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今の仕事に就いたのは、一冊の本に出会ってしまったから。


ゆっくりしたい夜に少しずつ読み進めている、幅允孝さんの「本なんて読まなくたっていいのだけれど、」。

読みながらふと、自分と本の出会いを遡ってみたくなりました。

なので、なんとなく今日は “一冊の本との出会い” がもたらしてくれたあれこれを少し書いてみようと思います。「夜にゆっくりできるカフェ」や「たくさんの本に出会える場所」が、わたしの暮らすまちにもあったらいいなと思う理由もおそらくここにあると思っていて。

わたしは、日頃から四六時中本を読んでいるわけでも、特別好きな作家さんがいるわけでもありません。ただ、図書館にしても本屋さんにしても、友達のお家にしても、山梨にある母の実家にしても、本棚をのぞくのが好きで。

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いつ・どんな本を読んでいたかは なんとなくしか覚えていないけれど、今の自分を形成してきた要素に間違いなく「本」が関わっているはずだから。

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01.

わたしの変な思考回路をつくってくれたのは、小学生の時に出会った 星新一さんの本。「きまぐれロボット」や「だれかさんの悪夢」を図書館で見つけて読んでいました。おそらく、タイトルに惹かれて手に取ったんだと思う。

すると、母の実家の本棚で「これからの出来事」を発見。お母さんも読んでたんだ! と少しうれしくなったのを覚えていて。

日常の中に出てくるありえないような出来事。「もし、、」といろんなあれこれを遠くまで馳せて考えるようになったのは、良くも悪くも星新一さんの影響。


02.

「物語の中を生きてみたい。」別の世界に迷い込んでしまったような追体験ができる「わかったさん」シリーズ。

本当にこんな世界があったらおもしろいだろうなぁ、と想像力を豊かにしてくれた。読んでいる間は、わかったさんが生きている世界を訪れたかのように、わたし自身も本の中を冒険していた気がします。読み終わった帰り道に、わたしも「わかったさんの世界に迷い込めるのではないか」という期待を常に抱いていた、そんな思い出のあるシリーズ。


03.

小学校5,6年生の時にすごくハマっていた、さくらももこさんのエッセイ。

「ちびまるこちゃんの作者」という認識で購入したか何かだと思うけれど、とにかくハマって、次を読みたい! と親にお願いして何冊か買ってもらっていたのよね。

父ヒロシと「生理」の話をしたエピソードがあって、同じように父に「わたしにはいつ生理がくるのか」なんて質問し、父を困らせた記憶があります。

さくらももこさんの日常ってこんなにもおもしろいことばかりなんだ! なんて思っていたけれど、さくらももこさんにとっては日々の出来事や思考の記録でしかなかったんだと思う。何気ない日常がキリトリ次第で笑って泣けるドラマになることを感じるようになったきっかけの本。


04.

青春時代を共にした漫画たち。小2からバスケに打ち込んでいたわたしは、バスケ漫画なしにはここまで来れなかったと思う、なんて言うと大げさかな。(もちろん、ONE PIECEや少女漫画も読んでいたのですが・・)

小6の時に友達に貸してもらった「スラムダンク」をはじめ、「I'll」や「あひるの空」など、やっぱり読むのはバスケ漫画。「DEAR BOYS」や「黒子のバスケ」は読むのが続かなかったな・・。プレーに関しては身体能力が高い男子ならではのものが多かったけれど、心の微かな動きやチームメイトへの嫉妬とうまく付き合ってこれたのはこれらの漫画があったから。

バスケを通して、いい思い出もくやしい思い出もたくさん経験させてもらった。少しだけ注目される経験も、なんなら批判される経験も。

気がついたら登場人物たちよりもずっと大きくなってしまったけれど、「あひるの空」は連載が続く限り読みたいと思っています。単行本の裏表紙の日向さんのコメントが好きで、今はそこから読みはじめていて。

たしか現役の頃は、日向さんが裏表紙に書いていた「“TEAM” という文字に “I” はない」という言葉を言い聞かせていた。たとえわたしがレギュラーだったとしても、そうでなかったとしても、チームで取り組む意味を教えてくれたバスケと漫画たち。(本当は、長距離をひとりで走る方が長けていたと思うので。)

やっぱり、バスケのことになると話が収まりきらないのでこの辺りにしておきたいと思います。(反省)


05

大学生の頃はとにかくランダムに本を読んでいた。課題のため、趣味のため、研究のため。興味関心をグッと引き伸ばしてくれたのはきっと、読みたい本がなんでもあった大学の図書館。

私大かつマンモス校だったこともあり、大学の図書館は本当に充実していたように思う。1,2年生の頃は授業数も多く、ほとんど課題のために通っていたけれど、3年生になると時間にもだいぶ余裕ができたので、本棚をうろうろする習慣がついた。

「政策」には様々な視点が必要だから、と他の学部の先生の授業を受けることもでき、ある授業をきっかけに それまで訪れたことのなかった「建築」の棚をはじめて訪れた。

それまで記述のレポートしかなかったわたし達にA3の真っ白の紙が渡され、「これで自由にリサーチをまとめなさい」という課題が出された時はすごくわくわくしたなぁ。「農業とまちづくり」をテーマに事例を調べていたように記憶していて。


(「本、もっと読みたいな。」と思ったのは、Amazonで試しに買ってみた「クリエイティブの授業」という本がきっかけだったかも。留学で訪れたイギリスの本屋さんとかでこういった類の本を見た気がしていて。いや、留学よりも前だったっけ。)


「図書館に泊まりたい!」と思ったのは大学4年目の秋だったかな。復学した時に受けていた授業で、日本における移民政策を調べていた時のこと。

ずっと国際関係学や途上国における経済開発を中心に勉強してきたわたしの興味関心軸に、“異なる主張・価値観の人たちの相互理解” というテーマがあって。ふと、右の棚に目をやると、山崎亮さんの「コミュニティデザイン」というタイトルが見えたんです。

この日、出会ってしまったんでしょうね。良くも悪くも(笑)

この辺りから、こういう分野を仕事にしている人がいるんだ! ということを知り、“コミュニティの交流やコミュニケーションの生まれる場をどのようにつくっていくのか” という分野と “伝わる文章や言葉選び” “プロジェクトチームのつくり方” みたいな分野の本を片っ端から読むようになって。

なかでも、玉樹 真一郎さんの「コンセプトのつくりかた」という本の内容は一番覚えているかもしれません。任天堂Wiiのコンセプトのつくりかたを読みながら、 “思わずそうしたくなるような” 空気感やチームをつくる方法を探していたんだと思う。

商店建築」や「宣伝会議」などの月ごとに発行されるマガジン類も豊富だったので、授業もバイトもない日は片道2時間かかる図書館に通っていて。同級生は社会人1年目だったので、いい意味で孤独な時間を過ごすことができたのも、よかったかもしれませんね。

この辺で読んだ内容は、自分の部屋のどこかにある「doodle note」というらくがき帳にたくさん殴り書いてあって。

この頃の興味関心が転じて今の仕事に就いてしまいましたが、その頃にランダムに得ていた「知識」に少しずつ仕事を通して「体験」が追いついてきたので、また「知識」を増やしていきたいなと思っているところです。

あの本達に出会っていなかったら、どんな仕事をしていたんだろう。

(さっきよりも長くなってしまって、さらに反省。)


06.

父が読んだのだろうか。リビングの机の上に置いてあった、原田マハさんの「本日は、お日柄もよく」がきっかけで、いくつか原田さんの小説を読みはじめたのは2017年が明けた頃。

社会人1年目が終わろうとするタイミングで、若い女性が主役になっている小説を読みたくなったのは、わたしを知っている方には察していただければありがたいです・・(苦笑)。といっても、読んだのは3,4冊くらいなんですけどね。

少しこころがすっきりして、2年目もがんばろうって素直に思えました。まあね、自分が選んじゃった道だからね。バカだなあと思いつつも。

それ以上読まなかったのは、なんていうか「よし、大丈夫。」って思えたからかな。


07.

最近は、CIRCULATION KYOTOのディレクターさん達がおすすめしていた本や、編集されている本を少しずつ読んでみています。みなさんの頭の中をのぞいてみたくて。なかなか積ん読状態になってしまっていますが、時々、少しずつ読み進めています。あとはSWITCHの「ほぼ糸井重里」も少しずつ。


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おそらく他にもたくさん読んではいるけれど、結局思い出せるものが今の自分の一部になっているんだと思う。安藤忠雄さんの「安藤忠雄 仕事をつくる」も大事なパートの一部。

全部は読んでいないけど、要素は受け取ったんじゃないかな。安藤さんは建築関係の本読んでる時に出会って、「another sky」で深く知って、イベントで話を聞いて。

“100年経って、「楽しかった」と言える場所をつくりたい。” という安藤さんの言葉は今でも大事にしまっていて。

この仕事に就きながらこんなことを言うとあれですが、「まちづくり」がしたいわけでも、「町おこし」や「商店街活性化」がしたいわけでもなくて。そんなのは本当に結果でしかないのだから、と思うわけで。

そんなことを思いつつ、まだ伝わっていない歯がゆさと、それをひっくり返せるだけの実績がないもどかしさと。

亀岡で配っている通信に書いている「のんびり、ゆっくり、着実に。」というフレーズ、本当は自分に言い聞かせていたりもするんだな。

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海外を旅するように、本はいつも新たな価値観に出会わせてくれる。そんな新たな出会いがある「本」が並ぶ本棚が、まちの中にあったとしたら。

それだけで豊かな文化が生まれていくんじゃないかと思います。


海外に行くと本屋さんを訪れます。

日本の文化がどんな風に伝わっているのかを見てみたくて。

そのまちの文化を知りたくて。



そういえば、Amazonで頼んだ中古の本が たまたま同じ亀岡にお住まいの方から届いただけで、なんだかとっても嬉しかった。

そこには「この本が少しでもお力になれたら嬉しいです。」というようなメッセージが付いていて。

まちの中で、意図していないところから「本」が巡ってくる循環があったらおもしろいだろうなぁ。世の中には「本」にまつわるいろんなプロジェクトやサービスがあるので、ちょっとまた見てみよう。


(WEB上にある本棚といえば、これまで蓄積されてきた膨大なアーカイブがあるからこそ、ランダム機能が付いた「ほぼ日」のアプリはおもしろいんだろうな、と日々感じています。)


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