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物語の媒体のひとつとしてノベルゲームという選択肢を【国士舘アニ研ブログ】

こんにちは。鯖主です。
今回も飽きずにノベルゲーム布教です。
そもそもノベルゲームって何?という方はこちらを読んでから本記事を読むことをオススメします。

さて、皆様は「物語の媒体」と言うと何を思い浮かべるでしょう?多くの方は小説、漫画、映画、テレビアニメ、テレビドラマのうちのどれかが浮かぶのではないでしょうか。少なくともノベルゲームが挙げられることはほとんど無いと思います。
このようにノベルゲームが物語の媒体のひとつという認識をされる事は少なく、むしろゲームジャンルのひとつとして語られることの方が圧倒的に多いです。もちろん知名度の問題もあるでしょうが、それにしてもこの傾向は強く感じますね。

こんな事を書くくらいなので、当然ながら本記事でもノベルゲームを物語の媒体として扱っていきます。読者の皆様もこの認識を持って読み進めていただければ幸いです。

導入も終わったところで、ノベルゲームの媒体としての特徴の中から特に重要だと感じる3つを挙げます。私はノベルゲームを「物語を描く媒体として最も合理的な媒体」と考えているのですが、これら3つの特徴を知って頂ければ何となくでも伝わるのではないかなと思っていますので、最後まで読んで頂けると嬉しいです。
本記事ではこれらを上から順に深掘りしていきます。

・表現が器用貧乏

いきなりですが後々の説明のために各媒体で使える表現を比較します。

触覚や嗅覚使える4DXは別ということで。趣旨が変わってしまう気もしますし。

各種記号はその表現の得意不得意や強弱の傾向です。ポケモンのタイプ相性表みたいになってしまいましたが、記号に関しては同じような感覚で見てもらえると丁度良いと思います。
細かいところですと、映像作品でも文字表現っぽい事は出来ますが演出的な側面が強いので‪✕‬ということで。

さて、ここで注目するのがノベルゲームは全ての項目に〇が付いている、つまり器用貧乏であるという点です。
と言うのも物語に限って言えば、表現の器用貧乏はデメリットが大してデメリットにならないのですよね。
例えばアニメで言う作画、小説で言うテキストのような表現(の要素)というのは物語とは別に評価される傾向が強く、それと同様に先述した「文字表現」「視覚的表現」「音声表現」の得意不得意や強弱も物語とは分けて考えられるのです。
ですので強く使える表現方法が無くても物語自体には大して悪い影響が出ない訳です。強く使える表現方法が無い、と言うのもあくまで傾向の話ですし。

ついでに言うと、ノベルゲームは基本的なプレイ画面が「背景+立ち絵+テキストボックス」という構図であるため視覚的表現を強く使いにくいのですが、その代わりに会話や独白がメインとなるような視覚的な変化が少ない描写も自然に描けるというメリットがあったりします。

「背景+立ち絵+テキストボックス」の例として
『さくら、もゆ。-as the Night's, Reincarnation-』より

では、表現がそもそも使えない場合(表の‪✕にあたる部分‬)はどうでしょうか。
物語はその媒体が使える表現方法に合わせた物語(シナリオ)となることが多く、例えば視覚的表現に優れている漫画は戦闘描写を取り込んだ物語を作りやすく、視覚的表現が使えない小説と比べるとその割合が圧倒的に多かったりします。逆に文字だからこそ表現できるモノもありますし。
このことから使える表現の幅は描ける物語の幅に繋がりやすい傾向にあると言えるでしょう。まあ、直接的に描けない中で工夫し楽しむのが小説なんですがね。それを踏まえた上で直接的に描く事と描かない事を選択出来るなら、それに越したことは無い、とも思ってしまうのですが。大は小を兼ねる、とか言いますし。

要はノベルゲームは表現幅が広いので、それに比例して物語の自由度も高いという話です。物語の自由度の高さは他にも要因があるので後々まとめます。

・買い切りかつ尺の制限が無い

テレビアニメ・ドラマは決められた1話分の尺と放送期間、小説であれば一冊分、映画であれば90-180分と尺が固定されており、物語もそれに合わせたものでなければなりません。
これに当てはまらない漫画などの連載作品も打ち切りを考えるとあまり悠長な展開の物語は描かれにくいです。

それに対し、ノベルゲームは尺の制限が無く、買い切りであることがほとんどであるため、一応は最初から最後まで書き手が作りたい物語を作りたいように作ることが可能となっています。とは言っても売り上げやら何やらを考えるとそうはいかないのでしょうが。
それでも先述した表現の幅の広さとそれに付随した描ける物語の幅を含め、媒体を理由に物語が制限されることは他の媒体と比べてかなり少ないでしょう。
物語の自由度の高さの要因はまだ残ってるので後々まとめます。

さて、買い切りであることには他にもメリットが存在します。
それは物語を区切る必要が無いことです。これは一冊完結の小説や一作完結映画にも言えることですが、これらと異なるのは長い物語との両立ができるという点にあります。
つまりノベルゲームはボリュームのある物語を切れ目なくノンストップで駆け抜けることができる稀有な媒体という立場にいる訳です。ただ長い作品をノンストップで駆け抜けること自体が大変なので、実際やっている人はそこまで多く無いでしょうけど。
兎にも角にも自由度が高いのです。

尺の長さは上手く使えればそのまま物語の重みになり、他の媒体では真似できない物語を作ることもできる訳ですが、尺の長さが原因でコンテンツ飽和時代である現代の消費傾向に適応しきれていない部分もあり、ノベルゲームを安易に薦めにくい理由のひとつにもなっているのですよね。
この話に関しては以前書いた「コンテンツ飽和時代の逆をいくノベルゲームというジャンル」という記事で扱っているので興味がある方は良ければ合わせてどうぞ。この記事の内容に繋がる話も多々あると思います。

・ユーザー層などの環境

いわゆるエロゲと呼ばれるジャンルの多くノベルゲームを媒体としていることが原因でノベルゲームの多くがR18であったり、オタク文化と共に発展してきた媒体でもあるため、それらが良くも悪くも物語に影響しています

散々自由度が高いと書いてきましたが、こういったことが原因で物語の要素として恋愛を使うことが多かったりしますね。別にそこまで悪い事とは思いませんし、人によっては良い部分でもありますが。

さて、良い影響について書く前にノベルゲームのユーザー層についてもう少し詳しく。
先述した通りノベルゲームはR18作品が多いので、それに伴ってユーザーの大半が成人しています。また、娯楽に溢れている現代でわざわざコンテンツ飽和時代に逆行しているような媒体に触れている人たちという事で物語に慣れている人が多い傾向にあります。

これによる良い影響として、一般受けしにくい要素を作品に取り入れるハードルが低いということが挙げられます。再三書いてきましたが自由度が高いという話です。シンプルにR18作品であれば描写に対する制限が緩いので、そもそも使えない描写というのがかなり少ないというのも高い自由度の一因です。
ノベルゲームが一般受けしにくい要素を取り入れるハードルが低い理由として、このようなユーザー層であるためにしっかりと作品・物語の面白さで評価されやすい傾向にあるということが大きな要因でしょう。一般受けしにくい要素が取り入れにくい理由の大半は、読み手・視聴者に伝わりにくく、それによって作品の評価まで落ちかねないというモノでしょうが、そのリスクが比較的少ないということですね。
ですので作り手としては「一般受けしにくい要素でも面白い・良い作品と思ってもらえれば大丈夫だろう」みたいなことを考えているのかな、なんてことを想像してしまいます。想像の域は出ませんが。

ちなみにここで言う一般受けしにくい要素と言うのは、小難しいシナリオ・テーマやR18要素、後味が悪かったり盛り上がりに欠けたりでいわゆるエンタメ性に欠ける物語などを指します。当然こんな作品ばかりではありませんが、他の媒体と比べたらこういった要素は豊富です。

そんなこんなでノベルゲームは表現の幅の広さやユーザー層などを理由に物語の媒体の中でもトップクラスの物語の自由度を誇っているのです。自由度の高さに伴って普段触れることのない、様々な作品があるのはノベルゲームの大きな魅力のひとつです。

また、作品を調べる事に優れたレビューサイトがあることで作品探しが捗りやすいのも良い環境の一要因として挙げられるでしょうか。ただでさえ長い時間を使う傾向のある媒体なので、なるべく後悔しにくい作品選びをすることは重要だと思ってます。
また、これは個人差があるでしょうけど、こういったユーザー層だからか作品に付けられた得点の中央値・平均値が結構あてになるのも良いところです。
これに関しては「『ErogameScape -エロゲー批評空間-』という最強のレビューサイト」という記事で扱っているので良ければ。


作品単位の話になってしまうので挙げませんでしたが、ノベルゲームの特徴として外せないので最後にルート分岐について軽く触れていきます。
ノベルゲームがゲームといわれる所以であり、選択肢を選択することで結末を変えるという明確な差別化点です。タイムリープモノなどであれば特に有効的に使うことができ、これもある意味では表現の幅の広さに繋がる要素となるでしょう。

ということで、最高に自由度が高い「物語を描く媒体として最も合理的な媒体」であるノベルゲームを是非一度プレイしてみてはいかがでしょうか。初心者向け作品は探せばいくらでも見つかると思いますし、そのうち記事にしようかなとも考えています。
追記:記事にしました。良ければこちらも合わせてどうぞ。

それではノベルゲームの話でした。

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