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Whose House?

高校時代のアメフト部の指導者の方々、そしてチームメイトに感謝と敬意を込めて。


ヘルメットを被りフェイスマスク越しに見る世界は、子供の頃の僕にとっての憧れであり、今の僕にとって忘れることの出来ない人生の特別なワンシーンだ。

子供の頃の僕の夢はアメリカンフットボールの選手になることだった。小学5年の七夕、短冊に「アメフト選手になりたい」と書いたことも覚えているし、「トム・ブレイディを超える選手になる!」なんて今じゃ恥ずかしくて口が裂けても言えないような事も友達の前で豪語していた。何にしろ、当時の僕は2007年のスーパーボウルでキックオフリターンタッチダウンを決めたシカゴ・ベアーズのデビン・ヘスターの虜になり、アメフトに熱中していた。

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その夢へのチャンスは早くも訪れた。高校受験目前の年末、両親が私立のアメフト強豪校への入学を認めてくれたのだ。

入学後、アメフトひとつに魂を燃やす指導者や先輩、友達に囲まれた日々を送ることとなり、僕の人生は文字通り「有意義」なものになっていった。

しかし、そんな有意義な日々は長く続かなかった。高校2年の年、父親の会社経営が上手くいかなくなり、私立高校になんて通える状況では無くなった。まさに天と地がひっくり返った。4人兄弟の長男である僕は日々お金に気を遣うようになり、贅沢な「私立イケイケアメフト生活」の日々を億劫に感じ始めていた。(購買で売っているパンひとつ買うことすら常に躊躇った。) もちろん、アメフトには熱心に取り組んだし、練習中は心の底から楽しんだ。けれど、どうしても大学でアメフトを続ける気にはなれなかった。

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当時、大学で一緒にやろうと声をかけてくれたチームメイトには今でも申し訳ない気持ちでいるし、僕も本当の事を言えば大学で共に日本一を目指したかった。でも、当時の僕にとって、アメフトを続けてまでも後ろめたい気持ちに追われながら4年間も過ごすのには耐えられず、自分でアルバイトをして自分の事は自分でしようと決めた。今思い返せば、弱々しく馬鹿な考えだったのかもしれない。

とは言え、アメフトに対する未練は強く、大学入学後約2年間は大学のアメフトの試合もNFLの試合すら見ることが出来なかった。フィールドから見る観客席の景色やタックルを決めたときの感触、試合前に込み上がってくるアドレナリンの感覚が蘇るのがとてつもなく怖かった。(そして、年々デザインが新調されるヘルメットやユニフォームは憎らしい程かっこよくなっていく。そんな中プレイ出来るなんてどれほど羨ましいことか!!) 

僕にとってのアメフト人生は終わったのだ。そう自分に言い聞かせ、僕は段々と世間を僻み、斜に構える人間になってしまった。

そんな僕を救ってくれたのは、高校時代のアメフト部の監督からの手紙だった。20歳になって段々と物事を受け入れられるようになり、僕は思い切って監督に手紙を書いてみた。高校卒業当時、選手として期待して頂いていたにも関わらずアメフトを続けずに裏切ってしまい申し訳なかったというような内容だった。その手紙に対して、監督は自身のエピソードを交え、僕にメッセージを残してくれた。

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「逆境に立った時こそ、自分の生き様が問われている」

長い文章の手紙の中でも特にこのメッセージが僕に強く何かを訴えかけた。他人を羨み世間を僻むなんて時間の無駄でキリがない。これからをどう生きるか。自分を変えられるのは自分自身だけなんだと突き付けられた。更に手紙には、「アメフトで知り合った仲間を人生で1番大切にして欲しい」と書かれていた。その手紙を読んだ時、背負っていた (勝手に何かを背負った気分になっていたのかもしれない) 荷が少し軽くなった気がし、その後物事をよりニュートラルな目線で考えられるようになった。

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そうして僕は今、社会人になり新たなスタートを切った。大学時代に憧れを抱いたものづくりの職人として生きていく為、静岡の家具職人の元で修行させてもらっている。

そして、何よりも現在アメリカンフットボール日本代表の最前線で活躍している先輩や鼻血が出るほどエキサイティングなアメフトをもっと盛り上げたいとアメリカに渡った先輩、そして進んだ道はそれぞれ違っても必死で何かに取り組んでいる高校時代のチームメイトをSNSを通じて身近に感じ、それが間違いなく僕の励みになり原動力になっている。監督からの手紙に書かれていた通り、アメリカンフットボールという競技を通じて共に闘ったチームメイトは、今までの人生の財産であり、これからの人生の糧になる。そして、間違いなく僕たちがこれからの時代を作る。

そうだ、僕のアメフト人生はまだ終わっていない。

コロナウイルスだけでなく、これからもっと辛い事が山程降ってくるだろうが、かつて同じフィールドで闘った仲間がいればきっと何とかなる。

僕たちでイカした時代を作ろう。


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