日本のものづくりはすごい
ものづくり大国ニッポン。
テレビの情報番組や日常会話でもよく耳にする言葉だ。大人達が誇らしげに「やっぱ日本のものづくりはすごいなぁ」とよく口にしているが、僕はこの言葉を聞くたびに違和感を覚える。
僕は小さい頃よくソフビ人形やトミカで遊んでいたモノ好きだった。昔のおもちゃは細かいところまで細工が施されており、見て触っているだけで楽しくてたまらない。仕掛けもおもしろくて、チョロQをめいっぱい引くと宇宙まで飛んでいけるくらい想像が膨らんだ。トミカを集めては将来スポーツカーに乗りたいなぁと憧れていた。
しかし今やチョロQも姿を消し、ソフビ人形は表面のみの塗装。大量生産された陶器などの生活用品も百均に死ぬほど陳列され、田んぼや畑に代わって建てられたプラモデルみたいな住宅に多くの人が幸せに暮らしている。大学を卒業し企業に就職してからもモヤモヤは消えなかった。
「そんなにものづくりに対して思うものがあるならお前がやってみせろよ」
ある日誰かにこう語りかけられた。それは亡くなった僕の曽祖父母だったのかもしれないし、心の中のもう1人の僕だったのかもしれないし、あるいは松本民芸館で見たウィンザーチェアーだったのかもしれない。
そんな一言に突き動かされ僕は仕事を半年で辞め、家具職人の道を歩むことになった。
静岡県三島市。富士の麓のとてもいい街で修行生活が始まった。
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