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置き手紙

口実をつくって外に出たら
Tom Mischが降るような空だった
ぜんぶわかったような思い込みで
諦めたり、強気になっても
夕暮れ刻にはもうそれが
ぜんぶ勘違いだったと思い至る
日々はそうやって連続を繰り返す

砂は風に乗って行間を踏み越える
嘘が埋めるのは空白ではなく余白
空白は何よりも喪失を強く感じさせる
トタン屋根の赤錆がいつか観た
川縁の鳥に似ていた

水たまりは泣き腫らした夜の余韻
覗き込むと何も映っていないのに
見上げた時よりずっと眩しかった
透明水彩の方が一層
空白を埋めてしまっている
のに違いない

月を目指すつもりで飛び出して
混沌から抜け出そうとすれば
肯定も否定もしないのが空だった
諦めたり、強気になって
夕暮れ刻になってもそれは
ぜんぶ絵空事でしかない思いの丈
余白を無駄遣いする二の足は
どこにも向かわない

蔦は終わりに行間をつくりだす
急ぎ足は余白ではなく空白
余白は何処にも余剰などないことを
すれ違いに囁きかける
陽が傾けばトタン屋根の赤錆は
閉じ込めたい記憶が滲み出た時の
上顎のざらつきに似てくるよう

型押しの1日に
新しく見つけたと思ったことのほとんどは
繰り返し考えていることに
どうしてか気づきにくい
それはどうしてだろう
と考えることもまた
それのひとつなのだ
日々はそうやって繰り返しを繰り返す
きみは今日何をして過ごしたろう

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