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カゴ落ち防止に向けたグロースハック

1 | はじめに

Eコマース業界では、ユーザーが商品をカートに入れたのにもかかわらず購入まで至らなかった状態を「カゴ落ち」または「カート離脱」と呼んでいます。

米調査会社 Baymard Institute によると、ECサイトのカゴ落ち率の平均は以下とされています。(参照)

平均カゴ落ち率 69.5%

また、株式会社イー・エージェンシーによると、カゴ落ちによる機会損失額は以下とされています。(参照)

機会損失額 平均で売上の約2.5倍

上記の調査報告からも確認できるように、カゴ落ちの防止は売上げ向上が期待できる重要施策の一つと考えられます。

ここでは、Amplitude の無料アカウントで利用できるデモデータ AmpliCart を活用し、カゴ落ち防止におけるグロースハック手法をご案内します。


2 | カゴ落ち現状把握

AmpliCart では、ユーザーが商品をカートに投入する際に以下のイベントが発火されるように設計されています。

Add Item to Cart

また、実際に商品が購買に至った際は以下のイベントが発火されるように設計されています。

Complete Purchase

ここではファネルを使ってカゴ落ちの状態把握をしてみます。

・ ステップ 1 に Add Item to Cart を設定
・ ステップ 2 に Complete Purchase を設定

これをファネルチャートで表現したのが以下になります。(チャートリンク)

Amplitude の無料アカウントをお持ちの方は (チャートリンク) を押下する事により実際のチャートで確認できるようになっています。

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ファネルチャートによると、コンバージョン率が 90.7% となりました。AmpliCart は、かなり良い結果になっています。

次にコンバージョンまでの時間を確認してみます。(チャートリンク)

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分析結果によると、カート投入後2時間を超えると購買機会が減少するといった事が判明しました。一方、中央値ラインが1時間30分のバーに位置しているので、2時間を超えても購買するユーザーが存在する事が確認できました。

次に、カート投入を何回実行した後に、実際に購買に至るのかを確認してみます。(チャートリンク)

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60% のユーザーが初回の商品投入後に購買に至っている事が判明しました。また、多くのユーザーは6回以内の商品投入の後に購買に至る事が確認できました。

最後に購買のマジックナンバーとなるアクションが存在するか確認してみます。

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カート内容を確認する View Cart といったアクションが、統計的に購買のきっかけとなるマジックナンバーである事が確認できました。

なお、View Cart は購買の一連の動作の中で発生するアクションです。クーポン使用等の購買の一連動作ではないアクションがマジックナンバーとして確認できる事を期待していたのですが、今回は該当するアクションが確認できませんでした。

ここまで行なった現状把握を一旦整理すると、 AmpliCart の購買ユーザーの特性は以下である事が判明しました。

・カゴ落ち率は10%弱
・ユーザーの購買アクションは商品をカート投入後 2時間以内
・ユーザーは商品投入アクション6回以内で購買に至る
・購買のマジックナンバーとなる相関関係の高いアクションは確認できない


3 | 施策設計

AmpliCart の購買ユーザーの特性を元に、カゴ落ち防止の施策設計を行います。施策内容を以下とする事にしました。

商品をカートに投入後 2時間経過しても購買に至っていないユーザーにプッシュ通知でリマインド

このターゲットセグメントを作成するのにファネルチャートを活用します。Amplitude ではチャートからターゲットセグメントを作成する事ができます。(チャートリンク)

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今回のファネルチャートのポイントは以下となります。

・購買までのウィンドウ枠を2時間に設定してます (緑)
・ターゲットセグメントをチャートから作成してます (赤)

ファネルチャートから自動作成されたターゲットセグメントの設定内容を確認してみます。(チャートリンク)

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直近30日で 23,446 人のユーザーが条件に該当している事が判明しました。このユーザーに対してプッシュ通知を送信する事にします。

Amplitude は複数のプッシュ通知基盤とアドオン連携をしています。これにより以下を実現できます。

ターゲットセグメントをプッシュ基盤へと定期的に自動送信

この設定は先ほどのターゲットセグメント画面にある Sync to... ボタンから画面を呼び出して設定する事ができます。以下にて1時間間隔で条件に合致したユーザーをプッシュ基盤へと自動展開するように設定しました。

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これにて商品をカートに投入後 2時間経過しても購買に至っていないユーザーにプッシュ通知でリマインドできる環境が整備できました。


4 | 効果測定

この施策実行で、どのような効果を得たのかを測定できる環境を作成してみます。効果測定内容は以下になります。

リマインド通知を受け取ったユーザーの購買へのコンバージョン測定

これをチャートで表現すると以下になります。

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上記チャートによると、リマインド通知により平均 38.2% のコンバージョンを獲得する事ができてます。

さらに、何回目のプッシュ通知で購買に至ったのかを確認してみます。

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1回目のプッシュ通知で 99.2% のユーザーが購買に至った事が判明しました。これによりリマインド通知は1回のみ行う事にしました。

最後に経済効果を確認してみます。これはリマインド通知を受け取ったユーザーの購買総額を集計する事により確認する事にしました。

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直近30日での施策による経済効果を確認した所、以下である事が判明しました。

月間約 1億円強

良い経済効果を確認する事ができたので、この試作を継続する事としました。


5 | まとめ

カゴ落ち防止する為、ここまで以下を行なって来ました。

1. 現状のカゴ落ち状況の確認
2. カゴ落ち対象ユーザー数の確認
3. カゴ落ち防止に向けた示唆出し
4. カゴ落ち防止施策の設計
5. カゴ落ち防止施策の測定

皆さんの環境ではここで述べた一連の工程はどの程度の工数がかかりますでしょうか? Amplitude では、この工程を30分以内で実行できるような統合的なマーケティング環境をご提案しています。ご質問がございましたらお気軽にお問い合わせください。


6 | 他のグロースハック手法のご案内

カゴ落ち向上した後は、カゴに商品を投入するカート投入率についても向上する必要があります。これらグロースハック手法は以下のマガジンにまとめています。ご参考頂けますと幸いです。


7 | Amplitude 無料アカウントについてのご案内

Amplitude は月間 1,000 万イベントまで無料でお使い頂けます。ファネル分析 | LTV 分析 | リテンション分析 | アクティブユーザー分析等、グロースに必要な分析を行う事ができます。

Twitter, dropbox, Microsoft, Hubspot 等で利用されている分析ツールをご自身のプロダクトでもお試しください。


8 | 「リテンション向上の虎の巻」無料 DL ご案内

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9 | Amplitude について

Amplitude は、多くのアナリティクスが採用している「セッション軸」でなく、「ユーザー軸」でユーザー行動分析ができるアナリティクスです。ユーザー行動分析により、顧客理解を深める事ができ、データに裏付けされたサービス改善を図る事ができます。

Amplitude は全世界で30,000社以上の導入実績があり、NTTドコモ, Microsoft, Twitter, Dropbox, PayPal, Under Armour 等のグローバル企業で利用され、データに裏付けされた顧客理解やサービスグロースを支援しています。

日本市場においては、パートナーである代理店と共に、イベント設計、ETL、導入から分析を含む運用支援を一気通貫でご提案させて頂いています。

お問い合わせ : tokyo@amplitude.com