脳ドックのすすめ(最新の手術法による動脈瘤治療)
はじめに、私は脳ドックの関係者でもなければ、医療関係者でもないことをお断りしておきます。このnoteに記す目的は一つ。自分自身の体験をもとにして、日本人の死因第4位(2020年)である脳血管疾患(くも膜下出血、脳卒中など)によって命を落とす方を減らしたいという願いからです。
たまたま受けた脳ドックで見つかる
胃カメラや胃透視検査、胸部エックス線検査などは、働く方々は年に一度受検されていることでしょう。また、これらも含まれるいわゆる人間ドックも多くの方々が受検されていることと思います。ところが、脳ドックはいかがでしょう?
なかなか受ける機会がないのではないでしょうか。
私は、2008年に脳ドックを受診しています。確か、「脳動脈瘤の疑い」という結果が出て、紹介状をいただいた記憶があります。MRIの画像も見た記憶もありますが鮮明な画像でないのと「疑い」と言う言葉、そして仕事の忙しさもあり、これまで再検査をすることはありませんでした。
歳もだいぶとってきたので、「念の為に受けておくか」程度で、8月に13年前と同じドックで検査を受けました。通常なら2週間程度で結果が送付されてくるはずですが、1週間経過したある日、ドックから呼び出しの電話がありました。「やっぱりか」と思いながら呼び出しに応じると、頭に直径12mm程度の動脈瘤があるので、すぐに専門病院を受診せよということでした。そこで見た画像は、13年前に見た画像より遥かに鮮明で私が見ても動脈瘤の存在は一目瞭然でした。
専門病院を受診する
まず、どこの専門病院に行こうかを考えました。すぐに思いついたのが、頭の病気で通っていた知り合いが「この病院は脳外科が特に素晴らしい」と言っていた県内の大学病院です。ネット等で調べても、手術例が多く信頼出来そうです。そして、紹介状を手にして診察に行ったのです。
ドックからもらったデータと紹介状を渡し、初めての診察を受けました。動脈瘤が12mmと大きいこと。この大きさでは、年間に破裂する可能性が6%であること。今後、年齢とともに体力が低下していくことなどが考えられること。そして、手術する場合の方法等を丁寧に説明していただき、私自身は、その場で手術を受ける決意をしました。
もちろんその場ですぐ手術すると決まった訳でなく、次回の診察時に詳しい説明を加えていただいた上で、手術を勧められ自分自身もそれに同意した形です。
まずは、検査入院
まず初めは、検査入院です。造影剤を使用して詳しく動脈瘤の位置を調べ、手術法を検討するデータを取得します。入院自体が初めての私は、二泊三日の小旅行のつもりで入院しましたが、現実はそれほど甘いものではありませんでした。前日から点滴が始まり、検査では腕からカテーテルを挿入し造影剤による頭部の撮影が行われました。検査自体は、1時間程度で終わりましたが、止血のためにカテーテルを挿入した腕の入口を圧迫されるのが、結構辛かったです。
検査後再度診察を受け、最新の手術法でより安全な「フローダイバーター」という方法を用いて3週間後に手術をすることになりました。今度の入院期間は、5日間程度になると聞きました。明くる日から、血液をサラサラにする薬も飲み始め手術の時を待ちました。その間、好きなビールは一滴も飲みませんでした。出血すると止まりにくくなると聞き、ケガをしないように注意もしました。
そして、入院・手術
10月はじめ、とうとう入院の日が来ました。検査入院より辛くなる覚悟をして病院に行きました。そして、前回同様に点滴が始まり、次の日の午前9時からの手術が言い渡されました。
翌朝、手術着に着替え看護師さんに押してもらう車椅子に乗り手術室まで行きます。先生方と挨拶をするとすぐに手術台に上がります。医師・看護師がテキパキと準備にかかります。カテーテルを入れるところだけの局所麻酔なので、医師たちの会話や音が聞こえます。目を瞑って会話や音だけを聞いていると不安が高まってくるので、自分をできるだけ落ち着かせました。
痛みや違和感はありましたが、1時間半ほどで手術は終わりました。ただし、最後はカテーテル挿入部からの出血が止まりにくかったため、止血や圧迫に時間がかかったようです。
手術後は、かなり強く圧迫したままベッドに横たわって、HCUというICUに次ぐ部屋に入ります。大部屋で何かの手術をした方などと同部屋です。しかも、患部を強く圧迫し右足が伸ばせない寝たきりの状態です。ここからが最も辛い時間でした。「動けない」「伸ばせない」「痛みで眠れない」が続きました。今まで、身内を含め知り合いの方が入院された時、お見舞いに行き「お大事に」などと簡単に声をかけていましたが、入院・手術をしている方々の辛さの一片を体験しました。眠れない一夜を過ごし、後からHCUに来た人よりも遅くなったけど、明くる日の14時にやっと一般病棟に戻ることができました。そして、次の日になってベッドから立って歩いても良い許可が出ました。歩き始めは少し突っかかりそうになりましたが、時間とともに手術前の状態に近づいてきました。一日経った土曜日には、自分では「もういつでも退院できる」と思うまで回復しました。
退院、そして現在
血が止まらなかったことと土日を跨いだこともあり、退院は月曜日の夕方になりました、結果、5日間の予定がちょうど一週間、7日間の入院となりました。
切ったり縫ったりしないカテーテルでの手術なので、体はすぐに動かせます。
帰宅後に患部を見ると、カテーテルを挿入した部分だけに傷がありました。しかし、出血量が多かったのでしょう、太ももの半分くらいが内出血によって赤黒くなっていたのを見て少し驚きました。と同時に、手術の成功と無事退院したことの喜びを噛みしめました。
今日で退院してちょうど2週間になります。体力は99%戻ったようです。日常生活も仕事も普通にできています。あとは、手術後1か月目と3か月目に診察が予定されています。今後も定期的な診察があると思うので、手術をしなかった場合より安心です。私は、医師ではないので軽々しいことは言えませんが、くも膜下出血や脳卒中は、その前兆がなく突然やってきます。そして、命を落としたり寝たきりになったりする可能性が少なくない病気です。そこで、ある程度の年齢に達したときは、無駄になるかもしれませんが、ぜひ脳ドックなどで検査を受けられることをお勧めします。経験者の一人として。
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