元パリピにトリッキーな寅さんを
依頼者からコンシェルジュへの希望
依頼者プロフィール
モーリーさん 会社員 30代 男性 寅さん鑑賞経験あり(1作目と2作目を少しずつ)
ムーピーさん 会社員 30代 女性 寅さん鑑賞経験あり (1作目から10作目まで)
モーリーさん
小津安二郎監督の作品が好きで、笠智衆さんのファンです。『男はつらいよ』は最初の二作品を少しだけ観たことがありますが、一作品を最初から最後まで観たことがないので、これを機にしっかりと味わいたいです。
ムーピーさん
以前『男はつらいよ』が観たくなり、1作目から10作目まで鑑賞しました。全48作あるので、「きりがない」と、そこでやめてしまいました。さくら(倍賞千恵子)が可愛かったのが印象に残っています。これを機におすすめされた作品を観たいです。
2人から
2人で『男はつらいよ』を楽しみたいです。古いものが好きで、もちろん古い映画も観ています。寅さんは観たことがあるので、シリーズのなかでもトリッキーで珍しい作品が観たいです。悲しいシーンよりは、楽しいシーン、テンション高めの物が観たいです。
古いものと新しいものの掛け合わせ
今回は、2人で観られるということで、2人セットでコンシェルジュさせていただきました。モーリーさんは元パリピで、当時は三日三晩寝ずに遊ばれていたとか。現在はハウスという音楽を作曲されているそうです。『男はつらいよ』の御前様役・笠智衆さんのファンとは驚きです。ちなみにコンシェルジュさせていただいた時は、元パリピとは思えない、穏やかで優しそうな方でした。
ムーピーさんはフランス、チェコ、インド、台湾など様々な国に旅行され、他にもカメラや自転車ロードレース観戦など、たくさんの趣味をお持ちでした。寅さんも1作から10作まで鑑賞済みとは、興味の幅が広いです。
お二人とも、新しいものと古いもの、両方を上手く趣味に取り入れておられる印象でした。そして『男はつらいよ』を鑑賞されたことがあり、登場人物の設定や映画の雰囲気を知っておられたことと、トリッキーな作品を観てみたい、とのご要望を踏まえて、3本ともある意味で特殊な作品をおすすめしました。
こんな寅さん他では見られない
※以下、作品の内容を記述します。
① 第24作 「男はつらいよ 寅次郎春の夢」
公開:1979年
マドンナ:香川京子
ロケ地:和歌山県
あらすじ:とらやにアメリカ人がやってきました。商売が上手くいかないマイケル(ハーブ・エデルマン)をとらやの人々は下宿させてやることにします。そこに寅さん(渥美清)が旅から帰郷し、マイケルを敵視。マイケルも寅さんがとらやの一員とは知らず、売り言葉に買い言葉で・・・。通訳をしてくれる近所の翻訳家・圭子(香川京子)に一目惚れした寅さんの恋は実るのでしょうか。
この作品のトリッキーポイントは、寅さんとアメリカ人の友情です。まずは、英語と日本語で大喧嘩が始まります。寅さんは英語がほとんど話せませんし、「アメリカ人は嫌い」と言う始末。マイケルも寅さんを悪者と思い込んでいます。喧嘩は一段落するも、マイケルは商売が軌道に乗らず、恋愛もだめ。寅さんは、自分とマイケルの姿を重ね合わせて・・・。映画終盤、この二人が別れるシーンには不思議な哀愁が漂います。とらやに外国人が下宿するのは今作だけです。また、とにかく随所に笑いが散りばめられているので、テンション高めでご覧ください。
② 第25作 「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」
公開:1980年
マドンナ:浅丘ルリ子
ロケ地:沖縄県
あらすじ:旅回りの歌手・リリー(浅丘ルリ子)が沖縄で入院したと聞いて寅さんはお見舞いに。(リリーは、第11作「寅次郎忘れな草」・第15作「寅次郎相合傘」で寅さんと恋仲になった女性)退院したリリーと寅さんは沖縄で同棲生活を開始。何十年と旅暮らしをしていた寅さんに所帯じみた生活はできるのでしょうか。また寅さんとリリーは本当の夫婦になれるのでしょうか。
この作品のトリッキーポイントは、寅さんがリリーと同棲するところです。今まで、幾度となく失恋し、稀に女性から好意を持たれても、自分から身をひいてしまった寅さん。リリーはファンの間で最も相性の良いマドンナと言われており、その理由の1つが、この作品での同棲です。昼間働いて、夜には「ただいま」とリリーと住む家へ帰る寅さんが見られるのは、この作品だけです。
③ 第41作 「男はつらいよ 寅次郎心の旅路」
公開:1989年
マドンナ:竹下景子
ロケ地:オーストリアウィーン
あらすじ:仕事で行きづまり、自殺しようとしたサラリーマン・阪口(柄本明)に気に入られた寅さんは彼とともにウィーンに行くことに。そこで、マドンナ・久美子(竹下景子)と出会います。久美子は寅さんにうながされ、日本に帰ることを決意しますが、オーストリア人の恋人が引き止めに来てしまい・・・。
この作品のトリッキーポイントは、海外を旅する寅さんです。とあることがきっかけでオーストリアのウィーンに行った寅さんは、現地のおばさんと仲良くなったり、迷子になったりと、連れの坂口を自分勝手な行動で困らせます。日本の原風景しか似合わないだろうと思っていた寅さんの背景には、モーツァルト像がありますが、不思議となじんでいるようにも見えます。ヨーロッパの街角と寅さんが見られるのは、この作品だけです。
コンシェルジュを終えて
今回は初めての2人同時のコンシェルジュとなりました。一人ずつ、しっかりとお話くださったので、無事コンシェルジュを終えることができました。トリッキーな作品を、と依頼されたのが初めてだったので、嬉しかったです。お二人とも、寅さんを鑑賞されたことがあったので、安心しておすすめすることができました。トリッキーな視点で「男はつらいよ」を見つめることができました。
モーリーさん、ムーピーさんありがとうございました。
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