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ケース1. ピア効果〜互いに高め合うチーム〜

▶︎人は環境の生き物。どのような組織で人は育つ?

マネジメントも個人も、程度の差があれども、人が育つ環境が望ましいのではないでしょうか?

経営の視点:
・より成果創出に向けて活躍可能性の高いメンバーをトップアップさせたい
・多くの人が活躍できるように全体をボトムアップさせたい
現場の視点:
・成長環境で出来ることを増やしたい、市場価値を高めたい
・優秀な人や前向きな人と楽しく働きたい

しかし、「出る杭は打たれる」との言葉に表されるように突出して前のめりな人が可能性を潰されたり、他の人たちの頑張りにただ乗りするフリーライダーが発生したりと、人が育つ環境づくりは難しい。

そこで、今回はピア効果という概念について考察します。

▶︎ピア効果

ピア効果とは意識や能力の高い集団の中に身を置くことで、切磋琢磨しお互いを高め合う効果のこと。

(wikipedia参照)


1人では描けない基準の高さを、周囲の人からの刺激(競争や鼓舞、貢献心など)によって、目指すことができ、芽生えた自発性が更に相互に刺激し合い、チーム内で相乗効果を発揮していくとの概念です。

ペンシルバニア大学の心理学者アンジェラ・ダックワース教授の著書『やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける 』の中でも、下記のように、人は無意識に環境の影響を受けるため、GRIT(やり抜く力)が備わっている人が多い集団に身を投じる方がGRITを身につくとされています。

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自覚のあるなしにかかわらず、私たちは自分が属している文化、自分と同一視している文化の影響を、あらゆる面で強く受けている。
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一方、集団の構成によっては、お互いに悪い影響を及ぼし合う負のピア効果が生じることがあります。
そのため、負のピア効果ではなく、正のピア効果を引き出すことが重要と言えます。
では、正のピア効果を発揮するためにはどのようなことができるのでしょうか?

▶︎狙いのある人材配置

マッキンゼーの7Sにおいて、Stuffing(人材配置)は、人はそれぞれスキルやパーソナリティが異なるからこそ、それらを理解した適材適所の配置が重要とされています。

例えば、エース級の人材をトップアップのために戦略的重要度が高いポジションに置くのか、ボトムアップのためにキャリアプランのロールモデルとして花形部門に置くのか、で狙えるピア効果は異なります。

セプテーニグループでは、ピープルアナリティクスに注力しており、10年以上蓄積したデータから、社員を4つのパーソナリティタイプに分類し、成長=個性×環境(チーム+仕事)の方程式で、人が育つ最適配置にこだわり、人が育つ環境づくりを実現しています。

▶︎メンバー同士の相互作用を発揮する

人材輩出企業として代表的なリクルートやサイバーエージェントの営業部門では受注計画を確認するヨミ会で、徹底的に問い詰めることによって予算達成度を引き上げていく文化がありますが、これもピア効果を高める代表的な育成施策の一つと言えます。

目標と現状の見通しの差分に対するアクションプランを問いかけるプロセスにおいても、「比較」や「連帯責任」、「期待」といった個人活動ではなくチーム活動としての意識づけをすることで動機付けを行うことで、人の成長を加速させることができます。

MIT組織学習センター共同創始者のダニエル・キム氏の成功循環モデルによると、下記のようにチームメンバー間の相互作用が重要とされていることから、ヨミ会のような仕組みでピア効果を発揮するには、チームメンバーの基準が揃っていることやチームビルディングの工夫が重要と考えられます。

成功循環モデル
組織を4つの質で捉え、関係の質を高めることを起点にチームビルディングをすべきとのフレームワーク

>正の循環
①関係の質:対話、お互いに尊重
②思考の質:気づき、良いアイデア
③行動の質:新たな挑戦、助け合い
④結果の質:成果の実感
⑤関係の質:信頼関係の高まり

>負の循環
①結果の質:成果が上がらない
②関係の質:対立、押し付け
③思考の質:受け身、失敗回避
④行動の質:自分最適、消極的
⑤結果の質:さらに結果がでない

▶︎人が育つには人と人の組み合わせが大事

人は自身と近い水準のメンバーが同じチームでにいると、お互いに仕事の仕方や成果、自分の一歩先の人の背中を意識して、チーム全体のレベルが向上しやすくなります。
そのため、ピア効果を発揮する前提には、個人の理解のために1on1や社内イベントを通じた深いコミュニケーションや、目標管理と評価制度を通じたコンピテンシーや成果の可視化、個性やモチベーションのサーベイが重要であり、それらを踏まえて人材配置の工夫、相互作用を起こす仕掛けが、人が育つ環境をつくると言えるでしょう。

また、個人の視点に立つと、自身の一歩先の高い水準のチームで過ごすことができているかで、成長曲線は変わると考えられます。
成長性の高いマーケットには資金が集まりやすく、それに応じて優秀な人が集まりやすくなるため、自身に合ったチーム選び、チームづくりが大事です。

人は育つのか、育てるのか、人事施策を考える上での一つの思想の分岐がありますが、狙って育てることも必要でものの、内発的動機づけが喚起される環境で、自然と人が育っていくことが、経営にとっても、個人にとっても望ましいのではないでしょうか。

※本noteでは、人の可能性を拓く組織づくりのための新しい気付きを届けることを目的に、組織論とケースを考察していきます。
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