言葉と古代ロマン
私がこれまで趣味として独学で調べたり勉強してきた好きなものを二つ挙げる。
一つ目は言葉。特に古い言葉や語源なんかを知るのが楽しくて好きだ。
二つ目は古代史。歴史の中でも判っていないことが多い、謎に満ちている、想像の余地があることにロマンを感じる。ワクワクする。
言葉について
一つ目の言葉については、もう二十年も前になると思う。インターネットを始めて、そこに溢れる情報を読み漁っていたとき、惹き込まれたのがいわゆる「地名解」のサイトだった。
地名について
地名には色々な由来がある。解りやすいのは瑞祥地名。「宝」「黄金」「栄」「朝日」「希望」など縁起のいい名前、おめでたい名前を付けるというものだ。近代・現代、日本でいうと明治時代以降に付けられたものが多い。故事、歴史的事実を反映したものもある。例えば奈良時代に、朝鮮半島の北部から満州にかけて栄えていた高句麗という国から日本に帰化した人達を住まわせた郡なので高麗郡とか。
とはいえ、地名なんだから、多くは地形が語源になっているはず。流れの速い川の近くが「早川」だったり、大きな野原が「大原」だったり、扇形の谷が「扇谷」だったり。
ところが…すんなりと地形として意味が通る地名って、日本では意外と少ないらしい。なんで??
その一つの答えがアイヌ語地名らしい。北海道に多い〜〜ナイ、〜〜ベツみたいな名前は、アイヌ語で〜〜川、〜〜沢という意味らしい。しかもこの類のアイヌ語地名は東北地方にもぽろぽろあって、アイヌが昔は東北地方にも住んでいたことが地名からも判るとか。へえぇぇぇ!面白っ!!自分の家の近くにもあるんだろうか??
…こんな感じでグイグイ引き込まれていった。しかも凄いのが、学者の先生とかではなく、個人の方が趣味で作られているサイトだった。
日本語の起源について
次に、もっと凄いサイトに出会った。日本語の起源について研究しているサイトだ。こちらも個人の方が作られていた。
日本語の起源の前に、言語の起源とはどういうことかを簡単に説明する。
次のような話を聞いたことがある人は多いと思う。
英語とドイツ語は似ている
なぜなら、二つの言語は元々同じ一つの言語だった
それぞれ離れたところで話しているうちに、少しずつ方言としての違いが生まれてきて、1,000年以上の時間を掛けて、今の英語とドイツ語の形になっていった
つまり英語とドイツ語はお互いに兄弟の言語
これは実際にその通りで、こういうことが起こったことは欧州(ヨーロッパ)の歴史の文献にも書かれて残っているし、言語学でも細かく研究されて証明されている。こういう、言語の兄弟関係とか、親戚関係を調べる学問を比較言語学という。
その比較言語学は、もっととんでもないことを発見・証明した。英語とドイツ語が兄弟なだけでなくて、なんと欧州のほとんどの言語は親戚だった!約8,000年前は一つの言語だった!…という内容だ。この親戚を纏めてインド・ヨーロッパ語族とか印欧語族という。印欧語族が過去に元々一つの言語だったときの言語の名前を印欧祖語という。(他の言語でも~~祖語)という。
しかも次の図のように、どの言語と言語が兄弟で、どの言語と言語は従兄弟で…という細かい関係性(系統)までかなり研究されつくしてるらしい。(図は、東洋経済様のサイトから引用)
ちなみに、こんなに沢山の言語があるので、地理的な広がりもすごい。次の図の様に、欧州だけでなくロシア、西アジア、中央アジア、インドにも広がっている。(図は、Wikipediaから引用)
話がそれたが、日本語には、兄弟や親戚の言語は見つかっていない。中国語も、チベット語も、韓国語も、台湾語(原住民の言葉)や東南アジアの国々の言葉も、アイヌ語も、ロシア語も、モンゴル語も、満州語も、樺太や千島列島に住む少数民族の言葉も、日本語との系統関係があるかないか(親戚かどうか)を世界中の沢山の学者が調べたけど、誰も証明できていない。
そんな難問を個人で調べている人がいた。もちろん画期的な新理論とかが出てくるわけではないのだけれど、そのサイトが良かったのは、素人・初心者からすると非常に解りやすく書かれていた。専門知識を初めから知っている学者の先生と違って、自分も解っていないことを調べながら書いていたからかも知れない。
そこでは比較言語学の世界でどういう風に言語を比べるのか、どういう風に祖語の形を再構(推測して組み立てること)していくのか…という方法を丁寧に解説してくれていた。そして、実際に学者の先生が「日本語と~~語を比べてみた」とやっている論文をその手法で一つ一つなぞったり、たま~にその人なりの新しい解釈を付けたりして、やり方を示してみせてくれた。ついでに言うと、インチキこじつけ理論とちゃんとした比較言語学の違いもしっかり説明してくれていた。
そんな内容でけっこうな分量があったので、かなり楽しく読み漁らせていただいたし、更新を楽しみにしていた。
古代史について
二つ目の古代史については、多分、子供の頃からピラミッドとか古墳とかが好きだったのが、大人になって偶々ハマっていたあるソーシャルゲームで、歴史上の人物がキャラクターになっていて、そのキャラクターを切っ掛けに物凄く興味を持って調べるようになった。ゲームには触れないが、そのキャラクターは邪馬台国の女王・卑弥呼と、三国志時代の魏の軍師・司馬懿だ。
歴史に詳しい人には常識だと思うが、卑弥呼は西暦160年頃生(推定)~248年没、司馬懿は179年生~253年没。この二人はほぼ同じ時代を生きていたのだ。無知だった私はこれを知った時、興奮して震えた。なんて面白いんだろうと思って、三国志の頃の歴史を、邪馬台国の頃の倭の国(この頃は日本という名前ができる前だった)の歴史を、調べ始めた。そうしたら、とんでもない底なし沼だった…(笑)
そうでなくても、日本の歴史には謎が多い。中国の歴史書には西暦250年頃の邪馬台国のことが書いてあるのに、日本の歴史書である古事記・日本書紀(二つ合わせて記紀と省略する)には書いていない。邪馬台国の場所は、歴史書の距離・方角どおりに正確に辿っていくと、奄美大島の近くの海の中になってしまう。(図は、LA SIESTA様のサイトから引用)。
なので「距離が間違っている!九州の吉野ケ里遺跡が邪馬台国だ!」という説や「方角が間違っている!奈良の纏向遺跡が邪馬台国だ!」という説、その他諸々の説で大昔から侃々諤々の議論になっている。他にも中国の歴史書には4世紀(西暦300年代)の倭の五王のことが書いてあるのに、記紀には書いていない。謎の巨大建築物である古墳も、同じ3~4世紀の遺物だ。それが、今のご皇室(天皇陛下の一族)を中心とする大和朝廷にどうやって繋がっていったのか…。謎が尽きない。
科学の力
そんな、言葉のロマンと、古代史のロマン。この二つはそれぞれ別物だった。新しい文献が見つからないことには言葉の調査・研究は進まないし、新しい遺跡が発掘されないことには、古代史の調査・研究は先に進まないと思われていた。…20世紀までは。
ところが、科学の発展で状況が変わってきた。遺伝子であるDNAを調べて親子の鑑定をするというのは昔からできていたが、これが更に進んで、古代人の遺骨に微かに残っている細胞の残り滓からも、DNAを調べることができるようになった。
その結果、5,000年前とか10,000年前の遺跡の人骨が、今の日本人の先祖なのか、中国人の先祖なのか、アメリカ人の先祖なのか…ということが判るようになってきた。これによって古代史、特に文献が残っていない時代(先史時代という)の研究が飛躍的に進んだ。
それだけではなかった。なんと、同じ言葉を話している人々は、同じ遺伝子を持っていることが多いこと、その遺伝子は父から息子へ受け継がれていくことが判った。しかも都合のいいことに少しずつ変化しながら受け継がれるので、5,000年前のAさんの子孫に1,000年前のBさん・Cさん兄弟がいて、Bさんの子孫の一人が現代のDさん、Cさんの子孫の一人が現代のEさんである…というように細かい家系図みたいなものまで追えるようになった。これによって言葉の親戚関係を調べる学問、比較言語学も飛躍的に進んだ。
今、二つの別々の研究分野、別々の学問が、DNAで繋がって一つになりつつあって、そのお陰で研究は加速度的に進んでいる。私のような言葉好き古代史ファンにとっては、すごくワクワクする事態になっている。今までは読んでいるだけだったのだけれど、ちょっとは書いてみようかな…という考えが出てきた。情報を整理したり、先人とは違う自分なりの考えがもし出てきたらそれも書くためにnoteを始めてみる。
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