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シルバニアファミリーショーで企業の思惑にはまった話

近所の住宅展示場で行われた、シルバニアファミリーショーに行って来た。

アンパンマンショーや戦隊ヒーローショーの日は、駐車場に入りきれない車の列で道路が渋滞してしょうがない。

しかしこのシルバニアファミリーショーは、ファン層が限られているのか、渋滞どころか5分前に行っても前の席に座れるくらいだ。

敏感で人混みが苦手な5歳児を抱える我が家としては、大変ありがたい。

娘はとにかくうさぎが好きだ。理由はこの世で一番可愛いからだそうだ。
さらにきれいなレースやリボンやお洋服などに関心がある、いわゆる典型的な女子である。

私は子どものころからシンプルで無機質なものが好きだったので、レースや花柄の洋服ばかりが増えていく娘のクローゼットが、我が子のものとは思えない。

でも親というのは子どもが喜ぶ顔が見たい。子どもの笑顔は正義なのだ。

夫は積極的にシルバニアの情報を仕入れ、あそこでショーをやっているだの、シルバニアレストランに連れて行ってあげたいだの、喜ぶならシルバニアのドレスも着せてあげたいだのと、家計も考えずに私にプレゼンしてくる。

シルバニアショーは、ショコラうさぎの女の子とくるみリスの男の子が歌ったり踊ったりクイズを出したりする、子ども向けのショーである。

客層も、おしゃれに関心がありそうな、静かな感じの女の子が多い。

シャイな娘は、踊りや歌には参加しないが、うさぎがくるっと回ったときなどにスカートがふわりと揺れると、うっとりとした表情で頬をゆるませていた。

子どもたちがうさぎに羨望の眼差しを向けるそばで、私はついたての陰で音響機器を操作するスタッフのおじさんを見ていた。

あの操作、もし間違えたら興ざめだな。プレッシャーだろうな・・・と思ったのである。

MCのおねえさんの声以外の音はすべて、うさぎの声も、リスの声も、効果音も、歌も、あのおじさんが操作する音響機器から出ているのだ。

私はおじさんから目が離せなくなった。一生懸命左手で台本をめくりながら、右手で音を操作する。それもベストタイミングで。

何度もやってきているプロなのだろうが、私は心から感心した。

子どもたちを楽しませるために、裏で何人ものスタッフが一生懸命仕事をしていることを考えると、不覚にも涙が出てきてしまった。

夫は言う。
「あなたはやっぱりちょっと変わってるよ」

「やっぱり」という言葉に、普段からそう思っていることがうかがえる。

私は感動しながら、こういう入場無料のショーに、ここまで気合いを入れてくるのはどういう理由があるのだろうと考えた。

その数日後に私自身が取った行動で、その理由が説明されてしまった。

シルバニアファミリーのファンクラブに入会したのである。

「見る角度は変わってる割に、しっかり企業の思惑にはまってるじゃん!」
と夫に呆れられた。

でもファンクラブの特典を、誰よりもウキウキしながら待っているのは夫だ。

そう、子どもの笑顔は正義。その正義のためなら親は多少の出費は惜しまない。

企業はそんな親の気持ちを握るのが上手いのだと思った。

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