【お返事】物語について語ってみる。
音楽の人ヨッシーへ。「物語って。」との語りかけに、こちらからも自分なりに語り返してみようかな。(写真絵本の人・小寺)
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物語はつまり「もの・かたり」。
「もの」が「かたられる」。
さてさて、まずは考えてみる。
「もの」とは何だろう? それは「こと」とは違うのか?
(そういえば「こと・かたり」とは言わないな……)
ここで、「もの」の響きにじっと耳をすませてみる。何度も「もの」って音を口から放ってみる。
どうもそれは、なんか“もわっ”として、“のらり”として、どこかマルくてノビた感じ。
そして、「こと」の響きにもそっと耳をすませる。何度も「こと」って音を口から放ってみる。
どうもこちらは、なんか“こきっ”として、“とつり“として、どこかカタくてトガッた感じ。
なるほど。なんとなく感じてきたぞ。
「もの」はたぶん、「こと」になるその前の〈まるまる全部〉なんだ。
「こと」はたぶん、「もの」から作られ出てきた〈できごと自体〉なんだ。
つまり、
まだ「こと」として生まれ出る前の、もわっとした〈まるまる全部〉である「もの」に形を与えること、「もの」を何かで象る(かたどる)こと、すなわち〈ものが・かたどられるっていう・できごと〉、それが〈ものがたり〉なんじゃないかな、きっと。
ぼくは、もしかしたら、「もの」を「この世界」って言い換えてもいいのかな、とちょっと思っています。「この宇宙」でもいい。
で、そこには、きっと、ぼくもあなたもあの子もアレも、未来も今も昔も“それ以前”も、もしかしたらウソやマヤカシでさえも、全部全部、ふわっとまるめこまれているんだ。それにぼくらは、ぼくらなりにかたちを与えるんだ。
日々、物語りたいね。そして、日々、だれかのかたる物語に耳をすませていたいね。
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ちなみに、「もの」を「かたどる」役目を負うのは、多くの場合、「ことば=言の葉=ことの端」、すなわち〈できごとを縁取る輪郭線〉。
だからことばって、本当は、いつでも「もの」つまりは「世界」へとまっすぐに向かうんだ。いま現(うつつ)に生まれ出てこようとする「こと」に、少しでも素敵な輪郭をプレゼントするために。
ことばはえらい。ことばは尊い。ほんとうに。
でも、「もの」に輪郭線を描くのがことばじゃなくて、ただの音の響きやリズム、または手の動きだけでも全然いいよね。
だって、大事なのはその方法じゃなくて、ツールでもなくて、とにかく「世界を美しくかたどること」。で、それは絶対、だれかになにかを「物語る」。
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なお、「こと」についての「かたり」は、たぶん「記事」って呼ばれるんだろうと思います。
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