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Soulblightストーリー&アート「ミライノオト」

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Akariがお届けする、その人の別のパラレルの未来のものがたり。 現状からちょこっと足をはみ出して、ミライのオトに耳を澄ませるご体験を。 お申し込みはこちらから。 https:/…
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#未来

ミライノオトモニターNo.2「・・・の森」

寝転がって空を見上げると、大きな雲が小さな雲とくっつきそうになっていた。 こんな風にのんびりと空を眺められるのも、この森があるおかげだと、後ろを振り返る。 今私はお昼休みをもらっているけど、森の中は今日も盛況だ。 BBQを楽しむ人たち、森の中を散策する人たち、走り回るだけで笑いが絶えない子どもたち、私と同じようにのんびりと空を見上げている老夫婦、この時期咲き乱れる花の写真を撮りに来る人たち・・・ 遊び方や楽しみ方はそれぞれで、その「場」を私たちは提供している。 そして

ミライノオトモニターNo.3「ただ、そこにいるだけで」

車窓から見える海を眺めて、もう何度ここに来ただろうと振り返ってみた。 しかしもう数えることができないくらい、回数を重ねていたことに、思わずびっくりする。 この海の近い場所へ呼ばれることもあれば 森の中へ誘われることもあり 山の上にいざなわれることもあれば 洞窟のようなところへ行くこともある。 そこで感じることは、場に満ちているものたちだ。 じめっとした空気のまとわりつきや、磯の香り 近くから遠くから聞こえる鳥の声、葉と葉が重なり合う時に現れる光 虫が小さく歩く音のリズ

ミライノオトモニターN0.5「招かれたその先」

見上げると、青い空。 雲ひとつないところへ、すうっと飛行機雲が通っていく。 よく見ると、微妙なグラデーションである青の中を、これまた微妙なグラデーションの白い線が走っていく。 だんだんと飛行機雲が消えていく様子を見ていると、冷たいような、暖かいような感じが体の中を走り抜ける。 それと同時に、小さな音が聞こえたような気がした。 鈴のような、可愛い音。 「こっちを見て!一緒に遊ぼうよ」 そんな風に聞こえてきそうな、茶目っ気のあるような音。 聞こえてくるままに身をまかせる

ミライノオトモニターN0.6「ただこの身が使われる場所へ」

ここの椅子の座り心地は格別だな、と改めて感じ入りながら、沈む夕日を見つめる。 オレンジと空の色、山の稜線、吹いてくる風、どこかから香る夕飯の匂い、そして小さく聞こえてくる音の数々。 思わず、目を瞑ってこの全てを繊細に感じ取りたくなってしまう。 そして、それだけの時間的精神的余裕が今の自分にあることを、今一度感じてみる。 呼吸はゆっくりと深くなっていき、胸と腹のあたりがどんどんと緩み、そして広がっていく感覚がただ、続いている。 とてつもない、何と表現していいのか分からないけど

ミライノオトモニターN0.7「ない、が、ある、に変わる時」

日が落ちていくこの時間の、空の色がとても美しく感じる。 あっという間に太陽は下の方に落ちていき、夜の暗さの割合が増えていく。その、刻々と変わっていく空の色につい見とれてしまう。 もう2度と見られないものをこの瞬間感じているし、どこからか夜のとばりが降りる音が聞こえてきそうな気もして。 少しさみしい感覚があるのと同時に、この人が今隣にいてくれてよかった、と思えることに、体が思わずふるふると震えてしまいそうな感覚が起こる。 「どうしたの、寒い?」 そう言いながら、彼は繋いで

ミライノオトモニターN0.8「ただそれは起こるだけ」

カタカタと、遠くの空から聞こえる音に耳をすませると、 その音に感じる匂いが不意にやってくる。 今日は、甘い感じ。 花の蜜のような甘さが、ふわっと鼻の奥に広がると、私はふう、と一息ついた。 このサンルームのような場所は、私のアトリエだ。 たくさんの画材と、作品が所狭しと並んでいる・・・・ と言いたいところだけど、作品は手元にほとんどない。 なぜなら、描いた途端に、自分の手を離れていってしまうから。 きっと、昔なら「パトロン」という呼び名であろう人が 今の私には何人かいる。

ミライノオトモニターNo.9「何もしないわたしで。」

振り返ると、いろんな顔が思い出される。 私がここまでくる過程で、関わってくれた人、そして、この仕事を始めてから、関わってくれた人。 相当な数だったのだ、と改めて思う。 そして、これから出会う人たちは、さらに更新されていくのだろう。 そんなことをぼんやりと思いながら、歩いていると、目の前にうずくまっているご婦人が目に飛び込んできた。 「どうなさいました?大丈夫ですか?」 私の問いかけに、彼女は苦しそうな息の下からひねり出した、か細い小鳥のような声で 「大丈夫です・・・いつも

ミライノオトモニターNo.10「さ、次はどこを走ってく?」

ヘルメットを脱ぐと、たらりと汗が背中まで伝う感触がする。 汗ばむ季節だけれども、風を切る爽快感はやはり格別。 これを知ったらやめられない、と毎日でも思ってしまう。 到着したカフェでは、すでにこの地で集っている仲間たちが楽しそうに話をしていた。 「おお、待ってましたよ!はるばるありがとうございます」 「すみませーん、遅くなっちゃった。 ここにくる途中の、教えてもらった岬からの景色が本当に素晴らしくて。つい見とれてしまってたら、こんな時間に…」 「あ〜、それなら仕方ない、

ミライノオトモニターNo.11「無邪気は無敵だった件」

目の前には、カラッと明るい海が広がっている。 水平線をじっと見ていると、そこまで飛んでいけそうな気がする。 潮の香りと波の音は、不思議なハーモニーを奏でている。 海面を撫でる風、目を閉じたくなるけれど見ていたい太陽の光、ジリジリする肌の感覚。 「The夏、だなー!」と、つい独り言がでてしまうくらいの、わかりやすい夏。 だけれども、日本のようにジメッともしていないので、サッパリスッキリな感じだ。 この場所に旅行に行こう、と最初に言い出したのは夫だった。 偶然ネットを見てい

ミライノオトモニターNo.12「翼はいつでも、どこへでも。」

長時間のフライトは、そこをどんな風に快適に過ごせるかにかかっている、と常々思う。 「出たいんです〜」と言って降りられないのが飛行機であるのだから、この空間とこの時間をどれだけ楽しめるか、が今楽しくて仕方がない。 昔とは機内環境も色々変わって来ている。 小さな子ども連れだったら、いろいろと計画しておかなくてはならなかっただろうけど、今は昔ほどではないみたい。 子連れのファミリーが楽しそうに過ごしているのを見て、こっちまでなんだかほんわかした気持ちになる。 今回は、とある国に

ミライノオトモニターNo.13「それは仕事という名の遊び」

ー 「今度はここに描くんだね」 真っ白い壁をパンパンと叩いて、夫がニヤッと笑って振り返る。 「そうだね、初めてだよ、壁に描くのなんて」 私も同じようにニヤッと笑うと、足元にいるワンコが、くるくると二人の間を行ったりきたりする。 つい3日前に我が家に来たワンコには、まだ名前がない。 二人でいま、あれやこれやと案を出し合っているところ。 ひょんなご縁が繋がって、ここに来てくれたこの子だけど、なんというか以前から一緒にいたみたいな気持ちになっている。 3人でいることが、

ミライノオトモニターNo.14「まだ知らない、あなたとわたしと。」

ふと見上げると、夏の太陽がわんわん音を立てて照っている。 このところの暑さときたら、本当に異常だと思うけど ちょっとだけ、それもいいかもしれない、とも思う。 自分の背丈ほど伸びた植物に囲まれていると、世界は一見狭く見える感じがする。 だけれども、私はこの奥に、何か真理のようなものが見える気がするのだ。 目の前に現れているのは、地球上で何億年もここにある大地という愛の中で育まれた、生き生きとした生命であるのだから。 遠くまで意識を飛ばしてみると、ここでは聞こえないものが耳に

ミライノオトモニターNo.15「忘れてもいいこと」

そっと背中に手を当てると、硬い感覚が伝わってくる。 それは、筋肉の緊張と心の緊張、両方であるようだ。 そのままじっと当てつづけていると、だんだん緩んでくると同時に、微細な筋肉の動きや、この箇所の気の玉にも変化が現れる。 岩のように固く、外側を拒絶したような形、どんよりと重い色、泥のような匂い。 そうだったものが、じわりじわりと変化し続け、今は随分軽く、明るくなってきていることを感じる。 からだはとても正直だ。 心と密接に繋がっているから、からだから緩めることも、とても有

ミライノオトモニターNo.16「同じ場所を見るだけで」

きらきらと輝く光の海を眼下に見下ろしていると、ここがどこだか一瞬わからなくなってしまうような感覚になる。 爆音が話す言葉を掻き消してしまうけど、ちょうどいいのかもしれない。 何か話をするよりも、この状況を感じてみることが、今は大事だと思うから。 と言っても、普段聴いたことのないようなこの音は、聴覚に否が応でもフォーカスが当たりすぎてしまうんだけど。 ぐるっと光の海の上を回って、元の場所に戻ってきた。 彼が私の手を取って、エスコートしてくれる。 振動の中にいたせいか、降りる足