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D06 ロックダウンのNZで非常事態宣言について考えてみた

昨日の記事を書き終えた直後に、ちょうど小池都知事が会見をしていた。

会見の頻度が増えた

2月は1週間ごとだったのが、昨日のものも含めると概ね2日から3日ごとになってきている。これはいいことだと思う。記者の質問にも定例化の提案がなされていたが、ぜひやるべきだ。毎日、小池都知事が出てこなくてもいいから、新型コロナウイルス対応緊急東京チームのトップである梶原副知事と、医療実務の代表者がふたりで毎日20分くらいでいいので、数字を出し、わかっていることとわかっていないことを切り分けるだけでも違うと思う。

もし、緊急事態宣言が早晩出るとするなら、それまでにどれだけ説明を尽くせるかが、各都道府県知事の課題となろう。宣言が出てからのこのこ出てきても、誰も話なんか聞いてくれないぞ。

さて、会見の内容としては特に、最後の方で専門家の方たちが彼らの知見から、なぜ今感染爆発が起こっていないと考えるのかをしっかり述べられたのは、素晴らしいと思う。今我々がこういう根拠に基づいてこう考えていて、だからこういう措置を取っていますという説明は、論理的である上に誠実だ。ただし、ニュージーランドの判断基準と比べると、随分と楽観的だと思った。

ニュージーランドの市中感染の認識

以下は、ニュージーランド政府が3月23日に警戒レベル2から3に移行したときのアーダーン首相の演説の一部だ。青い編みかけのところを見ると

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感染経路のわからないCOVID-19陽性例が2件確認されました。このことから、市中感染が存在すると考えます。
もしニュージーランドで市中感染が本格化すれば、患者数は5日ごとに倍の速さで増えていきます。(筆者訳)

感染経路がわからない患者が2名見つかったことを持って、コミュニティの中での感染が起こったと認識し、警戒レベルを3に格上げ、同時に48時間以内にレベル4に移行し、ロックダウンに至った。

東京都の市中感染の認識

一方で、東京都は、まだ市中感染(community transmission)は起きていないという認識だ。ところが、感染経路のわからない患者数はニュージーランドを上回っている。

この時点で、ニュージーランドでは市中感染を認定し、さっさとレベル3、その2日後には4になった。

東京都は、市中感染はまだないという認識のようだ。なぜなのか。それがわかったのが、会見の最後の質問に答える西浦さんという方の説明だ。(以下、動画クリックでその場面から再生)

彼によると、ヨーロッパ各国で指数関数的に患者数が増大したときは、2、3日に一度のペースで患者数が倍増していた。東京都でも、先週来、似たような動きが見られ、それがヨーロッパ各国で起こった指数関数的な患者数の増大に当たるのか、その確からしさを検証して来た。その結果、

今の時点での評価では、その、指数関数的な感染者の爆発的な増加が本格的に始まったという証拠が、今の時点ではありません。

さすが専門家だけあって、厳密な言葉遣いである。証拠がないと言っているだけで、爆発的な増加が始まっていないと言っているわけではない。専門家として「ぎりぎりの」発言だったと思う。でも、これは矛盾だ。

PCR検査の陽性結果(確定患者数)が指数関数的に増えていても、患者数の爆発的な増加(指数関数的な増加)は見られないというのは、矛盾じゃないか。では、何が爆発的に増加すればそうだと考えるのか。そう突っ込む記者に、西浦さんは、「PCR検査は、確定診断のために使われるので、全患者数の氷山の一角でしかない。今、感染者が増えているかどうかをリアルタイムで知るために使うデータは、帰国者・接触者相談センターを通じて受診した外来患者数や、SNSを通じた報告数を使う」という。

素人の意見だが、感染経路がわからない人が増え続けていて、氷山の一角たるPCR検査での陽性患者数も増えている。その確からしさを発熱外来に来た人の数で測るっていうのは、なんだか、こじつけに見えないか。市中感染の可能性が高い、と言ってしまうと色々とまずいから、ギリギリそういう説明ができる論法をひねり出したように見えてしまう。違うだろうか。

ニュージーランドと東京都の比較

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