世界を幼子らしい素直さで受け入れる。
雨の日は森へ散歩にいき、水を含んでキラキラ輝く苔や、色とりどりのキノコなど、
豊かな自然からの贈り物を子どもに届ける。
毎年、毎年、素晴らしい光景を幼い心に焼き付けていたロジャーは、
ある日レイチェルの膝の上で満月を眺めながら、「ここにきてよかった」と
言ったそうだ。

 

この本の中には、とりわけ<はっと>させられる一節がある。
「子どもたちの世界は、いつも生き生きとして新鮮で美しく、
驚きと感激にみちあふれています。残念なことに、わたしたちの多くは
大人になるまえに澄みきった洞察力や、美しいもの、畏敬すべきものへの
直感力をにぶらせ、あるときはまったく失ってしまいます。

もしも、わたしが、すべての子どもの成長を見守る善良な妖精に話しかける
力をもっているとしたら、世界中の子どもに、生涯消えることのない『センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目をみはる感性』を
授けてほしいとたのむでしょう」



 環境問題を考える日々の中で、今一度私たち大人も、森の声、海の声、
地球の声に耳を傾けてみてはどうだろう。
私たち大人は果たして、レイチェルのように自然の尊さに対する
子どもの純粋な感性を守ることができているだろうか。
彼女の言葉を胸に行動しよう。「地球の美しさについて深く思いをめぐらせる人は、
生命の終わりの瞬間まで生き生きとした精神力をたもちつづけることができるでしょう」



 自然環境の劣化は天候だけの問題ではなく、殺虫剤や除草剤などをまき散らすから
多くの昆虫が殺されるわけです。そして昆虫と共に鳥たちもいなくなる。
自然に対する人間の畏敬が無くなり、山や森を開発することが
文明だと勘違いをしている。これは神をも畏れぬ冒涜である。
今や森だけではなく世界中の海も、生活汚染水、工場排水、原子力処理水、
海上開発などで汚れてしまっている。
最も深刻なのは家庭用ごみから出て来くるプラスティックや発泡スチロール類である。
釣り具から出る針や釣り糸も魚や亀に絡まって深刻な問題となっている。



 悪事を行っている人間もそれを見逃している人間も同罪である。

 一度壊れた大自然は二度と戻ることは無い。


稲葉瀧文 (恩学 2024年5月16日より)

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音楽プロデューサー 稲葉瀧文

恩学とは
 音楽プロデューサーとして生きてきた中で、常に人の心を見つめながら、感情の発露を気に留めてきました。時代によって移り変わる人としての価値観、その価値観によって変わる感情。自分から作り出す精神的な強さや脆さ、他人から影響を受ける感情の起伏。喜怒哀楽は個人の中にあり、それぞれが喜怒哀楽のガラスの針を持っているのです。些細な事で喜んだり悲しんだりするのは、そのガラスの針が左右に振れるからです。その為に先人達は仏教書や哲学書を読み、切磋琢磨しながら過酷であり又遊楽な人生を過ごしてきたわけです。
 日本人としての心の有り方を調べていく内に「恩」という文字に強く惹かれました。人として「生老病死」の一生です。生まれて、老いて、病気になって、死んでいく中で、他人から受けた思いやり、やさしさ、心づくしが、どれ程勇気付けられた事か、誰でもが経験している事です。
 その受けた「恩」を返さなければなりません。私自身の経験から出た「恩返し」の話や本で読んだ話、人から聞いた話、それらを文字にして書き連ねてみようと思います。徒然なるままに稚拙な文章ではありますが、ご一緒して頂けると嬉しいと思います。
2010年2月14日


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