地元の中華料理屋

引っ越してきたその日、というのは外食になる。
電気・ガスがまだ通っていなかったり、テーブルがなかったり、単純に引っ越し疲れで家でご飯を作る気になれなかったり。理由はそれぞれであろうが、そういうものである。

地方から今の実家があるところに引っ越してきた時もそうだった。
その時は引っ越しがひと段落して家族で最寄駅の町中華に入った。両親は町中華特有の小さいコップで中瓶のビールを煽り、私と弟はオレンジジュースとコカコーラを飲んでいた。それも瓶だった。

十数年の時が経ち大人になった。
彼氏と同棲することになり、実家を離れた。
それから一年弱して結婚した。

入籍して苗字が変わると役所への届出が厄介である。そして私は久しぶりに実家に戻った。

1日がかりで諸々の申請を終え、疲れ果ててしまった。今日は家でご飯作る元気がない。
最寄駅でお店を探すと随分寂れた中華料理屋が目に入った。あの町中華だ、そういえば昔に来た時もこんな風に疲れ果てていたことを思い出す。
まだあったことに感激しつつ店に入る。

ラーメンと餃子、ビールの中瓶を頼んで1人で食べる。けれど、あの頃食べて感じたほど美味しくはない。思い出は美化されてしまったのか、美味しくなくてもそれはそれで良いように思えた。
そもそも昔食べたのはチャーハンだったかな、なんて考えながら帰路についた。


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