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ケース27.ハロー効果〜理想の組織を目指す人材登用〜

▶︎人材登用における不平不満を防ぐには?

採用や抜擢において決定者の主観が入っているも不公平を感じて不満が生じている場面を経験したり、見かけたりすることはないでしょうか?

経営の視点:
・事業を前に進める採用と抜擢をしたい
・組織が大きくなるほど全ての人のことを細部まで知ることは不可能

現場の視点:
・納得感が持てる採用と抜擢をしてほしい
・採用と抜擢の基準に不信感を持つことがある

人が人を100%理解することはできず、全員が満場一致で納得感を持つことは難しいものですが、それでも「なぜAさんは採用されたのだろう?」、「なぜBさんではなくCさんが抜擢されたのだろう?」と個人間で違和感を持つことが不平不満から関係性の悪化にもなり得る、と組織内の小さな歪みが思わぬ組織崩壊のトリガーになりかねないことから、一定の基準を明確化することは重要です。

そこで、今回はハロー効果という概念に用いて個人間で生じるバイアスの対策を考察します。

▶︎ハロー効果

一部の印象に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象のこと。
ハローは聖人の頭上などに描かれる後光を意味することから後光効果ともいわれる。
アメリカの社会心理学者である、エドワード・L・ソーンダイクが提唱。


第一印象が幼く感じた相手は幼く見え続け、しっかりしていると感じた相手は大人に見え続けたり、人気者との前評判を受けると人気者に見え、嫌われ者との前評判を受けると嫌われ者に見えるといったように、自分の目で確かめていないにも限らず、特定の印象に引きづられてしまいます。

組織開発の領域では、最適な人材登用を妨げる代表的なバイアスの一種で、曖昧な印象での意思決定によって人によって解釈のズレが生じて不平不満感が紛れやすくなります。

それでは、ハロー効果はどのタイミングで意識して対策できると良いのでしょうか?

▶︎後天的に育成できるか、先天的に見極めるべきか

採用段階においては、同じ受け答えであっても、出身校や履歴書の内容といった前情報、前段階の面接官の評価に引きずられ、評価にハロー効果が生じることがあります。

そのため、本来必要としているスキル、価値観を見定める上で感覚的な印象が紛れやすいものですが、特に注意が必要なものが感覚的に評価されやすいのが、コミュニケーション力や知識、ロジカルシンキングといった入社後にも訓練できる後天的なスキルでハロー効果が生じやすいことです。

本来は、社交性や知的好奇心、貢献心といったタイプの分かれる先天的に近い要素を採用段階で見極めることがミスマッチ防止に繋がるはずが、「〇〇大学だからロジカルシンキングが良いだろう」、「前回の面接担当者の話が盛り上がったようだからコミュニケーションスキルは高いだろう」といったように、採用基準がハロー効果によってぶれやすくなるのです。

それによって、入社後の活躍までに期待のズレが起きて、採用する側もされる側も「こんなはずじゃなかったのに‥」とフラストレーションが溜まってしまいます。

その対策としては、どの採用ポジションは何を基準に採用するのかを一定の基準を明確にして面接官で判断基準を揃え、何のために何を聞くべきか一定の構造化面接に落とし込むことが必要です。
採用基準が揃っていることで、自組織らしさを理解し、期待ズレを防ぐ採用に繋がります。

自組織らしさが浸透されていると、規範的コミットメントが高まり、後天的スキルの支援といった貢献活動も促進されやすくなります。
規範的コミットメントに関する記事

また、逆に応募者側の視点に立ってハロー効果を考えると、初回接点と印象がその後の企業イメージを左右するため、初回接点のデザインが重要と言えるでしょう。

▶︎実力主義のタレントマネジメント

誰をどのタイミングで抜擢するのかタレントマネジメントにおいても、下記のようにハロー効果が生じやすいものです。

期待:「Aさんは人に関心がないから、マネジメントを任せられらない」
実態:以前は余裕がなく今では面倒見が良くなっている

期待:「Bさんは圧倒的なエースだから、新しい役割を作ろう」
実態:前期までは相対比較で高い成果を出せていたが、直近は不調気味

抜擢においても過去の一部の印象が引きづられ、今の実力や状況を正しく捉えなれないことから、対象者との距離が離れているほど、ハロー効果が生じていることを理解して、バイアスをなくして検討することが重要です。

そのためには、抜擢の検討において、下記のSBI情報のように具体的な事実の収集を検討材料として、一定の基準と抜擢理由を開示することが納得感となるでしょう。

①Situation (状況)
どのような状況で、どんなときに問題であったか
②Behavior(行動)
どんな行動が問題であったか
③Impact(効果)
問題行動がどんな影響をもたらしたのか


抜擢は人と比較する意識によって不公平感が生まれやすいことからシビアな問題であり、納得感を持たせられないと、気付かぬまま「どうせ無駄だ」と、組織に対する諦めを引き起こしてしまいます。
学習性無力感に関する記事

また、ハロー効果を踏まえると、個人は最初の印象が勝負だということを普段から意識しているかで、機会の得られやすさが変わると考えられます。

▶︎動機づけのために納得感を担保する

マッキンゼーの『ウォー・フォー・タレント 人材育成競争』では、マネジメントを担える人の希少性が高まっていくにつれ、採用と育成の重要度が増していくとされていますが、その中で下記の一節があります。

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雇用と昇進の決定は、第一にその人間の誠意に基づいて決められるべきだ。
第二にモチベーション、第三は能力、第四は理解力、第五が知識で最後にして最も重要度が低いのが経験である。
誠意がなければモチベーションは危険なものとなり、モチベーションがなければ能力は役に立たず、能力がなければ理解力は限られ、理解力がなければ知識は意味を失い、知識がなければ経験は行き場を失くす。
経験というのは容易に身につけられるものだが、それをすぐに役立てることができるのは、他の資質すべてを備えている人間なのだ。
ーーーーー


人は相手から受けた好意を好意で返し、敵意を敵意で返す返報性の原理が働きます。
人を活かす起点となる誠意を引き出すには、人材登用における納得感が大事なのではないでしょうか。

※本noteでは、人の可能性を拓く組織づくりのための新しい気付きを届けることを目的に、組織論とケースを考察していきます。
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