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RADWIMPSと母とベンジーと
“夏に降り注ぐ雪のようにそれは新しかった”
中学生の夏。
友達と一緒に行ったカラオケが出会いだった。
クラスで1番可愛い子がUVERworldが好きだと言えばそれが流行り、1番大きな声の子が加藤ミリヤが好きだと言えば知らないなんて言えないような空気がそこにはあった。世間がAKBやEXILEを聴いてる中で、1人でスピッツと椎名林檎を聴いてた私は今思い出しても可愛くない。
ジャニーズを尻目に、ただただベンジーに想いを馳せていたのだ。まるでそれ以外の音楽はなんの価値もないかのように。
歌うことは好きだった。
その瞬間に私は妄想の中で、簡単にグレッチで殴られる。歌舞伎町の女王にだってなれる。
でもカラオケは苦手だった。
まず流行りの曲に疎い。
何度見ても登坂くんと今市くんの違いが分からない。
話に置いていかれないように、今週のヒットチャートだけ追っかけてるけど、そんな義務感で聞いたって楽しいわけがない。今ならわかる。でもその時の私は友達に置いていかれないことに命をかけていた。
だからその日も笑顔を貼り付けたまま、まるで修行のように画面に流れる歌詞を目で追っていた。
『「もういやだ」って思っていたんなら、それでも僕はいいけど、「さよなら」って言ったのは君なのになんで泣いたの?』
そう、05140-(ん)。
衝撃的な出会いだった。
なんて読むか分からないタイトル。スピード感あるサウンドに反して女々し過ぎる歌詞。
一瞬で虜になった。
「RADWIMPS知らないの?有心論の人だよ」
確かに有心論というタイトルは聞きたことがあるなあと思った。でも、流行ってるものを簡単に受け入れることができない捻くれた私はきっと食わず嫌いをしていた。
「CD借りてもいいかな?」
あの時とっさに放った一言がこんなにも自分の人生を変えるとはその時思ってもいなかった。
その後私はRADのCDを全部聴き、彼の作る音、紡ぐ言葉、甘い声すべての虜になった。親の制止を振り切って、ギターを触るようになり、ライブに通うようになる。そして、なにより色んな音楽を聴くようになった。
スピッツと椎名林檎は今でも好きだ。
でも、それは母親が好きだったから好きだったのだ。
母に好かれたかった。
ずっと言いなりだった。
初めて自分の意思で、“これが好きなんだ”と言えるものを見つけたとき、私は一つ自立したのだと思う。
RADWIMPSに出会えてよかった。
ずっとずっと私の原点だ。
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