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今日ときめいた言葉163ーダーウィン進化論の「競合と淘汰」の概念だけを重視してきた社会。その先は?

(タイトル写真は、Wikipedia より転載)


(2024年6月13日付 朝日新聞 科学季評「『選択と集中』は進化論か」霊長類学者 山極寿一氏の言葉)

山極氏は、「進化論」が誤った解釈で社会に適用されてきた結果、人間や人間社会がよからぬ方向に進んでいると警告している。

現代の企業戦略や社会の作り方は、自然科学の普遍的な法則を下地にしている。ダーウィンの進化論がその一つだ。ダーウィン進化論の「競合と淘汰」という概念だけを重視して、政治、経済、社会に応用してきた。

つまり人間社会では限られた資源をめぐって競合が起こり、状況に適したものが生き残るという考え方に基づいて経済発展が起こり社会が発展したのだと考えること。

政府の主な方針も企業、自治体、教育組織も競争させて、優れた取り組みを選択し、そこに集中して支援をするー国立大学改革の「選択と集中」は、まさにこの好例である。自主性に任せては政府の望むような改革が進まないので競合的状況を作り出したのだ。

このような効率主義は人間社会のあらゆるところに浸透し、一定の時間内にいかに効率よく生産性を上げるかが目標になり、その達成度を評価することが当たり前になった。我々は時間の奴隷になってしまった。結果、同じ目標に向かって進むことが多様性を減じ、均一性をもたらした。

本来、ダーウィンの進化論は「生物がなぜこれほど多様になったかに感動して生み出された」ものである。まだ詳しく解明されてはいないが、生物多様性が高いほどウィルスが変異して家畜やヒトに感染する確率は低くなることがわかっている。生物の絶滅直後には生物が急速に多様化している。たくさんの種が分化することによって多様な環境を作り出し、全体として地球環境が激変しないよう抑える方向に向かってきた

選択と集中による組織の合併や統合は、確かにコスト削減や効率性の向上を達成した。しかし、規模が大きくなったせいで個々の変化にすぐに対応できず、大きな変化が来ると倒れやすい体質になってしまっている。

今後、地球環境に想定外の変化が起きることが予想されるとき、生物多様性と同じように小さな変化が拡大しないように対処できる、地域の性格に適応した、多様な組織を作ったほうがいい。それを分散させてネットワーク化することが重要だ。

個性を尊重した「適応と分散」の時代が来る。山極氏の考える未来像のキーワードは「適応と分散」だ。


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