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【技術関連】今日からPM(炎上プロジェクト①)

おはこんばんわ。あにき@消防車です。

このシリーズでは炎上プロジェクトをどうやってマネジメントしたか、を書きたいと思います。

消防車と言われ続け早10年余、数々の炎上プロジェクトを経験してきたわけですが、主なパターンは下記の通りです。
①そもそも作れない(笑)
②KPIが定まっていない
③ビジネス要件が固まっていない
④ヒト....に恵まれなさすぎる

大体が①~④の内どれかが原因だったりします。
特に厄介なのが②ですかね。リカバリが効きづらいという意味では。
(①はクライアントを諦めさせれば終わらせられるので)

なので②の案件を紹介し、どういう消防車っぷりを発揮したかを語ります。

先ずはプロジェクトの全容から。
・大手証券会社のプロジェクトで、異常な数(5社ほど)のマルチベンダ体制
・ベースとなる基幹システムは不動の位置にあり、一切の仕様変更は受け付けない
・ベースとなるネットワークも同様に不動であり、構成そのものを大きく変更することはできない
・末端のデバイスに機種単位での制限がある
(PCであれば型番●●、モバイルは●●という機種といった具合)
・システム規模は大体5000万規模で中規模
・プロパの開発体制が人数が足りなくて組めずに、
 流動的でありつつも5名弱の脆弱な体制
・音声認識やAIの絡むシステム

最後のポチで嫌な予感したヒト正解です。

その証券会社では商跡全てを記録しておく必要があり、商跡記録のサブシステムとして「音声認識自動入力日報」システムの構築もスコープとなりました。(10年くらい前の案件ですかね)

「音声」を「自動で」解釈し「日報」にして「商跡を残す」システムなのでどの程度自動化できるかがKPIになってしまいました。

これが炎上原因となります。

音声認識の認識率を高める要素として大雑把に
①辞書データ(教師データ)の数
②音素間でのコーパス(関連性)の作成とその精度
③マイクの性能
当時はこの3点が重要とされていました。が、辞書データは企業機密のため開発時にはお客様から提供されず③の端末も前述したとおり固定です。

このPoC環境が出来てから、「認識率ガー」「意味が伝わらないー」と騒ぐ客の圧に耐えられなくなり、PMが離脱(!!???)
お客様の指名が入り私がPMになりました。

10年以上前Deep Learningなんて言葉もほぼ普及していない中、各種制約事項と①~③の状態を勘案し、私が思いついた着地点は「案件を如何にソフトランディングさせ、商用化させずに終わらせるか」という考えでした。

最初は音声認識&AIなんていう新しい技術に取り組めることにワクワクしてたんですよ。でも、現実もう積んでいる。1月近く性能向上施策に取り組みつつもクロージングの機会を作るため順次行動を起こし始めました。

まず最初に取り組んだのが、開発ベンダの開発稼働を抑え、調査に注力させることでした。開発を牽引していたメンバを開発から性能調査にタスクをシフトさせ、ベンダ内に同一要員数で2グループを設けました。

1つのグループは「進捗を見せるためだけのグループ」
もう1つのグループは「音素・コーパス・マイク性能をトコトン数値化するグループ」

お客様から見れば、毎週定例のたびに今まで提出していたWBSや課題表以外にも性能検証結果というアウトプットが増えるので、「改善努力」が高く評価されましたし、そのうち「あにきさんのプロジェクト予算大丈夫??」とまで心配される始末。途中から入って一気にアウトプットを出し始めたのでお客様満足も上がり、雑談も増えました。

ここをチャンスと、喫煙所で一言「呑み生きませんか??」。
OKをもらい一気にシステム統括部長(このシステム統括部長をY武氏とします)と距離が縮まりました。
導入判定はユーザ部門(このPJの場合は営業執行役員等)が判断するので、彼も一緒に頭を悩ませてくれました。

で、出てきた結論は「デモをやろう」というものでした、しかも営業の執行役員だけじゃなく他の役員も呼んでというもの。

Y武氏の人脈と行動力に押されつつもデモ準備は進みました。
辞書データは手に入らないので、日経新聞の過去文書をデータ化し、辞書としてAIに覚え込ませテストを続け、何とか認識率も90%を超えてきた頃定例会で「いよいよデモやろう」と一言。(今思えば本番移行判定を自分でやらないY武氏の目論見に気がついていたら良かった。。)

延々と業務と関係ないデータとにらめっこし、チームのライフも切れそうだったので遠慮しつつも「OK!やりましょう!!」と回答。いよいよデモは2週間後と決まりました。

そこまでギリギリのチューニングを重ね当日の認識率はゆらぎつつも98%
アプリに話しかける→音声認識→日報風に出力→「手動で若干の修正」の手順で進む予定。準備も万全。早々に体制を組みデモの日をむかえました。

当日のデモの仕切りはY武氏「ではあにきさん準備は良いですか?」
私「準備OKです!!」Y武氏「ではお手元の新聞を広げてモバイル端末に向けて読み上げてください」。。えっ!?オレ読む手はずじゃないの??

次々と新聞を読み上げる役員たち、脂汗がどっと出ました。
いくら指向性マイクとはいえ他の人の音声を拾っちゃう!?

案の定認識率は90くらい、「それではお手元のタブレットをご参照ください。何の位の精度か見てみてください」とY武氏。「待って待て」と私が止めよう目配せしても「手動での修正」をさせないY武氏。。。オワタ。。。

「認識率90%も出てれば安牌じゃん」と思う方もいるかも知れませんので注釈を「私は日本の総理大臣です」→「わたしはにほんのそうりだいじんです」これの認識率90%って「わしのにほんはそうりだいじんです」みたいになる。これじゃぁ意味が変わっちゃう。

音声認識は「ほぼ100%」の認識率じゃなきゃ成り立たないんです。

これをあくまで手直しさせないY武氏。当然役員からは「あれ?あにきさんこれ壊れてるの?」「使えないじゃないですか」「実用じゃちょっとな」といった声が。脂汗をかきながら認識率の説明をして「90は出てます!」と言ったあとY武氏の顔を見ると大きくうなずく。

察しました。ハイ。このデモは音声認識の実用化の為のデモではなく、音声認識の現実を役員に見せるデモだったわけです。

この後の質疑応答の30分は地獄でした。「使えないものに投資できるか!!」「そもそも出来ない事を提案してるんじゃない」と詐欺師扱い。唯一の救いはプロジェクトメンバーを連れてきていなかったことですね。

私のライフがゼロになりかけてきた頃にY武氏「まだ早すぎる技術です。使い物になりません」と止めの一撃。見事お蔵入りを果たしました。

ここで終われば良かったんですが、続きます。

一旦ソフトウェアとして組み上げたものはハードと一緒に納入し証券会社の資産にしなければならないルールなのですが、もう役員一同「こんなもの資産にできるか!!」と猛反発。プロジェクトは解散になり、音声認識ソフトとハードがお客様先のデータセンター内に置き去り。「良いよほっときなさい」とY武氏。。

プロジェクト消滅とともにY武氏は異動になり「なにか変だな?」と思った私はお客様内で内偵を進めるとY武氏は証券会社社員ではなくシステム子会社の事業部長だったことが発覚。プロジェクトを破壊し去っていったY武氏にもやもやしたものを感じながら、各種資材放置のママプロジェクトは終了を迎えました。

ここで全て終わったと思ってました、その3年後資産化されていない音声認識サーバが収められているデータセンターが取り壊させれる情報を得るまでは。

一度納めた物を搬出するには資産管理システムと突合され初めてデータセンター外に出せるのですが、どうなることやら。。と思っていたら3年ぶりにY武氏から鬼電が。「あにきさん大変だ!!音声認識サーバー資産化されずに放置したままだったから脱税行為になる!!助けてくれ!!」と。

大変な事だが「正直に商用化されなかったから放っておきました」と誤りましょうと提案したのですがY武氏は「駄目だ!もう遅い!!秘密裏に処分する」と行って聞かない。

でどうしたかというと力技ですよ。

Y武氏とサーバーラックから取り外し、毛布にくるんでデータセンターの2階の窓から深夜に下ろし廃棄。

完全に資産隠しの片棒を担ぐ羽目になってしまいました。。。

あれ??どうやって炎上プロジェクトを解決したって話をするはずが、犯罪スレスレの話に。

疲れているんでしょう。

今回はここまでで。ではでは。

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