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鉄分・工場・山の三位一体:岳南電車

ほぼ毎日、色んな方のnote記事を読んでいます。そこでふと目に止まったのが、岳南電車がくなんでんしゃでした。昔何かの用事で静岡へ行った際、岳南電車に乗った記憶がよみがえり、ハードディスクに残した写真データを探すと・・・
〽あれは3年前~♬・・・じゃなく、ちょうど10年前の出来事でした。


関西では馴染みが薄い「超レア鉄道」

 岳南電車は、静岡県富士市を走る9.2㎞のローカル線。関西ではあまり馴染みがないかもしれません。それほど昔から知ってたんじゃないと思うのですが・・・さて、いつからだったかなぁ?

 おそらく、岳南電車が走っているロケーションかれて注目したのかもしれない。
 というのは、『工場え』という写真集が出版された2007年頃に、「工場夜景」とか「工場景観」がブームになっていたので、そっちからのアプローチだったような気がする。🤔

 でも、どうして工場景観と岳南電車が関係ある?って思いますよね。実は、岳南電車は工場の中を走る、かなりレアなローカル線なのです!

 さらにもう一つユニークなのは、わずか9.2㎞にある10駅すべてから富士山が見えること!!「電車好き、工場景観好き、富士山好き」には、まるでパラダイスのような条件がそろったローカル線、ほかにないでしょう?🎉

 ちなみに、他の鉄道との接続はJR東海道本線の吉原よしわら駅しかなく、アクセスは決して良くないのですが、「わざわざ」乗りに行く価値は十分にあります!👍 


あの頃とは  あれこれ違う

❚  変化のただ中にいた

 このローカル線について書かれた記事を読んでいて、私はなんとなく違和感を覚えていました。

『あれっ、岳南鉄道って名前じゃなかったっけ?』

 記憶違いかなぁ~と思って岳南電車の公式サイトを見ると、次のような説明がありました。


2013年(平成25年)3月までは岳南鉄道によって運営されていましたが、貨物輸送の廃止に伴う収益悪化を背景に、同年4月より岳南鉄道の鉄道部門が岳南電車として分社化されました。


 なるほど、そうだったんだ!
 私が撮った写真の日付を調べると、2013年の3月でした。ということは、まさに「岳南鉄道」の名前としての最後の月だったってことか!😲

7000系の「新赤ガエル」。この頃はまだ「岳南鉄道」でした

 当時はひなびた人気ひとけの少ないローカル線、という印象だったけど、2014年には「日本夜景遺産」にも認定されたらしい・・・
 岳南電車は、全国で初めて鉄道路線・駅舎・車両の広範囲で認定されたそうだから、なかなかのインパクトやね。

 今では沿線の工場景観を利用した「夜景電車」とか、一般客が電車を運転できる岳鉄がくてつ運転体験」、走る電車の中でビールが飲める「ビール電車」などなど、色んなイベントが開催されてるみたい。

 製紙業が盛んな富士市にある岳南鉄道は、元々パルプといった製紙工場の材料や製品輸送のために敷設されました。なので、旅客よりも貨物の輸送に主眼が置かれていて、かつては本線よりも工場の専用線の総延長の方が、長かった時期もあったらしい。

 そんな背景を考えると、2012年の貨物輸送の廃止はダメージが大きかったでしょうね。それだけに、使えるモノ(資源)は何でも使って儲けるぞ!という意気込みすら感じます。


❚  私にとっての「非日常」

 たぶん吉原よしわら駅から乗車したと思う。どういうわけか、全然記憶がないなぁ・・・??でも、次の「ジヤトコ前駅」は名前が個性的だったから、ちゃんと覚えてる!

 下の写真は、復路にジヤトコ前駅で降りて吉原駅方面に歩きながら撮影したんだと思う。電車が走っていたら完璧だったけど、とにかく雪をかぶった富士山が綺麗すぎて、思わずシャッター切ったなー!📷

 毎日富士山を見ている地元の方にとっては、日常の風景なのでしょうが、宙に浮いたようにそびえる富士山を見ると、畏敬の念を感じずにはいられません。

晴天で浮かんで見える富士山

 それにしても、富士山ばっかり撮影してますねぇ。😅

工場の背景にも富士山!

 富士山とのこうした構図が撮影できるのは、やはり岳南電車の強みじゃないかと・・・

煙突の背景に。
少し引きの構図で。


❚  駅が観光スポットに!

 行きは岳南富士岡ふじおかで途中下車。年季の入ったホーローの駅名ひょうなど、いかにもローカル線でした。が、今は観光スポットに整備されているもよう。

10年前のひなびたホームの様子
かつての岳南富士岡駅
昭和感のある運賃表ですな
かなりあか抜けた印象(岳南電車公式サイトより)

 駅構内には、2021年に「がくてつ機関車ひろば」がオープンし、貨物営業時代に活躍した電気機関車が展示されています。

ずいぶん変わっちゃったみたい(上掲サイトより)
10年前は殺風景に置かれていた車両も・・・
今は手前にウッドデッキのテラスができて、おしゃれに(上掲サイトより)


 ふたたび10年前に戻ります。ここでも富士山が気になったらしく、あれこれ富士山絡みの写真を連発しています。もう完全にのぼりさん状態ですね、これは・・・💦

電気機関車と富士山
少しカメラ目線?の顔と富士山
富士山の「ひとこぶ」機関車


昔と今を比べて思う

 10年前と現在の写真を見比べて改めて感じたのは、風景が違うのはもちろんだけれど、岳南電車の意識も明らかに変わっている!ということ。

 富士市は、2004年度から岳南電車に補助金を交付していて、2023~27年度までの補助期間が決定したようです。ただ、2012年の貨物輸送の廃止が経営に与えた影響は相当に大きかったと思います。

地方鉄道分科会/富士市公共交通協議会「岳南電車への令和5年度以降の公的支援について」

 当面は、通学利用の学生を一定数見込めたとしても、少子化の進行や卒業とともに利用者は減少しますし、大人はマイカー移動が中心となるために、廃線の危機にひんしているローカル線は全国各地にあります。

 となれば、日常使いだけでは限界があるので、従来とは異なるアプローチが必要です。最初に紹介したように、レトロ車両、工場景観(夜景)、富士山というユニークな資源を持つ岳南電車では、色んな資源をうまく掛け合わせながら、駅に行って電車に乗ること自体が余暇(観光)の目的となる、新たな切り口が見出せそうです。

 がくてつ機関車ひろばの整備や、各種イベントの取り組みを知って、その一端がうかがえました。あと、些細ささいなことですが、以前は静態せいたい保存された電気機関車のパンタグラフが畳まれていたのに、今はきちんと立てて車体も塗装され、今にも動き出しそうな雰囲気を醸し出しています!

 こんなちょっとした違いでも、訪れたお客さんへの心遣いであったり、資源の価値を高めようとする姿勢が伝わってきました。

 だからといって、一朝一夕に成果が出せるものではありませんが、僭越せんえつながら岳南電車の1ファンとして、遠くからサポートできればと思います。


今回も長文となりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。