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【2-7 (1)】循環器系 - 上肢の脈管 解説

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【2-7 循環器系 - 上肢の脈管】
 ■【2-7(0)】上肢の脈管 学習プリント
 ■【2-7(1)】上肢の脈管 解説(このページ)
 ■【2-7(2)】上肢の脈管 一問一答
 ■【2-7(3)】上肢の脈管 国試過去問

→ 【2-8 下肢の脈管】

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− 学習のポイント −

1. 上肢の動脈
鎖骨下動脈 → (第1肋骨外側縁) → 腋窩動脈 → (腋窩の下縁) → 上腕動脈 → (肘窩) → 橈骨動脈と尺骨動脈に分かれる。橈骨動脈は深掌動脈弓の主体をなし、尺骨動脈は浅掌動脈弓の主体をなす。
鎖骨下動脈の枝:椎骨動脈,内胸動脈,甲状頚動脈,肋頚動脈
※ 鎖骨下動脈と腕神経叢は斜角筋隙を通過
※ 尺骨神経・動脈や長掌筋は手根管を通らない。

2. 上肢の静脈
橈側皮静脈:上腕二頭筋外側縁を上行、三角筋胸筋溝にて腋窩静脈に注ぐ
尺側皮静脈:上腕二頭筋内側縁を上行、腋窩にて腋窩静脈(もしくは上腕静脈)に注ぐ

3. 上肢のリンパ
腋窩リンパ節を通り、鎖骨下リンパ本幹に至る

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■ 1. 上肢の動脈

循環器系-27-上肢の動脈-SQ図

上肢の動脈について、重要なところを全体像としてまず抑えます。

上肢の動脈の根幹は鎖骨下動脈です。鎖骨下動脈は、右は腕頭動脈から、左は大動脈弓から分岐します。その後、胸郭上口を通過し、第1肋骨上面で、前斜角筋と中斜角筋との間にできた隙間(斜角筋隙)を通って、鎖骨の下に出ます。

鎖骨下動脈が第1肋骨外側縁を越えると、腋窩動脈となります。腋窩部や上腕骨頭などを栄養し、腋窩の下縁を越えると上腕動脈へと移行します。

上腕動脈は上腕二頭筋内側縁を正中神経とともに伴行し、肘窩にて橈骨動脈と尺骨動脈へと分岐します。

橈骨動脈は手掌部で主に深掌動脈弓へと移行し、尺骨動脈は主に浅掌動脈弓へと移行します。この2つの動脈弓は互いに吻合し、手部や指を栄養する枝を分岐します。

簡単にポイントをまとめます。

・鎖骨下動脈の直接の枝(ツナコロッケは確実に)
・腋窩動脈の枝は、内側腋窩隙:肩甲回旋動脈、外側腋窩隙:後上腕回旋動脈+腋窩神経が重要
・上腕動脈は正中神経と伴行することが重要 
・橈骨動脈は深掌動脈弓へ、尺骨動脈は浅掌動脈弓の主体をなすことが大切

もうこれで以上なのですが、本日は国家試験レベルより、もう少し進んだところまで血管の走行を見ていきたいと思います。鍼灸、あん摩マッサージ指圧や柔道整復、理学療法など。。身体の構造を如何にありありと理解できるか。それが治療技術へ直結すると思います。

▶ 鎖骨下動脈〜腋窩動脈

<鎖骨下動脈・腋窩動脈の走行と筋>

循環器系-27-23-鎖骨下動脈・腋窩動脈と深層の筋-色枠再調整SQ-図

こちらは鎖骨下動脈〜腋窩動脈の走行です。鎖骨下動脈は上肢の動脈の本幹であるとともに、頸部(脳)・肩・胸部に枝を送ります。

斜角筋隙を貫通する前で椎骨動脈を出したのち、内胸動脈甲状頸動脈肋頸動脈を順番に分枝します。第1肋骨より外側で鎖骨下動脈はそのまま腋窩動脈に移行します。

斜角筋隙の解剖学-英語無し

斜角筋隙は前斜角筋・中斜角筋・第1肋骨との間にできた間隙です。ここを鎖骨下動脈と腕神経叢が通過します。鎖骨下静脈は前斜角筋の前を走行するので、斜角筋隙を通過するものには含まれないことに注意してください。

【徹底的国試対策】2-7 循環器系 - 上肢の脈管.013

鎖骨下動脈の枝は「ツナコロッケ」という超有名なゴロがあります。

第1番目の枝はツナコロッケの「ツ」椎骨動脈です。椎骨動脈は斜角筋隙を貫通する前で分岐し、この図では見えませんが、第6頸椎より上位の横突孔を上行し、大後頭孔より頭蓋腔へ入ります。頭蓋腔内にはいった椎骨動脈は、延髄と橋の境界近辺で左右が合わさり、脳底動脈となります。

2番目に分岐する枝はツナコロッケの「ナ」内胸動脈です。これは胸骨と肋骨を接続する肋軟骨部の後面を下行していきます。各肋間で、前肋間枝をだし肋間部を前から後ろへと栄養して、側胸部にて肋間動脈と吻合します。

その後、内胸動脈はさらに下行し、心膜横隔動脈や筋横隔動脈を分岐した後、腹壁へと達すると、上腹壁動脈となります。上腹壁動脈は臍の高さにて、外腸骨動脈の枝である下腹壁動脈と吻合します。

3番目の枝はツナコロッケの「コ」、甲状頚動脈です。これはすぐに下甲状腺動脈、上行頚動脈、頚横動脈、肩甲上動脈の4枝に分かれます。

この中では下甲状腺動脈がよく試験にだされます。下甲状腺動脈が鎖骨下動脈系であるのに対し、上甲状腺動脈は外頚動脈の枝であることに注意です。

また、頚横動脈は僧帽筋は、肩甲上動脈は棘上筋を栄養した後に、肩甲頚を回り棘下窩に肺って、腋窩動脈の枝の肩甲回旋動脈と吻合します。

鎖骨下動脈の4番目の枝はツナコロッケの「ロッケ」肋頚動脈です。 こちらは深頚動脈と最上肋間動脈へと分岐します。

【徹底的国試対策】2-7 循環器系 - 上肢の脈管.014

鎖骨下動脈が第1肋骨外側縁を越えると、腋窩動脈へと移行します。

腋窩動脈の枝は、肩甲下枝最上胸動脈胸肩峰動脈外側胸動脈肩甲下動脈前上腕回旋動脈後上腕回旋動脈があります。

肩甲下動脈は、肩甲回旋動脈胸背動脈へと分かれます。

腋窩動脈が腋窩の下縁(大胸筋の下縁)を通過すると、上腕動脈へとなります。腋窩動脈の枝について、すこし細かいところもみていきます。

最上胸動脈は腋窩動脈の最初の枝で、大胸筋と小胸筋の間に入り、小胸筋と前鋸筋に分布します。

胸肩峰動脈は最上胸動脈の次に出て、鎖骨枝、胸筋枝、三角筋枝、肩峰枝に分かれます。

外側胸動脈は3番目にでる枝で、前鋸筋の上を垂直に下り胸筋や前鋸筋に分布する他、乳腺へ至る外側乳腺枝を出します。

肩甲下動脈は後方に向かって、肩甲骨外側縁より肩甲下筋の前面に分布した後、肩甲回旋動脈と胸背動脈へと分岐します。

<腋窩動脈の走行と筋>

循環器系-27-腋窩部の動脈-SQ図

こちらは、大胸筋、小胸筋をめくって、その下を通っている腋窩動脈をだした図です。

胸肩峰動脈から胸筋枝、三角筋枝、肩峰枝が分岐します。肩峰枝は肩甲上動脈の枝と吻合し肩峰動脈網を形成します。

肩甲下動脈肩甲回旋動脈胸背動脈に分かれます。

肩甲回旋動脈内側腋窩隙を、後上腕回旋動脈腋窩神経とともに外側腋窩隙を通過し、背部へと至ります。腋窩動脈の枝で重要なポイントです。

前上腕回旋動脈は上腕骨外科頚の前を外方に走り、後上腕回旋動脈と吻合しつつ肩関節や周囲の筋に分布します。

後上腕回旋動脈外側腋窩隙より上腕骨外科頚の後ろを通って外方に走り、上腕骨骨膜や三角筋などに分布した後、前上腕回旋動脈と吻合します。

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