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ドヤ顔胸板男から得た教訓

その昔つるんでいたメンツのなかに「なにかを得たいなら、なにかを我慢しないと」が口ぐせの男がいた。

わたしはその言葉にとても嫌悪感を抱いていた。
「そんなのは欲しいものを諦める都合の良い言い訳だ」と。

いったい彼はなにが欲しくて、なにを我慢していたのだろうか。
とくに興味もわかなかったため、聞かずじまいである。

とはいえ、いわゆる飲み友だちであったその男は、仕事終わりのスーツ姿が素敵だった。
スーツを胸板で着れている人だったから。

彼は酒に弱く、早い段階で酔っ払い、寝落ちする。
ところがその日は寝落ちしない方向にエンジンがかかってしまったようだ。

なにがあったか知らないが酒を飲んでテンションが上がり、あろうことか脱ぎはじめた。
いるよね、酔って脱ぐ癖のある男。

勘弁してほしい。
お店に迷惑がかかる行為をする人は苦手だ。

そして次の瞬間、彼に幻滅した。
胸板はたしかに立派だったのだけれど、腹が残念だったから。

毎日腕立て伏せをしていると、ドヤ顔でのたまっていた。
毎日の腕立て伏せの努力が、その腹で台無しになっていますよ。

∽∽∽

「絞ろうとは思ってるよ。
でも、胸は筋トレの結果が出やすいんだよね。腹はなかなか結果が出ない。
だから腕立て伏せが好きなんだ~」

「なにかを得たいなら、なにかを我慢しないと」に当てはめるのなら、
絞る努力を放棄したいから、なりたい体を手に入れることを我慢しているのかな?

…逆だろう。
「締まった腹を得たいから、我慢して食事管理と筋トレ」だろう!
ポテト食っとる場合かよ。
…あんたの胸板が泣いてるよ…

当時はわたしも血気盛んなお年頃であったゆえに、胸板男の考えを浅はかだと感じてしまった。
「お前の怠惰な価値観を、わたしに押しつけてくるなよ」などと曲解にも近い捉え方さえしてしまった。

なぜそんなに腹が立ったのかも、謎である。
わたしのほうが浅はかな考えだったかもしれない。
わたしもそれなりに酔っていたのだろう。

∽∽∽

でも、今でもこれだけはいえる。
わたしは手に入れたいものは諦めたくない。
手に入れるための行動をとる。
誰になんと言われても、
「大人になれ」とか「我慢しろ」とか言われても、我慢できない。
万年チャイルド上等だ。

リソースが足りなければ「今は」脇に置いておくこともある。
「なんかもう、ほしくないかも」と感じるときがきたら、手放せばいい。
でも、気持ちが切れるまでは諦めない。

なにが「我慢しないと」だ。
行動する前から「我慢」という便利な言い訳を使って、諦めた風を装わない。
行動しても結果が得られなかったとき、まだ行動をつづけるのか、やりきったと思えてスッキリ諦められるのか、わたしはどちらかにしたい。


…その後ほどなくして胸板男含む飲み友だちグループからフェードアウトした。
わたしは腹のたるみきった彼らのようにはなりたくなかったから。

今頃、胸板男の胸板は、腹は、どうなっているのだろう。
わたしは筋トレを始めたよ。
なりたい自分になるためにね。



今日も読んでくれてありがとうございます。
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