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大瀧哲雄考
喫煙者の僕と大瀧社長は、いつも座の端に席をとっていた。
もう7年ほど前になる。
その日、僕らのテーブルに本が回ってきた。
推理小説のガイドブックだ。
和洋合わせて200ほどのタイトルが紹介されている。
どうしたものかなと二人で所在なくページをめくっていると、ふいに声が聞こえた。
「それ全部読んでないと話になりませんよ」
つづいて聞こえてきたのは、お追従の嘲笑の群れ。
僕はだまってうつむいた。声が出なかった。そのかたわらで、社長はだまって煙草に火をつけた。
そのとき、ふと思った。
話にならない僕が、もし本を出したら、いまの人たちはどういう顔をするのだろうと。
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