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お芝居?

私は漫画「アタックNo.1」や熱血スポ根ドラマ「サインはV」で育った小学生でしたから、中学になったら絶対にバレー部に入る!と、決めていました。

背が高く、運動神経もそこそこでしたし、負けん気もありましたから、3年ではエースアタッカーでした。
しかし残念ながら万年弱小チームだったので、中学総合体育大会の試合では一勝もせずに終わり、夏休み前にバレー部を引退しました。

ところが、引退した途端に演劇部の顧問から呼ばれたのです。
「あなた、明日から演劇部の練習に参加しなさい。」
は?え?なんで?
と、思いましたが、私はその先生が大好きだったので、軽い気持ちで承知しました。
演目はなんなのか、役はなんなのか、何も知らずに練習会場に行ったものの、一部の部員の冷たい目!

部員数は足りていて、それなりにやりたい役を心に秘めながら練習してきたのだろうと思います。
そこへバレー部の元部長がいきなり割って入ってきたわけですから心中穏やかではないに決まっていますよね。当時は全く察することができず、なぜ私に意地悪するんだろうなんて思っていたのですから、私もそうとう空気の読めない人だったわけです。

演目は時代劇。
幼い頃に別々に育てられた双子の兄弟。双子は忌み嫌われ、どちらかが養子に出されたりしたのでしょうね。
兄は立身出世して村の長者さんになっていましたが、お金に執着して村の人からは疎まれている。そして鼻が異様に赤いので子供たちからもからかわれる始末。
そんな長者さんの家に入った泥棒。
ふと見ると居間に自分の肖像画が掛けられてあって、びっくり仰天。
そこへ長者さんの奥さんが入ってきて。。。という、喜劇でした。

私は弟の泥棒役です。
高い塀の上から飛び降りたり、ドタバタ劇をやるにはピッタリと思われたのか?いや。長者役の人と背格好が似てたからだな。
本当のところ、なぜ演劇部の先生が部外者の私を引き摺り込んだのか解らぬまま練習は進んでいきました。

昭和49年だったでしょうか?
当時は学校の部活動もかなりの自由度がありました。演劇部は学校祭までの一か月は夜8時の解散。大道具や小道具作りも佳境に入ると夜10時なんて日もありましたが、学校側も容認していましたね。
劇の稽古はただただ楽しかったです。
本番はカツラもつけて、着物を着て、鼻を赤く塗って身も心も泥棒になりきっていました。
泥棒は改心して、兄の長者と鉢合わせになることもなく、事実を知った奥さんがそっと泥棒を送り出すというエンディングだったのですが、
奥さん役の人も私も涙の別れの場面をリアルで感じられました。

後でよくよく考えてみたら、主役は泥棒の方ですよね?
そりゃ、部員に疎まれるはずだ。
でも、やりきった私は何の執着もなく演劇部を去りましたし、また演劇をやりたいなどと少しも思わなかったのです。
それどころか、5年ほど前まですっかり忘れ去っていました。

60歳からのやり直し人生を考えた中で、急浮上してきたお芝居。。。
これが大きな意味を持つことになったのです。

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