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人、学びのことを考えながら場づくりしている私たちが2024年に読みたい本を紹介します。

合同会社&ante(アンドアンテ)は、人と組織の可能性を広げることを大切に事業を展開しており、2022年12月に設立された会社です。

&anteを立ち上げたメンバーである原田と大滝は現在、それぞれ社会人大学院に通い、会社での活動と共に研究活動も行っています。

原田は、「人にとってのより良く生きるための場の在り方とは何か」を探求しながら、場づくりや組織づくりを行いながら、立教大学大学院リーダーシップ開発コース(修士過程)で研究をしています。

大滝はヨーテボリ大学大学院(スウェーデン)で修士課程を修了(教育科学)。現在は日本の大学院(博士課程)で学習科学の研究活動を行っています。「未来に受け継いでいきたい豊かな学びを人はどう創っていけるのか」を探究中。過去には教育NPOで表現教育の場づくりに関わる企画運営やアフタースクールの立ち上げを経験。認定キャリアコンサルタントでもあり、キャリアやコーチングに関わるプロジェクトなどに関わってきました。

そんな私たち二人が、2024年に必ず読みたいと思っている本を、今回は紹介しちゃいます! 人や組織について、学びについて、場づくりについて興味がある方の参考になれば幸いです!それでは、早速いきましょう!



2024年原田が読みたい本3冊

①ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学 (中公文庫)

最初から小難しい本を出しましたが、1冊目はエドムントフッサールさんです。大学院に入学してから「古典」(古い時代に書かれた書物)というものにできる限り触れるように意識をしているのですが、読みたいと思っている古典の1つです。
フッサールは19世紀に活躍した哲学者・数学者です。
もともとは哲学者ではなく数学の方に力を入れていた研究者でした。

ですが、ブレンターノという哲学者に影響を受けて、25歳ごろから哲学を専門に変更しています。

そしてもともと数学研究家だったフッサールが哲学の中でも専門的に力を入れたのは、「現象学」という分野です。フッサールが構想した「現象学」は、何らかの対象が私たちの外部に存在していると言うために「認識」がどのように成立しているのかを根拠づけようとしたものです。
哲学というのは基本的に「真理を求める」学問ですが、「現象学」は「自分たちはなぜ真理だと感じるのか?」を研究する学問です。
他にも、ノエシス・ノエマ、エポケー、現象学的還元などの思想を唱えています。

フッサールの現象学は後にハイデガー、サルトル、メルロポンティー、レヴィナスらによって独自に展開され、哲学という分野を超えて社会学、医療、教育学などに活用されています。これだけでも、フッサールの著作だけ読んでいては決して発見できない解釈がある気がします。だからこそこの本を機に、他の哲学者にも興味を持ちたい!

②愛するということ

私が初めてエーリッヒフロムの「愛するということ」を読んだのは大学生の頃。当時は、フロムが言っている「愛は技術である」の意味がイマイチよく分からず、「なんだかよく分からんけど、自分から愛することが大事なのか?」位にしか思ってませんでした。
でも、年齢を重ねれば重ねるほど、「愛は技術である」ということを身を持ってそうだよな、と感じることが増えてきました。
改めて20代最後の年だからこそ、「愛される」よりも、「愛すること」について考えたいと思って、選びました。
この歳になって読むことでまたどんな発見や気づきがあるのか、楽しみ。

③植物は気づいている: バクスター氏の不思議な実験


私は植物が大好きで家に数十種類の植物を育てています。植物を見ていると元気が出るのと、たまに語りかけたりするんですよね。「今日もかわいいね〜」とか「最近寒いね〜」とか。返答がもちろんある訳ではないんですが、「植物にも、快・不快の感情があるんじゃないか?」ってたまに思ったりもして。私と同じようにそんなふことを思って実験した人がいます。
その名も、クリーヴ・バクスター。
「植物に感情は存在するのか?」
こうした"不思議な現象"を研究する人のこと、もっと知りたい。
本には、実験の詳細から世間の反応、実験が示唆するスピリチュアルな側面まで描かれているそう。果たしてどんな結果が描かれているのか。


2024年大滝が読みたい本3冊

①精神と自然 生きた世界の認識論 (岩波文庫)

ベイトソン。あまり聞き馴染みない方も多いかもしれません。僕も学びの研究を始めてから耳にするようになりました。ベイトソンは調べると一言で「イギリスの人類学者」などと紹介されたりしていますが、生物学、人類学、心理学、情報理論など多岐にわたる分野を横断しながら活動し、多方面に影響を与えているためもはや固有領域での「専門家」を超えた存在になっています。

僕は学習科学という「学びの科学」を専門領域で研究しつつ、博士の学位は「情報学」で取得予定です。情報学は文字通り「情報」を扱う学問領域ですが、この情報学でもいわゆる「コンピューティング(計算機科学)」のような世界観ではなく、「コミュニケーション」や「学び」を探究する研究者や実践者が非常に拠り所にできるような考え方「サイバネティクス」という概念が立ち上がる支えとなった人でもあります(日本では東京大学の西垣先生が中心となって創られた「基礎情報学」も、この概念をベースにしています)。

たとえば、「情報」の定義についてのベイトソンの次の一節。

情報とは、「差異を作り出す差異」である。
"The difference which becomes information by making a difference."

「精神と自然」グレゴリーベイトソン

……これ、痺れません?笑 この「差異」を作り出すのは、「私」と「あなた」といった二人の存在が必要だということなんです。つまり、情報はそこにあるだけでは情報にならない。その二者間で初めて意味を成す、「関係性」を非常に大切にした考え方なんですよね。

「精神と自然」も学び、という営みそのものを揺さぶるような著作であるため、「学び」を研究・探究したい人としては読んでおかなきゃ……!という人ではあるのです。邦訳は長らく入手困難になっていたものが、岩波文庫が最近文庫本を出してくださり、2024年はやっと向き合えそうです。世界との関わり方を新たな視点で考えるきっかけを得ることができる本。一緒に向き合ってくださる方募集してます!

②集まる場所が必要だ――孤立を防ぎ、暮らしを守る「開かれた場」の社会学 (岩波文庫)

&anteが創る学び場は時間や地理的制約を超えて全国から参加できるよう、オンラインで実施されることが多いですが、物理的な「場」の重要性も認識しています。また、繋がりある学びの場づくりをされている友人が、学びの校舎や、継続的に集まれる場を持ったりしている中で、自分も場がもたらす「価値」への解像度を上げていきたいなと思っています。

「集まる場所が必要だ――孤立を防ぎ、暮らしを守る『開かれた場』の社会学」エリック・クリネンバーグ (著), 藤原朝子 (翻訳) 英治出版紹介より

つながりを育み、私たちの暮らしと命を守るには何が必要なのか?
研究を通して見えてきたのは、当たり前にあるものとして見過ごされがちな場、「社会的インフラ」の絶大な影響力だったーー。
コロナ禍を経験した今こそ、私たちには集まる場所が必要だ。

「集まる場所が必要だ――孤立を防ぎ、暮らしを守る『開かれた場』の社会学」エリック・クリネンバーグ (著), 藤原朝子 (翻訳) 英治出版紹介文より

緊急時や災害時などでも、「集まる場所」の価値が際立ちます。様々な天災リスクを抱える日本で暮らす以上、本の紹介文にもある「災害を防ぐより、レジリエンスの高い地域づくり」が重要になると思います。2024年、早々に読んでおきたい一冊です。

③学習を超えて: 人間的未来へのデモクラティックな教育

ガート・ビースタはオランダの教育学者です。この方は「教育の学習化」ということを指摘し、最近の流れである「教えるから学ぶへ」という、学習者中心の発想を批判的に捉えています
学習者のニーズに応えているだけでは、社会から見た教育の意義を忘れかねない。そもそも「よい教育とはなにか」「教育の目的とはなにか」? 

僕も学習科学という「学び」を中心に置いて研究活動を行っていますが、ビースタの問いはとても大切だと考えています。人は何のために学ぶのか、何を目指して学ぶのか。常に前程に関わる問いが重要だと考えています。できれば原著で読みたい所なんですが……原著でも日本語でも、ビースタの視点を一緒に読み解いてくださる方がいたらぜひ。

さいごに

さて、いかがでしたでしょうか。
「初めて聞いた!」「読んだことある!」「これ読みたい!」「なんか難しそう….」など色んな感想があるのではないかなと思います。

特に、普段は触れない古典などは抵抗があるかもしれないですが、こういう古典こそ、興味がある方を巻き込んで一緒に読書会などするとちゃんと読むことに繋がるのでおすすめです。

&anteでも2024年は読書会など企画していきたいな。

今後も様々なイベントや場づくりの情報を発信していきますので、もしよろしければぜひフォローをお願いいたします◎

追伸: おさそい

&anteでは2024年1月末から「仕事そのものについて考え、悩みを本音で共有できるコミュニティ」『シゴトを考える日。4期』をスタートさせます。対話し考えたことを通して、現状のキャリアマップから最終的には自分の大切にしたい未来につながる理想のキャリアマップを作成していきます。
仕事を切り口に、「生きる」の選択肢が増えるような学びの時間を作ることを目指します。本noteを書いている2人もメンバーとして場を作ります。あなたも一緒に考えてみませんか? ご参加お待ちしています。


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