歴史に学ぶ心の持ちよう

コロナ禍がますます経済格差を悪化させていることに懸念の声があがっている。

1年まるまる休みとなるならどんな過ごし方をするだろう。7年ごとにやってくる安息年。7年目に農作業は一切行わない。国全体の畑が休閑地となった。その年の間に自然にこぼれ落ちた種から実ったのものに関してはだれもが自由に食べることができた。貧しい人や難民や奴隷にとってこれはありがたい話だった。債権者はこの年に負債を抱えている人たちに返済を迫ることが禁じられた。仕事に追われてカリカリすることから離れて穏やかさや和やかさがそこにはあった。
7回目の安息年の次の年、つまり50年目はヨベルの年と呼ばれ、この年は特別な安息年であった。この年にすべての奴隷は解放され、売られていた土地も建物もすべてその持ち主に返された。世襲所有地は恒久的に売り渡されることはなく、誰かに売られるとしてもヨベルの年までの金額で算定された。つまり、実質的には賃貸であった。このことにより、大地主が発生することはなく、貧富の差が大きくなることを防ぐこととなった。ヨベルの年による解放で経済的に苦しい立場にあった人たちにも再興する機会が与えられた。50年のスパンであるため、人生のうちに1度か2度の経験になった。立ち行かなくなるなら50年未満の間、土地を手放したり自分を奴隷として売らなければならなかったため、借金をすることに対する慎重な考えを促したことだろう。

“近所​の​仲間​が​貧しく​なっ​て​自分​を​あなた​に​売る​しか​ない​場合,奴隷​の​よう​に​働か​せ​て​は​なら​ない。仲間​は,雇わ​れ​た​労働​者​や,移住​者​の​よう​に​見なさ​れる​べき​で​ある。ヨベル​の​年​まで​あなた​の​所​で​働く。”レビ25:39,40

奴隷と言っても雇用関係のような立場であったので虐待されることはなかった。
さらに貧しい人に利息をとって貸すことが禁じられていた。格差をなくすための最良の方法と言えるかもしれない。

“近所​の​仲間​が​貧しく​なっ​て​生計​を​立て​られ​ない​なら,外国​人​居住​者​や​移住​者​を​支える​よう​に​その​仲間​を​支え​なけれ​ば​なら​ない。仲間​が​あなた​と​共​に​生き​続ける​ため​で​ある。 仲間​を​相手​に​利息​を​取っ​たり​もうけ​たり​し​て​は​なら​ない。”レビ25:35,36


さらに貧しい人を救済するために設けられた別の法律があった。

“土地​の​作物​を​刈り取る​とき,畑​の​端​まで​刈り尽くし​て​は​なら​ない。収穫​の​後​に​残っ​た​物​を​拾う​べき​で​は​ない。貧しい​人​や​外国​人​居住​者​の​ため​に​残し​て​おく​べき​で​ある。”レビ23:22

貧しい人に支給するのではなく、労働の機会を残すことによって怠惰を助長することのないように取り決めらていた。

ヨベルの年に返却されないものとして例外が設けられていた。それは、城壁を持つ都市の中にある家である。都市の近郊にある町や村の住人は敵が攻めてきた時には城壁を持つ都市に避難することになっていた。富を築いた人は城壁に囲まれた安全な都市の中に家を構えることを望んだことだろう。都市の住人が比較的富裕でなければ避難民を養うことはできない。都市の中の家を売る人は1年以内であれば家を買い戻すことができた。しかし、その期間を過ぎたなら、その人の手から完全に離れたことになる。この制度によって都市に住む住人は入れ替わり、常にある程度の富が防衛拠点の都市に集中することになった。

富んだ人は貧しい人から搾取したから富んだわけでなく、善良な人、法に従順である人が富むようになっていた。善良な人は貧しい人々を助け守るために富を用いるので、貧しい人たちの救済にもなった。また、法は貧しい人たちを保護し、経済的に立て直せる機会を多く設けていたので貧しい人たちがいつまでもますます貧しくなる負の連鎖に陥ることはなかった。

これらの先進的な制度は、西暦前1512年、まだ自分たちの領土を持つ前の荒野をさまようイスラエル人たちに与えられた。

“エホバ​神は​私​に​言い​まし​た。『彼ら​が,私​を​畏れ​て​私​の​全て​の​おきて​を​守ろ​う​と​する​心​を​いつも​持っ​て​いれ​ば​よい​の​で​ある。そうすれば,彼ら​と​彼ら​の​子​たち​に​とっ​て​永遠​に​物事​が​うまく​いく。』”申命記5:28,29

世の中の仕組みを変えることは個人の力ではどうにもならないが心の持ちようは個人でも対応可能だ。
物事がうまくいく秘訣は神を畏れる心を保つことにある。現代でも変わらない不変の真理だ。人間の視点はどうしても狭く短い。最終的な結末が見えていない。2人の人物、アブラハムとヨブは長期的な視点で物事を見ていた。

“信仰​に​よっ​て​アブラハム​は,神​に​招か​れ​た​時​に​従い,神​から​与え​られる​こと​に​なる​場所​へ​向かい​まし​た。行き先​も​知ら​ない​まま​出掛け​た​の​です。 そして​信仰​に​よっ​て,約束​の​地​で​外国​人​と​し​て​暮らし,自分​と​同じ​約束​を​与え​られ​た​イサク​や​ヤコブ​と​共​に​天幕​に​住み​まし​た。 アブラハム​は​真​の​土台​を​持つ​都市​を​待ち望ん​で​い​た​の​です。その​都市​の​設計​者​および​建設​者​は​神​です。”ヘブ11:8-10

“ご覧​なさい,忍耐​し​た​人​たち​は​幸福​で​ある,と​わたしたち​は​言い​ます。あなた方​は​ヨブ​の​忍耐​に​つい​て​聞き,エホバ​が​お与え​に​なっ​た​結末​を​見​まし​た。エホバ​は​優しい​愛情​に​富ま​れ,憐れみ深い​方​な​の​です。”ヤコブ5:11

“今​の​事物​の​体制​で​富ん​で​いる​人​たち​に​命じ​なさい。高慢​に​なる​こと​なく,また,不​確か​な​富​に​で​は​なく,わたしたち​の​楽しみ​の​ため​に​すべて​の​もの​を​豊か​に​与え​て​くださる​神​に​希望​を​託す​よう​に。そして,善​を​行ない,りっぱ​な​業​に​富み,惜しみなく​施し,進ん​で​分け合い,自分​の​ため,将来​に​対する​りっぱ​な​土台​を​安全​に​蓄え,こう​し​て​真​の​命​を​しっかり​とらえる​よう​に​と。”テモテ第一6:17-19

引用文:新世界訳聖書
神の王国とは何ですか

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