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絵本「ぼくのこえがきこえますか」

戦争の不毛さを伝える絵本です。

何よりも印象に残ったのは、感情が、読む者の心に突き刺さるような、絵の力強さです。

「くにのために たたかえ」と
みんなに はげまされて、
ぼくは せんそうに いった。

「ぼくのこえがきこえますか」 田島征三 童心社

という一文で、この絵本は始まります。

この絵本の語り手になっている兄がまず戦死し、
弟もやっぱり戦死し、
母親がひとりぼっちで遺されます。
当時、多くの家庭で経験されたであろう、息をすることすらできなくなるような悲惨な現実を描いています。

まず絵が目に飛び込み、その絵に浮いているかのような文字が、状況を冷静に伝えてきます。


ぼくの からだは とびちった。


おとうとの いかりが みえる。

背景、輪郭、文字の位置、紙面に占める色の割合やその配色。すべてが計算しつくされた、
というより、
描き手の感情がそのまま絵に吐露されています。

だれのために ころし、
だれのために ころされるの?
なんのために しぬの?

田島征三

この言葉が、幾たび、どれほど多くの人によって、繰り返し発せられてきたか。

愚かな間違いを二度と繰り返してはいけない。

終戦記念日が近づく酷暑の夏に、ズンと沈んだ心で思うのでした。




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