4.始まりへの道標
英語とラテン語
英語にはday「日」という語がある。
daily「日々の」はそこから派生した。
diary「日記」はどうだろうか。
これは外来語でラテン語のdiēs「日」→diārium「日記」に来源する。
ラテン語は古代ローマ帝国の言葉で英語と同じく印欧祖語の末裔に当たる。
ではこのdayとdiēsの繋がりはどうだろうか?
音も意味も似ているが実は別語源である。
diēsと同源の本来語はTuesday「火曜日」のTues-で(元々神名由来)、これは北欧神話の軍神(つまり古ノルド語)のTýr-「テュール」とも同根になる。
だが語源が同じか違うかなどどうやって実証できるのだろうか?
そのナビゲーションも兼ねつつ印欧語族について解説しよう。
古代言語の起源
インド神話や仏教文献のサンスクリット語、ギリシャ神話を伝えた古代ギリシャ語、古代ローマ帝国を担ったラテン語。
古代のインドとヨーロッパという離れた地にありながら、これらは驚くほど似通っていた(前回)。
わかりやすいように例文を用意しよう。
文には「父」「母」「~もまた」「3頭の」「羊を」「導く」をこの順番で使ったが(語順はかなり自由)、近似性が直感的にも把握できるだろう。
この事実は近世から近代の東西交流の中で驚きをもって迎えられた。
後にはそこから歴史言語学/比較言語学が生まれ、サンスクリット語、古代ギリシャ語、ラテン語はすべて1つの超古代言語――印欧祖語から派生した同系グループ(印欧語族)と考えられるようになった。
1つの言語というのは大まかな捉え方であって注意も必要だが(別の記事で述べる)、この閃きは信頼を得て久しい。
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