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✿初めてでもお花を美しくいける方法(1)花との会話を楽しみましょう

今日は、お花をいけるのが初めての方でも、美しく、楽しくお花をいけていただける方法をお伝えします。

花をいけることは、一輪の花さえあれば誰でもすぐに始められます。
お道具が揃っていなくても、お水とお花を入れる器さえあれば大丈夫。
実は、もともと初期のいけばなには、身近にある色んな器に花をいけて楽しむ「なげ入れ」というスタイルがあったくらいなんです。
わざわざ花瓶を用意しなくても、空き瓶やグラスなど、身の周りにあるもので充分可愛く手軽にお花を楽しむことができます。また、日常で使っている物を器に使うことで、却って自然にインテリアのテイストに馴染んでくれるメリットもあります。
きっと昔の人たちも同じような感覚で、その時々の暮らしに沿った自由な楽しみ方で、身近に花を取り入れておられたのですね。

また、お花を準備されるときも、たくさんの種類のお花は必要ありません。
勿論、色とりどりの花々を組み合わせていけるのは華やかで素敵ですが、普段の暮らしにお花を取り入れるときは、少ない種類、数のお花でも充分です。たとえ、たった一輪の花、たった一枝の木でも、生きた植物がお部屋にあるだけで、いつもの空間に明るく柔らかな癒しの空気が流れてくれるでしょう。

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さて、一輪の花を器にいけ、その美しさを愛でるだけでも、充分に花を楽しむことができますが、「花をいける」ことの本当の醍醐味は、「花にふれる」という行為そのものを楽しむこと。
「花をいける」とは、花に心を寄せ、花と一つになること。いけあがったお花の美しさだけでなく、花をいける過程そのものを楽しんで味わっていただきたいというのが、私の思いです。

「花に心を寄せる」とは、言い換えれば「花と心を通わすこと」であり、「花との会話」、「花とのコミュニケーション」ですね。

でも、言葉を持たない花や草木と一体どうやって会話するの?と不思議に思われるかもしれませんが、実際に、ご自分が花をいけるところをイメージしてみてください。
お花をいけるとき、できれば、お花を一番きれいに可愛く見えるようにいけてあげたいと思いますよね。
では、目の前のお花が一番美しく見えるには、どれくらいの長さ、高さがいい?どんな向き、角度がきれい?器とのバランスは?飾る場所は?・・・
こんなふうに、そのお花をどうやってきれいにいけてあげようかと考えているうちに、皆さんも、きっと知らず知らず、心の中でお花に問いかけていることでしょう。

そして、その問いかけへの答えは、一つではありません。同じ種類の花であっても、一輪一輪違うもの。また、花をいけるいけ手によっても、一人一人異なるもの。
なぜなら、自然の中の生命である花にも人間にも、一輪として同じものはなく、一人として同じ人はいないから。
そんなふうに捉えると、一輪の花に触れることは、まさに一期一会の貴重な瞬間だと感じられますね。

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実は、不思議なことですが、いけた花には、いけ手の性格やその時の心の状態が、怖いくらいに映し出されます。作品を見ると、自分を含め、いけ手の意外な一面や、表には出ていない内面の状態を感じ取ることもしばしば。そして、これが結構、的を得ているのです。
気持ちが穏やかで落ち着いた状態のときは、いけたお花もふんわり優しい表情に。何か気になることがあったり、仕事などに追われて余裕がなく気持ちがザワザワ、ソワソワしているときは、いけたお花も何かまとまりがなかったり、ぎゅうぎゅうと窮屈だったり、バランスが整っていなかったり。

「花をいける」ということは、花との会話を通し、自分自身の心とも向き合い、対話することでもあります。実際に私も、花をいけることを通して、自分自身でも気づけていなかった自分の心の状態や隠れていた気持ちに、気づかされたことが何度もあります。

「花をいける、花と語り合う」ということは、人から花へと語りかけるだけの一方通行ではなく、花の気持ち、花の表情を汲み取ろうと心を寄せる私たちに対し、花もまた私たちの心に寄り添い、心の声を教えてくれる、文字通り、双方からの「語り合い」なのです。

一輪の花の表情を見つめ、一対一で花と語らう時間。
そこには、あなたと花が一つになる、豊かな交わりが生まれます。
ぜひ、花をいける時間、そして、心をこめていけた花があなたにもたらす力を感じてみてください。

✿今日の花からのメッセージ✿
「言葉はなくとも、心と心で。一期一会の喜びを感じましょう」

ikebana & flower salon "& Serenity" 文香


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