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バラク・オバマ著「約束の地 大統領回顧録Ⅰ」から学ぶリーダー像。

第44代アメリカ合衆国大統領のバラク・オバマが自ら記した回顧録「約束の地」を読みました。
大変面白い本だったので、紹介を兼ねてその感想を本noteに記します。

約束の地 大統領回顧録Ⅰ 上・下巻
▶著者 バラク・オバマ
▶出版 集英社

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幼少期から大統領就任後までを記す

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本書はバラク・オバマ自身が記した回顧録です。
内容としては幼少期からはじまり、学生時代を経て、弁護士となり、やがて政治の道を歩み始めます。まずイリノイ州議会議員を経て上院議員となり、そして民主党大統領候補になり、最後には御存知の通り第44第アメリカ合衆国大統領になります。その後大統領としての第一期目の任期を描き、2011年のネプチューン・スピア作戦をもって下巻を終えます。

つまり大統領時代を網羅した内容ではありません。大統領就任前が丹念に記されており、また大統領入院後も任期8年(2009-2017)のうち、2011年までのみなのです。

私はこの構成が、本書に単なる記録文章以上の価値を与えていると感じました。まず前者の"大統領就任前を丹念に記した"点です。

バラク・オバマは生まれた時点から将来は大統領になることを期待される家系に生まれたわけではありません。彼の大統領就任は現代でも類のないサクセスストーリーです。オバマが幼少期から丁寧に記してくれたおかげで、私たち読者は幼い"バリー(オバマの幼少期の渾名)"が、第44代アメリカ合衆国大統領に至るまでのサクセスストーリーを追体験できるのです。
そして、オバマは正直に彼の苦悩や葛藤、激動の人生がもたらす正の影響から負の影響まで、真摯に記しています。それらにはアメリカの最高権力者になる特殊性からくるものもありますが、彼が何度も何度も悩み、改善に務めるのは"パートナー"や"子供"、"職場での人間関係"そして激務の中で健全な人間性を保つための"心の支え"です。どうでしょうか?市井に生きる私達と似通った悩みではありませんか?激動の人生を力強く生きるオバマから、それらの共通の悩みに立ち向かう学びを得られるのは、同時代を生きる我々への彼からのギフトでしょう。

大国アメリカの指導者として

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次に、後者の大統領の任期うち約三年間のみを記した点についてです。ここから、本書は一人の優秀な若者の挑戦の物語から、超大国アメリカで最大の権力を持った男の戦いの物語に変わります。フィクション小説も敵わないドラマチックな転換です。本書における文量は前述の大統領就任以前のそれと比較すると遥かに多く、ざっと上巻の半分と下巻丸々一冊分です。

この十分な文量をもって、彼は自身の政権が成したこと、成せなかったことを具体的な関係者の名前やその役職、そして日々の会話を交えつつ記します。非常に詳細で分かりやすい記述です。その結果、ともすれば映画やドラマの中のフィクションの出来事として捉えてしまいそうな内容に、"回顧録"であり"ノンフィクション"であるリアルな迫力がもたらされています。またこの箇所は政治の話であり、専門的で退屈になりがちな部分ですが、素人の私でも興味深く読めた点に演説上手で国民にメッセージを届けることに優れたオバマの手腕が活かされています。

そして内容は後世に残る貴重な資料になります。事あるごとに国民の支持率を重要視する点や、情報の伝達速度が高速化した結果、超大国の指導者は地球の裏側の国家の軍事作戦でリアルタイムで意思決定を行う点、また権力者であれど民主主義国家では傍若無人な振る舞いは許容されない点は、前時代の国家や、同時代でも政治体制の異なる他の国家と比較しても興味深い点です。

私はこの大統領就任後の部分を読んで、国家の指導者に求められる資質は今も昔も変わらない点があると感じました。実際に本書は、かのローマ帝国の指導者として歴史に名を残すユリウス・カエサルが記した「ガリア戦記」と共通点があるように思います。それは、当代最高のチームを率い、答えがない問題に対して決断し、正攻法やハッタリを織り交ぜつつ障壁を突破し、誰よりも強靭であらねばならないことです。

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カエサル(BC100-BC44年)は寡頭制のローマにおいて有力者と三頭政治を行い、自ら軍を率いてガリア戦記を勝利に導き広大な領土をローマ帝国に組み込みました。その天才的な軍事・政治センスは古今類を見ず、また劇的かつ簡潔な「ガリア戦記」は傑作と評価され、今なお文筆家としても名を残します。

また世界は無数のランダムな要素から構成されており、例え広範囲に影響力を及ぼせる大国の指導者であっても未来の予測・コントロールは困難で、自分にとって都合よく周囲の環境を整えることができず、何より前任者たちの影響からは逃れられないようです。

オバマとカエサルは、生きた時代も戦いの舞台も政治・戦争と異なりましたが、勝利に求められた資質は驚くほど似通ったもので、これは非常に大きな学びでした。予測不可能な世界を生き抜く術を、彼らから少しでも学び取りたいものです。

まとめ

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以上簡単ですが、自分なりに感想を記しました。今回詳述はしていませんが、オバマから見た日本の印象の記述があったり、大統領専用機であるエアフォースワン機内やホワイトハウスでの過ごし方であったりなど、単純に興味をそそられる記述も満載です。またアメリカの政治や国際問題についても詳しく、かつ分かりやすく書いてあり、興味をもつきっかけにもなるでしょう。

またオバマは現在の世界が向かいつつある方向について、あまりいい兆候は感じていないのではないか?と思わせる記述もありました。一方で今の若者には、多様性、共生、平等といった価値観が根付いている様子を実感しており、ポジティブな印象を持っているようです。日々急速に結びつきを強める世界ですが、価値観や文化、人種などあらゆる点に差異が内在していることは事実です。これからを生きる私たちは、無責任な結果を次世代に残さないよう努める必要がありそうです。

以上、政治やビジネスに精通することが求められる大人から、夢あふれる前途洋々な若者まで、あらゆる世代におすすめできる本です。

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最後まで読んでいただきありがとうございました。

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▶使用した画像のリンク(Unsplashより)


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