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日記2021年2月5日 犬と猫と見た

それは「スーパームーン」だったと後日テレビで知った

 明け方、犬が起こしに来た。
どうした?と訊くと、「ムカムカする」と言う。
お腹がキュルキュルと大きな音を立てている。
よくある事なので、犬の腹と背中を撫でてやってまた寝た。
ほどなく犬がまたやって来て「ねえねえムカムカするよ」と言う。
お腹はさっきよりも大きな音で鳴っている。
またお腹と背中を撫でてやる。
眠いし、寒いのでまた寝ようとしたら、「トイレ、トイレ」と言う。
うちの犬は外でしかトイレしない。
えーマジか、と思ったけれど仕方ない。
セーターに着替えて厚手のパンツを履いてマフラーを巻き、あ、帽子帽子、とやっている間、犬は「早く早く」と激しく足踏みして私を急き立てる。
私と寝ていた猫は犬に安眠を妨害された、と癇癪を起こして部屋じゅうを走り回り、机に飛び乗り書類を蹴散らし、筆記具を落として、こんな夜更けに大きな音を立てて大騒ぎしている。

 外に出ると月が明かるい。
マグライトはいらなかった。
家の周りはでこぼこの、今では珍しい土の道だ。
ところどころ草も生えている。
その草の水分が凍って月明かりに照らされ、道がキラキラ輝いている。
犬に起こされなかったらこんな美しい景色は見られなかっただろう。

 以前、真夜中に猫に起こされた時は、信じられないぐらい大きい月、夢でも見てるのかと思うほどの月が家の真正面に見えた。
「ねえねえ、見て。月が綺麗だよ」
怖いぐらい大きかった。怖いぐらい美しかった。
ずっと見続けていると何か起こりそうで怖くてベッドに戻った。
それは「スーパームーン」だったと後日テレビで知った。

「寒いね早くうちに入ろう」
犬は私の呼びかけには応えず、ずっと草を食べている。






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