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SOLO制作日記:「ノイズ」を大切にビジュアルを作る

こんにちは!ちょっと忙しくバタバタしていてSOLO制作日記の更新が遅くなってしまいました。今回はいつもの振り返りではなくSOLOのビジュアルについて少し話したいと思います!

まだまだ製作中ではありますが、少しずつ「こんなことがしたい」ということが形になってきたタイミングでもあるので。

最初に決めたこと

SOLOの企画が通り、じゃあちょっと作り始めてみようかとなったときに開発部長のKさんから言われた言葉がありました。

「このプロジェクトのビジュアルに関しては結構高くハードルを設けることになります」

僕の目から見たKさん

いやほんとに怖かったんですよね、震えます。笑 

結構悩んで、どうやったらそのハードルを越えられるか考えたんですが、これでいける!みたいな都合の良い答えが出てくるわけもなく、、。
悩んだ末、僕が一番クオリティ高く作れそう(一番得意そう)なことを軸にしてやってみることにしました。

それは「ノイズ」を大切にビジュアルを作るということです。

ちょっとわかりにくいと思うのでまずは僕が思う「ノイズ」について説明します。

ノイズって何?

例えば紙に絵を描くことを想像するとわかりやすいと思います。画用紙に絵の具で赤いリンゴを描いたとします。

どんなに綺麗に描いても筆跡だったり、鉛筆の線の微妙な歪みだったりって残りますよね。他にも紙の質感インクの掠れ塗りむら、持ち運びの際に紙に入ってしまった折り目や汚れなど、、、「描こうとした赤いリンゴ以外の情報」ってたくさんあると思います。それをまとめて「ノイズ」と呼んでいます。

僕はそういった「描こうとしたもの以外の情報」もすごく大事だと思っているし、惹かれます。そしてそれぞれの「ノイズ」から違う感情を感じます。筆跡から怒りを感じることもあるば、ノスタルジーを感じる紙の質感もあります。そして「ノイズ」の種類と表したいテーマが合致するとより伝わるビジュアルになると思っています。

例えば「汚れた裏路地」は、インクが滲んでたり、荒々しい筆跡がある方が伝わると思います。例えばこの絵の左下を見て欲しいです。

裏路地の絵

この左下の黒く強い筆跡はわざと残しています。水で溶かして馴染ませることもできたのですが、このままの方が印象が近かったからです。

反対に「丁寧な仕事が行われているカフェのカウンター」は可能な限りゆっくり筆を動かしてできた丁寧な筆のブレがある方が伝わると思って、下の絵はそういう描き方をしました。同じ画材であっても、ノイズの出し方は違います。

カフェのカウンターの絵

「ノイズ」の感じから、丁寧さが伝わるといいなと思って描きました。

絵を描くときにはこういう風に「何が描かれているか以外の情報」をいかに「何が描かれているか」にマッチさせていくかを考えています。なので胸の中にもやもやを抱えて葛藤しているSOLOの主人公マイクのデザインは可能な限り荒々しい筆跡や色むらを残して描きたくなってしまいます。(モデラ―さんごめんなさい、、)

マイクのデザインの途中経過

ノイズの役割

こういった「ノイズ」の種類の違いは、歌でいうと声質のようなものだと思っています。

同じ歌を、同じキーで歌っても、歌う人が違うと印象が変わることってあると思います。同じ曲だけどこの人の声で聴くとより切なく感じるな、とか。

そういった観点から、SOLOのストーリーや伝えたいことに合致してより伝わりやすくする声質、つまり「ノイズ」を見つけて入れるという考えでビジュアルを作っています。

ここまでアナログの「ノイズ」の例はたくさん上げましたが、どうやってデジタルの画面にノイズを載せていくのか。次からそのあたりを話していきます!

SOLOにおけるノイズ

SOLOはもやもやを抱えた主人公が険しいクライミングに挑むゲームです。なのでざらっとした質感、荒々しいエッジが合うと個人的には思っています。

SOLOのメインのノイズ

まずはエンジニアの方、TA(*1)の方と話し合って、アウトラインや影のエッジのラインがギザギザにゆがむシェーダー(*2)を作ってもらいました。

(*1)TA:テクニカルアーティストの略。エンジニアとデザイナーの中間で橋渡ししてくれる方。
(*2)シェーダー:CGの映り方を決めるプログラムのこと。

このシェーダーによるノイズはクライミング中でも、回想でも程度の違いはあれどどこでも入ります。つまりSOLO全体を通しての質感を決める、すごく大事なものです。

こちらは少し前に撮ったスクショを拡大した物ですが、AやBを見るとわかりやすいと思います。

ノイズの入った主人公

もうちょっと近づくとこんな感じです。

アップ

「ギザギザ」といってもそのニュアンスは難しくて何度もTAの方とエンジニアの方と思考錯誤を繰り返しました。

一番最初のシェーダーはこんな感じから始まりました。TAの方がテストで作ってくれたものです。

最初期のシェーダー

髪の影と他の影には別の質感のノイズが入っています。完成からはまだ遠いですが、これによって「そもそもこんなことがしたい」という大きな方向性をみんなで共有できました。

その後、本格的にエンジニアの方のシェーダー作業が開始されます。序盤はこんな感じでした、先程のものより質感が今の状態に近いと思います。

エンジニアの方が作った初期の物

でもここからが長かった!笑 
下の図は質感の微調整のすり合わせ資料。こういうニュアンスのギザギザにしたいっていうすり合わせを細かく行いました。

ギザギザを図解した資料

感覚のすり合わせって思った以上に難しいですね。こればっかりは何度も伝え合うしかないし、その度細かな調整に応じてくれているエンジニアの方には本当に感謝です。

岩肌にも荒々しいノイズが入りますが、少し強めにノイズが入るように調整しています。こう表現した方がより感覚的に「険しさ」が伝わると思う、という判断です。

岩肌の様子

拡大して見るともう少しわかりやすいかもですね。

アップの様子

特に影面と明るい面の間に出す質感が強めに出ています。

こんな風にして見た目が少しずつ出来てきたので最近のクライミング部分のスクショを集めてみました!まだまだ調整が必要な箇所も多いですが、だんだんとビジュアルの方向が見えてきた様に思います。

最近のスクショ

ノイズの量で表す曖昧さ

SOLOは主人公のマイクが過去を思い出しながらクライミングをするので大きく分けて「現実(クライミング)」と「過去(回想)」があるのですが、ここでの絵作りもノイズを使って差別化していきます。

そこで考えるのは「過去とは何か」ということで、僕は「今よりも曖昧なもの」=ノイズが多いものだと感じます。

ということでまず過去(回想)は先程のギザギザを多めにして調整してます。以下の画像がそうですね。

最近作ってる回想シーンの一部

キャラクターの輪郭周りがより強くギザギザになっています。

上の画像のシーンではフィルムグレイン(*3)も足しています。フィルムグレインはそれ自体がわかりやすく過去のノスタルジックさを連想さてくれるんですが、それ以上に現実には存在しないものとしての不思議さがあります。

(*3)フィルムグレイン:映像や写真で使われるフィルムの持つ粒子。デジタルにはないのでSOLOではそういう効果を持つ画像を重ねている。

筆跡アニメーション

過去(回想)でさらに足したいのが、こういった筆跡のアニメーションです。

テストで作ってみたやつ

こちらは僕がテストでフォトショップでつくってみたものですが、筆跡がパタパタと出たり消えたりしているのがわかりますでしょうか。

この筆跡アニメーションは「曖昧」にするノイズだと思っています。ものの輪郭や風景自体が描かれた筆跡が変わる、消える、のが過去だなぁと感じます。

こういったものを入れたいというのはすでにチームのメンバーには話してあるのですが、詳しい作り方はこれからチームのメンバーと相談です。まためんどくさいことを言って申し訳ないという気持ちもありつつ、これができたら絶対よくなるという気持ちもありつつ、、笑

この記事を書きながら昔のファイルを見ていたらもう少し古いテストも出てきたのでこちらも貼ってみます。

一番最初の筆跡アニメーションのテスト

ということで、現実より曖昧な物である回想は「ノイズ」がより多くなっています。

まとめ

ということで、高いハードルを越えるために色々考えた結果「ノイズ=描こうとした物以外の情報」をどう作るかをすごく考えた、という話でした! 

本当はもっといろんな「ノイズ」を仕込んでいるので話したいのですが、あまり長くても読みにくいので今回はここまでです。

簡単なことは一つも無いですが、少しずつやりたいことが形として見えてきているのでモチベが上がりますね。根気強く対応してくれるチームメイトに感謝です! 

次回はまたいつもの振り返りに戻るとは思いますが、今後は時間の許す限りこういった深く話す記事を書きたいと思います!

※ちなみにSOLOは𝕏で制作過程を公開していますので良ければ覗いてみてください!


以前のビジュアルと現在の比較↓

↓こちらの投稿は一枚の画像にみえますが、クリックして開くと、、、↓

それでは今後もよろしくお願いいたしますー!

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