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研究者を大切にしない国の未来(3)ー国立天文台の資金難、ポスドクが雇えない!

2022年11月8日付 朝日新聞「資金難でポスドク0  国立天文台の打開策」を読む。

この問題に直面したのは、ブラックホールの撮影で有名な国立天文台水沢VLBI観測所である(そんなに有名だったなんてちっとも知らなかった🙇‍♀️) その解決策として取り組んだ3点が、

①クラウドファンディングによる資金集め。予想額の3倍、3千万円が集まった
②若手研究者を企業と天文台で雇い、企業でフルタイムで働きながら研究をしてもらう。
③地元新聞社と連携して若手研究者の人件費を折半し、観測所では「特任助教」、新聞社では「特任記者」として働いてもらう。

すごい!こんな苦労をして研究を続けているなんて。研究現場はそこまで行き詰まっているということだろうか。

所長の本間希樹氏によると、天文学の分野では中国が大きな投資をしていて、この10年間の伸びは爆発的だそうだ。ここにも中国の力がひしひしと迫っている、いや超えてしまっているかも知れないとか。中国に渡る若手研究者も増えているそうだ。

しかし、そのことより本間所長がもっと重要だと考えているのは「人材をどう育てるか」だそうだ。「ここでは飯が食えない」「夢は見られない」と若手が感じてしまっていることが、日本の研究現場の一番の問題だそうである。

以前の拙文でも書いたが、研究というのは、長いスパンで考えないといけないものだ。教育も研究もコストパフォーマンスだけでは語れない。時には寄り道したりするゆとりだって必要だろう。成果が出るのか出ないのか、そんな不確かなことに任期付の雇用形態では、腰を落ち着けて取り組むこともできないだろう。だが若手ポストは、ほとんど任期付きだそうである。本間氏の言葉が光る。

「僕はブラックホールの研究を10年以上やってきました。僕だけじゃなく、世界中の数百人の人間が10年かけてやってきて、あの成果が出たわけです」

「数年契約の職を食いつなぎ、いつ自分が生きていけなくなるかわからないという若手研究者に、10年後に花開く研究をしなさいと言っても無理です。どうしてもみんなホームランを狙わなくなる」

「世の中を豊かにしている科学技術のほとんどは、偶然というか、自然界の真理を探究する中で生まれたものです。基礎科学は利益も生まないし、すぐには経済効果を出さないかもしれない。けれども、長期的な投資が必要だということを皆さんに知っていただく努力をしたい」

研究の現場がこんな状況にあっても、何の対策も取ろうとしない国に未来はあるのだろうか。ノーベル賞が発表される時はみんな大騒ぎしているけど、もうそんなチャンスも訪れなくなるのではないだろうか。

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