おおロミオ

少し前の話になるがLINEの友だちの名前を全員書き換えて変な名前にしていた。
どうしてそうしようと思ったのか本当に思い出せないし、命名もかなり雑だった。例えば目の大きな子は「目玉」、かわいい子は「かわいい」、最近恋人と別れたと言っていた人は「彼女募集中」、芝居の案内しかほとんどやりとりしていない人は「告知メモ」など最低を詰め込んだSNS、ソーシャル・ネットワーキング・最低だった。
名付けのセンスがなさすぎて誰が誰だか分からなくなってしまったのと、誰かと一緒のときにうっかり画面が見えたらやばそうな気がしたのでやめた。

最近「安藤安按」という芸名は誰がつけたのかと聞かれることが増えた。これは所属している劇団「中野坂上デーモンズ」の主宰「松森モヘー」がつけたものだ。
たしか二年程前に『園』という芝居の稽古をしていたときに例のごとく筆がまったく進まなかったモヘーさんが「今日は安藤の芸名を一日中考えていたので脚本が書けませんでした」という言い訳になっているのかなっていないのか分からないたぶんなっていない文章と共に送ってきた。(別に頼んだわけじゃない)
後に劇団員になるタイミングでここしかない!大チャンス!と思い切って名前を変えてみた。

というのも、わたしはずっと芸名がほしいと思っていたのだが、自分で考える名前はことごとくなんか恥ずかしかった。
例えばカタカナ表記にするとか、本名とかけ離れた可愛らしい名前にしてみたら、おしゃれにしやがって!こんな芋臭いくせに!とか思われるんじゃないかと怖くなり、逆にちょっとウケを狙ったおもしろネームにしても、こいつこの感じで名前ちょけてんのダサー!とか思われることに吐き気が止まらなくなったのでずっと自分に名前をつけることができなかった。
そこへやってきたモヘーさんの謎ブーム!乗っかるしかないだろ!人がつけた名前ならセンスなくてもわたしのせいじゃない!LINEのアカウント引き継ぎに失敗し、そのときのトークが全部消えてしまったことが非常に残念である。

What's in a name? That which we call a rose. By any other name would smell as sweet.
とジュリエットは言っていて、映画『GO』で杉原は、ライオンは自分のことライオンだなんて思ってない、お前らが勝手につけた名前だ、名前なんてなんでもいいんだよ(雰囲気こんな感じ)と言っていて、どっちもすきなシーンだし、そうだよ!って思うと同時に、もし他の名前をつけられていたらいまと少し違うわたしになっていた気もする。
良くも悪くも名前とは人生だと思う。

わたしに「安按」の人生をくれたモヘーさんの遅筆に捧ぐ。

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