見出し画像

ケッペンの気候区分 観天望気

初めて大人の地図帳を手にしたのは16歳の春で
世界の海流と大気の流れの模式図を
かた田舎の空の下で見ていた。

太陽に炙られている赤道地帯では
海流は自転と反対方向に流れていき、
ぼくの田舎では風と雲は西から吹き寄せてくる。

幼かったころ家には明治生まれの祖母が居て
西の空を見て観天望気
「来週は遠足があるよ」
ぼくが言うと
くずれそうにないね、きっぱりと

暖かく湿った季節風の吹きよせる温帯地方で
通学路のトンネルの中ぼくは雨止みをまつ

西の空はいつも教えてくれる
畝の雲が押し寄せて厚みをましてくる
ちょうどいいお湿りになるねぇ
ひび割れた田畑に、日にやけた葉に
慈雨が降り注いでくる

明後日はどうだろね
「運動会だよ」
この空はもつかねぇ
夕焼け空ばかりが続くわけはない
わかっていても
軒先にてるてる坊主が風に揺れる

乾いた風と太陽に傷めつけられた乾燥地帯に迷いこみ
水を求めて涸れ川に迷いこむ
太陽の恵みが薄れゆく寒帯地方で
あふれる陽射しの日を求める自分を知る

林立するビルの空で、ぼくは観天望気
あかね色に空が染まっても
明日に晴れた空がやってくるとはかぎらない
晴れた日々に安らいでいても、
いつまでも続くわけではない
思いもよらぬ天候に見舞われる
一滴の雨粒も降ってこない日々が
勝手が違う都会の空
それでもやはり空を見上げる

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?