2018年の洋楽おすすめアルバム
今年はとにかくChance The Rapperにはじまり、その周辺のアーティストへ興味が広がった一年だった。
彼経由で知ったアーティストがSpotifyのよく聴いた曲ベストを独占しているからもよくわかります。
日本でもMCバトルブームの影響なのか、海外の流行りの音源を取り入れたような曲をよく耳にするようになりました。ただそろそろ後乗りしてる自分ですら蔓延しすぎて居心地悪くなるようなハイプ感漂っている2018年末。海外サイトを見ていても、目につくのはやはりラップのアルバムと女性シンガーソングライターの作品が多いかなという印象です。
今年はラップを聴こう!
ムーブメントが起こると、僕らへの良い影響としては安いコストで入門することができるってこと。過去OFWGKTAや、Azealia Banksがロックメディア界隈で注目を集めた時も部分的に注目しただけで、ここまで沢山のラップアルバムを掘り下げることはなかった。
HIP-HOPもアンダーグラウンドシーンが、インディーロック的なポップさを持ちはじめたような気がしてて、ギャングスターというか不良チームに入らないと仲間じゃないみたいなある種の閉鎖感が抜けて、かなり聴きやすくなっている流れがあるなぁという印象をうけてます。チャンスはその象徴的な存在だと思うし、当時ぶりに聴いたTyler, The Creatorの最新作もその超聴きやすさが衝撃だったのをよく覚えてます。
その今年の個人的な象徴Chance The Rapper(チャンス・ザ・ラッパー)は、サマーソニックの初来日前に4曲の新曲をリリース(後に2曲追加)。
前作『Coloring Book』に比べると歌ものというよりトラックの印象が強いと思ったもの、ライブでも披露した「65th & Ingleside」なんかは直前で発表されたとは思えない盛り上がり魅せていました。カジュアルなバンド編成に、FUNなスタイルが会場中に広がってめちゃくちゃ楽しかったですね。あれ見逃した人は本当にもったいない!フジのKendrick Lamarと合わせて大きな話題にもなりました。
上半期にチャンス流れで見つけたアーティストが良いタイミングで新譜をリリースしてくれたのがこの2組。Kevin Abstractを中心に12人のメンバーで構成されるBrockhampton(ブロックハンプトン)と、ファティマ・ワーナーのソロプロジェクトno name。
Tyler, The CreatorのチームOFWGKTA(Odd Future)流れで注目されたBrockhamptonは12人のメンバーという多様性とリーダーでソロでも活躍するケヴィンのセンスが光りまくる。他と比べると繊細な印象もあり、ゴリゴリのHIP-HOPファンよりもロックファンが両手を広げ受け入れそうな雑多さ。トレンドを取り入れながらも、非常に耳馴染みのよいコーラスやポップセンスも感じさせてくれて、ストリングスやコーラスを使った美しい曲「Weight」や「San Marcos」を聴けばすぐわかってもらえるはず。
チャンスと同郷のシカゴ出身で『Acid Rap』にも参加していたフィメールMC/詩人/シンガーno nameは2016年の『Telefone』以来2年ぶりの作品。
ラウンジで流れるような控えめなジャズに、語るようなMCが特徴的な彼女の言葉は、よくよく調べてみると詩人という肩書なのも納得。
そのほかにもPusha Tや、流行をばっちり感じられるPlayboy Cartiなど気になるのはありつつも、シングルでも群を抜いた存在感を感じたのは「This is America」を発表したChildish Gambino。
主張性のある映像は痛烈な風刺が入り混じったクライムなHIP-HOPのシリアスさと、コメディが変調でマッチしたような強いインパクトのある作品で、昔みたいにシングルをリピート設定したくなるぐらい聴いた。
注目が集まる女性シンガーソングライター祭り
上半期でも紹介したJorja Smith(ジョルジャ・スミス)はR&Bシンガーソングライターとして今年デビューアルバムをリリースしたUKの新ディーバ。
ドレイクの作品に参加したり、BBC Sounds ofにノミネートされたりと、売れる新人の登竜門を通りそしてその期待通りの作品を聴かせてくれたことで、もはや新人とは思えない風格を醸し出している(けどまだ21歳なんですよね…)。見た目的にもアリシア・キーズを思い起こすのですが、落ち着いたしっとりソウルをパワフルな歌声で聴かせてくれます。何気捨て曲が無いのも高評価の要因だったりしますね。
UKガラージ/グライムの流れを組みながら、ソウルの歌声に実験的なエレクトロニカが組み合わさったようなユニークさを見せるイギリスのサウスロンドンで活動するTirzah(ティルザ)。印象的なループとビート、神秘性を感じるような静けさや美しさもみせてくれる興味深い作品。
この現代的(コンテンポラリー)な作風にソウルのボーカルを乗せるのは、鉄板の手法になりつつあるかもしれませんね。この中で何気一番勧めたいのは実はこのアルバムだったりします。
日本生まれ、NY在中のミヤワキミツキことMitsukiの一曲目「Geyser」は今年の代表曲と言ってもいいほどのインパクトで、いいな良いなと思っていたものの、まさかPitchfork年間ベストの1位になるとは思ってもいなかったけど…ほんとすごい。あ〜、日本人よ!この作品に気づいてくれ!これを機に逆輸入で評価されてほしい傑作アルバム。
女性アーティストの活躍が目立つ中、Mitsukiが超インパクトを残したのが印象的で、他にも上半期に紹介した直系のインディーフォークを奏でるSnail Mailや、もうちょっとしっとりポップにしたSoccer Mommyといったベッドルームな若手シンガーのアルバムも海外ではすごく評価されていますね。
特別な存在感をみせる希少種のロックバンド
音楽の流行りもファッション同様周期を繰り返すもので、長かった80年台を経てようやく90年台に移行している時期にThe Cureのようなルックスで登場したのがPale Waves(ペール ウェーヴス)
まるでティム バートンの世界から抜け出してきたようなゴスルックとは裏腹に、80’sガールズバンドのキュートできらきらなポップというギャップがやばい!それもデビューSg.「There's A Honey」のプロデュースはThe 1975というから納得か。
「Honeycomb」を聴いて、「おっと」思ったのがUSのメタルバンド、Deafheaven(デフヘブン)。メタルにシューゲイザーを取り入れたスタイルはブラックメタルというか、ポストメタル?いやメタルシューゲイザーが一番伝わりやすくて面白いか。絶叫するMogwaiって感じ。
ちなみにブラックメタルは
“速いテンポのドラムに、金切り声のようなボーカル、音を強めに歪ませたギターでのトレモロのピッキング、宗教的で荘厳なアレンジなどを特徴とする。”
といわれると、あー納得。これはぜひライブを見てみたい。
ニュージャージー出身のPinegroveは、このピコピコ時代にGet Up Kidsの疾走感を抜いて、そのメロウな楽曲をよりフォーカスしたような泣き曲が聴ける稀有なバンド。
Get Up KidsやPromice Ringの正当後継者ともいえる泣きエモは歌えるし、じ~んと来るわでもっと評価されるべきと思うんだけど、もうエモなんて音楽のジャンルとして知らない世代はどう思うんだろうか?(退屈?)当時の土台がある人にはたまらない音なんだけど、こんなバンドまだいたんだね。
UKのぬめっとしたようなロックバラードを聴かせてくれるのは坊主頭が特徴のサウスロンドン出身Matt Maltese(マット マルチーズ)。
プロデューサーは、Foxygenのメンバーでもあるジョナサン ラドが参加していて、いままでのメロウなピアノにオールドなロックのスタイルが加わったような作品になっている。Sam Smithのような荘厳なオペラハウスで歌われる音圧なバラードとは異なり、内向的でちょっとセクシーに胸にじっとり染み込んでくるパブで聴く酔いのような心地よい歌声。
上半期の記事でロックは完全に死んでゾンビになったと書きましたが、今年はとにかくビッグアーティストのリリースを聞かなかったかな。
知っている限りだとArctic Monkeys、MUSE、Death Cab For Cutie、Mumford & Sunsなどアルバムももちろん聴きましたが、先に上げた影響もあり自分的にもロック聴くって感じではなかったんですよね。
思わず歌いたくなるようなポップスもどうぞ
The 1975はポップとロックの狭間に立つ難しい存在ながら、歌ものとしてのポップ・ロックからエレポップ色が強くなった2ndから継続された実験が昇華されたロックファンにとっては救いのような作品をリリース。
ミニマルなエレクトロニカはJapanese Houseを経たものであると思うし、近年のRadioheadのようなビートがあったりと、実験的なことを行いながら得意のポップさは忘れないという「Love It If We Made It」なんかはその集大成のような曲だ。年内にこのアルバムがあってほんとよかった。
南アフリカ出身のシンガーソングライターTroy Sivan(トロイ シヴァン)君の待ちに待った最新作はポップアイコンとしての着実にステップアップした2nd。アリアナ・グランデ(最新作「thank u,next」のビデオでも共演)や、チャーリーXCXなどのコラボなどもあり話題性も高い。想像する美青年像そのものだったり、ゲイ、映画出演、Youtuber、モデルといったそーゆうタグ付けはどうでも良くて、1stから引き続きシンプルにアルバムいいんですよね。ばぁーっと底抜けに明るいアイドルソングではなく、ちょっと内相的なインディー・ポップで、繊細さもあるしグラマラスさもある。来年は4月に来日もあることだし日本でも見つかるかな?
最後に今年は一人で台湾に行ってきたのですが、街を歩いてても洋楽聴くって感じじゃなかったので、ずっと聴いていたのがこの折坂悠太。
日本人のアルバムを聴くということが、ここ最近無かったのだけど森山直太朗のフォークに、星野源のソウルを足したようなオシャレさと情動がうまく共存した絶妙なサウンドにハマりましたね。いいとこどり。
さておき。
今年は引っ越しでCDプレイヤーを処分したこともあり、CDを一枚も購入した記憶がないのです…。捨ててあった欅坂のCDを持って帰ってきたもののプレイヤーがなくて途方にくれた悲しい記憶があります。
ワイヤレスのスピーカーが最近の定番になってますが、デバイスとしてCDも簡単に接続できるものとか欲しい今日このごろ。
移動や生活のお供になるような、良い音楽が紹介できているのであれば嬉しい限りです。
参考
Pitchfork - The 50 Best Albums of 2018
NMEが選ぶアルバム・オブ・ザ・イヤー2018
GORILLA VS. BEAR’S ALBUMS OF 2018
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