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見応え十分・現代アート〜大阪中之島美術館 国立国際美術館 共同企画すべて未知の世界へ ー GUTAI 分化と統合

12月に観た展覧会で見応えがあったのは「GUTAI」

関西では具体と言えば有名ですが、前衛画家・吉原治良(1905 - 1972)を中心に1954年に兵庫県芦屋市で結成された団体名。

音声配信でサクッと聞くなら


【大阪中之島美術館展示から】


吉原治良「無題」1971 油彩、カンヴァス 国立国際美術館


吉原道雄 「作品」 1965/2022 紙テープ 可変 本展のための再制作

解散後20年を記念してお隣同士の大阪中之島美術館と国立国際美術館の共同企画でした。

美術史を学び、現代アートギャラリーに勤めた私は、「具体」の洗礼は受けました。
大きなキャンバスにただ黒い丸が描かれているとか、足でただぐちゃぐちゃにされただけのように見える抽象絵画の意味がわからなかったのです。
タイトルもuntitleが多く、ヒントになる手がかりもなかったこともあります。
あったとしてもわからない。
とにかく変なのが近代現代アートで、何が面白いのかわかりませんでした。
ただ、当時は具体で活躍した足で描く白髪一雄さん、絵具を瓶に入れぶつけた嶋本昭三さんなどに出会うこともあり、興味は湧いてきました。
何を表現したいのかわからないけれど、非常に深く真剣に考えているのだということだけはなんとなくわかりました。
作品は激しいですが、とても知的な印象でした。

とりあえず、作品サイズが大きいイメージ。
広い中之島美術館で堪能できます。

白髪一雄「ミスター ステラ」1958 油彩、和紙、カンヴァス 大阪中之島美術館蔵


↓下記看板が作品説明


吉田稔郎 「FOAM-A」1967/2022年 ミクストメディア 本展のための再制作



「具体」とは「人の真似をするな、今までにないものをつくれ」という吉原治郎の理念をモットーにしています。
だからこそ、見た事ない作品群だったわけです。
油絵だけでなく、当時発明された新しい素材をいかに使うかを考えたとビデオの中でも語られています。

【参加できる作品】


展示会場を出たところに立つ白衣を着たアバターにサインができます。
向井修二さんの作品で2022年新しいですね。
芳名録として自分の名前を書き入れることができるようマジックが用意されています。もちろん、サインしてきました。

Geetaとサインしてきた
向井修二「アバター1、2、3、4、5」2022年

【国立国際美術館展示から】



手前枠のような作品 村上三郎「あらゆる風景」1956/93個人蔵 
奥の赤い三角形の作品 白髪一雄「赤い丸太」1955/85 木、ペンキ、兵庫美術館蔵[山村コレクション]

【展示を観ての個人的感想】


当時、触れることができたら刺激的だっただろうなと想像しました。
美術館に展示してしまうと、なんだか作品が自由でない印象に見え残念でした。

面白かったのは、当時若手で参加した作家さんたちのインタビュー。
当時、どう人と違うものを作るかと熱くなっていた様子を知れました。
また、吉原治郎の評価は、いいか悪いかの一言だったそうで、どこがいいのか悪いのかは一切言われなかったそうです。
それを超え、独自性を打ち出したから参加でき、今も活動されているんでしょうね。
また、具体がアンフォルメルの主導者であったフランスの美術評論家ミシェル・タピエに注目されGUTAIとなり、ヨーロッパに普及することで
認められると同時に平面的で小さくまとまってしまったのではないかという解散を予感させる発言も興味深かったことの一つ。
生の声が聞けるのは貴重な資料ではないでしょうか。

背景を知ることとリアルにお会いしたことのある作家さんたちという親しみがあり、面白く見ましたが、マニアックであることには違いないでしょう。
関西のグループであるから関西の美術館に収蔵が多く目にする機会も多く、
当時を知る人たちなら一般の人でも「白髪さんの絵やわ」とか言うのを何度も聴いていますが、他の地域だとどうでしょうか?
そこまでは知られていないかも知れませんね。

「人の真似しない、今までにないものをつくれ」という言葉はマニュアル時代のわたしたちに必要な言葉かも知れません。

どうであれ、パッションを感じられる作品たちばかりに触れる展覧会でした。

今回、2館の共同開催で、両方観ましたが、個人の感想としては中之島美術館の方が見応えはありました。
国立国際美術館はコレクションにあるものがほとんどでよく観る作品だったということと
せっかく具体を「分化」すると「統合」するのバランスが「統合」が少なく「統合」というタイトルでなくてもよかったのでは?と意味がよくわからずでした。

展覧会タイトルの「分化」すると「統合」するとは?

個人的には違いはよくわからなかったと感想を述べたタイトルについては
大阪中之島美術館のHPから引用
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具体を「分化」する

分化 大阪中之島美術館
具体は、常に先駆性と独創性とともに語られてきました。吉原治良の「人のまねをするな、今までにないものをつくれ」という言葉が、端的にそのことを表すものとして語り継がれていますが、その認知度とは裏腹に、具体の先駆性と独創性の内実は、明らかにされていません。

「分化」をテーマとする大阪中之島美術館では、具体の制作からいくつかの要素を抽出し、個々の制作のありようを子細に検証します。

本会場がめざすのは、具体は多様であるという結論を導き出すことではありません。多様であることは前提とし、どのような表現が受け容れられてきたのか最大限可視化することで、具体というグループの本質にせまろうという試みです。

具体を「統合」する

統合 国立国際美術館
具体は、少なくともその出発点においては、「画家」集団でした。時代が下るにつれ多様化していく造形実践の数々も、もとをたどれば、絵画という規範からの自由をめざした結果と言えます。問題は、絵画らしさをいかに解体し再構築したか、です。絵画「らしさ」をどう捉えているのか、また、それを解体してなお絵を描こうとするのか否かで、導き出される新しさはおのずと変わってくるでしょう。国立国際美術館では、マクロな視点に立って具体のあゆみを眺め、さまざまに展開される問いなおしの作業に、いくつかの傾向を見出そうと試みます。必ずしも一枚岩でないこの集団の、内なる差異をあぶりだし、そのうえで「統合」してみせることが主な目的です。

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【具体美術協会をさらっとまとめると】


前衛のパイオニア吉原治良に作品の批評を受けていた若い作家たちによって結成されたグループ。
結成メンバーは17名、最終的に約60名が参加。
会名は「精神が自由であることを具体的に提示」(『具体』創刊号)するという理念に由来。
結成翌年、新制作派協会で「0会」を作っていた白髪一雄、村上三郎、金山明、田中敦子、嶋本昭三らが加入。
初期のラディカルな活動が始まる。

50年代後半からはミシェル・タピエとの交流によりアンフォルメルの代表的グループと見なされ、海外進出を果たす。
これにしたがって絵画が活動の中心になり出すが、66年にアラン・カプローから初期の活動をハプニングの先駆として評価される。
中之島に現代美術を紹介する施設「グタイピナコテカ」設立
(現在は三井ガーデンホテル大阪プレミア)
日本万国博覧会への参加をピークに終息に向かい、72年の吉原の死を機に解散。
80年代中頃に国内外で再評価

【展覧会HP】

大阪中之島美術館 国立国際美術館 共同企画
すべて未知の世界へ ー GUTAI 分化と統合
2022.10.22 – 2023.01.09


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