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私的昭和偉人考

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大津光央が私的な観点から昭和の偉人を語る連載です。
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2020年7月の記事一覧

長州力考 前篇

長州力考 前篇

 格闘技からプロレスに転向するなら、デビュー後はまずヒール(悪役)を演じる方がいい。
 ヒールにはセールする場面が少ないからだ。
 セールとは、相手からの攻撃による衝撃や痛みを動きや表情をもって観客に訴えることをいう。それをうけて観客は試合に感情移入する。頑張れ、あるいはそのままやっつけてしまえと叫び、足を踏み鳴らす。様々なエールが交差し、それが熱気となって試合を盛り上げる。セールはプロレスに必須

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有藤通世考

有藤通世考

 落合博満は運が良い。彼はその全盛期をロッテオリオンズと中日ドラゴンズで過ごした。彼の試合は全国中継されない。ニュースでは結果しか報じられないことも多かったろう。試合のリポートがされても、彼が取り上げられるのは打点をあげた場面にかぎられていたはずだ。

 となれば、およそのプロ野球ファンにとって落合博満とは「よくわからないが本塁打をよく打ち、高打率をあげてたくさんタイトルを獲った人」という印象しか

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野村克也考

野村克也考

 長嶋茂雄が野村克也という野球人をあらためて意識し始めたのはおそらく、1991年のシーズン中のことだったろう。

 それまではといえば、長嶋は野村を歯牙にもかけなかったに違いない。

 延々と陽の浴びながら大通りを闊歩してきた者が、街路樹がつくる影の模様をいちいち気に留めたりはしない。長嶋にとって野村は、その影に巣食うテスト生上がりの一個性派選手に過ぎず、自分と同じ土俵で語られる存在ではありえなか

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高田渡考

高田渡考

 音楽のマイナーシーンにおいては町々にカーストが形成されていて、そのトップにいる連中はおよそルックスと音感が貧しい。どちらもメジャー市場の商品足りえない特性である。それらを兼ね備えた彼らは他の演者を褒めない。むしろ徹底的に周囲を腐す。褒めるのは自身と同様にルックスと音感に貧しい者にかぎられる。安心するのだろう。貧しい者たちは抜けがけをしない。できない。こちらにコンプレックスを与えない。与えられない

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大瀧哲雄考

大瀧哲雄考

 喫煙者の僕と大瀧社長は、いつも座の端に席をとっていた。
 もう7年ほど前になる。
 その日、僕らのテーブルに本が回ってきた。
 推理小説のガイドブックだ。
 和洋合わせて200ほどのタイトルが紹介されている。
 どうしたものかなと二人で所在なくページをめくっていると、ふいに声が聞こえた。
「それ全部読んでないと話になりませんよ」
 つづいて聞こえてきたのは、お追従の嘲笑の群れ。
 僕はだまってう

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