読みかけの本にいれた指の隙間から見えたことばは雨の色
風は体で受けるよりも
耳で感じる方が好きだ
風が強い日は想いが遠くに飛んでゆく
それに名前をつけることは
もう難しい
とても難しいことだからこそ
なくさずに大切にしまっておく
と決めている
それだけは強い風にも負けない
と思った
◇
茶色がかっていた芝生が
まるで蘇りのように少しずつ
緑を帯びてくる
ひかりを受けたぶんだけ
自らひかりだすみたいだ
それを見ているだけで少し嬉しくなる
風の通り道にいるから
音が啼いて
壁に何かがぶつかって
風とひかりと時々降る雨があるから
命は自らひかりだす
当たり前のことは立ち止まってみないと
わからなくなる
いつまでも私は正しいだとか
あなたが悪いのだ
と言っているようでは
どんなにかひかりを受けたとしても
自らがひかりだすことはない
それはただ見ているだけでも酷く嫌な気持ちになる
◇
少し遠出をした時に偶然見つけた古道具店で
アンティークのガラス瓶を買った
均整を作られていながらも所々に歪を持っている
透明の境界は手に取ってみてはじめて気づく
方々の美術館で買い求めた
ポストカードを閉じ込めた
私のなかのおもいでたちもまた
透明の境界に閉じ込めている
◇
静けさの音を感じていた
何も聴こえない時にだけ聴こえる音
耳が機能している音のようなものとでも言おうか
やがて外から飛行機が上空を駆けるのがわかった
こういう時に誰にも聴こえない内側だけのこえがあって
それこそが本当はいちばん届けたいこえなのだけれども
決して声に出すことはないし
てがみにしたためることもない
発して何かが変わることはないけれど
それを伝えることができたならどんなにか良いだろう
と思うけれど
瞳の奥で駆ける想いだけがさっき駆けた飛行機と
同じように鳴りつづけている
いつかの昨日を待ちつづけるから
夢は色濃くなる
たんなる日記(その160)
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