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その手を絶対離さない『本屋さんのダイアナ/柚木麻子』

 私の名は、大穴(ダイアナ)。おかしな名前も、キャバクラ勤めの母が染めた金髪も、はしばみ色の瞳も大嫌い。けれど、小学三年生で出会った彩子がそのすべてを褒めてくれた――。
正反対の二人だったが、共通点は本が大好きなこと。地元の公立と名門私立、中学で離れても 心はひとつと信じていたのに、思いがけない別れ道が……。
少女から大人に変わる十余年を描く、最強のガール・ミーツ・ガール小説。

新潮社

『最強のガール・ミーツ・ガール小説』
なんてわくわくする文字列なんだろう。最強で、ガールとガールがミーツするのだ。柚木麻子さんの伝家の宝刀、女の子たちの連帯の物語でもある『本屋さんのダイアナ』。

これはダイアナと彩子の女の子たちの物語でもあり、ダイアナのお母さんであるティアラと彩子のお母さんである貴子の話でもある。これを読んでいて、本当に世の中には女の子たちを分断するための仕組みがたくさんあるのだと感じた。主にそれは男性によって作られた仕組みであり、それに女の子や女性は翻弄されて本来であればつなげるはずの手を引き剥がされる。また女性たちでの連帯を妨げられることのほかにも、女の子は、女性は、母親はこうでなければならないというメッセージで呪いをかける。作中ではダイアナと彩子がだんだんとその呪いや分断に巻き込まれて、もがきながらも自らの呪いを解呪するために奔走する。
物語の最後のほうにダイアナはとある人物と会うのだけど、物語の最初のほうから散りばめられた欠片がすべて合わさって成型されてひとつのものになっていくのがあまりにも鮮やかで、物語でダイアナの生き様を追ってきた私は泣いてしまった。ぼろぼろと目からあふれて止まらなかった。ちゃんとダイアナと彩子もまた手をつなぎ直す。
柚木麻子さんの作品は女の子たちや女性が手を取りあって、世間のままならなさに立ち向かう。現実の社会で実際に女性たちが苦しんでいるものと、そのまま同じことで苦しんでいる女性がたくさん出てくる。柚木麻子さんの描く女の子は本当に魅力的で素敵な女の子たちなんだけど、その子たちが苦しんでいる姿を見るのがつらくなる。作品に反射したいまの社会があまりにも女性たちへ優しくなさすぎてしんどい気持ちになる。
なんでこんなに呪われて絆を結ばせないような作りになっているんだと腹立たしくなる。そして何くそこのやろー!と思う。女の子たちが自らに呪いをかけて、女性たちが分断されて都合のいいやつらの思い通りになってやるのものかと奮起する。
いま繋いでいる女の子たちとの手を握り直したくなるのだ。


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