【絶滅寸前】どうも、心療内科医です【トキ以下しかいない】
【注! 2023年12月 心療内科専門医とトキの数を更新しました!】
0:はじめに
はじめまして、「あもう」と申します。
職業は「心療内科医」です。
え? 「心療内科医」? 心療内科の医者?
確かにあまり見かけないけど、街中に「心療内科」って看板はあるし、
そこで働いている先生ですかね?
大体一般の方に名乗った時の反応はこんな感じです。
医療関係者の方も、精神科医は見たことがあるかもしれませんが、
「心療内科医です」と名乗る医者は出会ったことが少ないと思います。
余談ですが、数年前に知人の結婚式に参加した時、新郎側友人としてお越しの精神科の先生と名刺交換した際、
「うあ、マジッスカwww 心療内科のセンセとか初めて見たしwwwww ぶっちゃけセンセたち、どういう患者さん診てるんスカ!」
と言われました。
(こちらは春もまだ浅いというのに、何故貴方が異様に日焼けしているのかとてもとても気になりましたが、良識が邪魔して聞けませんでした)
近い診療科の医師ですら、多くはこんな反応です。
それもそのはず。日本心療内科学会が認める心療内科専門医は全国で287名しかいません。(2023年12月9日現在)
一方で、日本精神神経科学会の専門医・指導医の先生は優に1万人を超えています。
精神科専門医の1/40程度しか、心療内科専門医がいない。
違う角度からとらえてみましょう。日本を象徴する鳥、トキ(Nipponia nippon)と比較してみましょう。
日本にいる野生のトキ 458羽(2020年9月)
日本にいる心療内科専門医 287名
トキの2/3くらいしか、専門医がいない。
トキは飼育下にまだ175羽ほどいるようで、完全に野生の心療内科専門医の方が少ない。
以上を踏まえて「トキよりも稀少な存在、心療内科専門医」として、お話ししたくてこの場をお借りしました。
私の目的は、ただひとつ。
心療内科を知ってもらいたい!!
この一点のみで、この記事を書き上げる所存です。
ですので、これから書くことは特定の学会、医局の指示というわけではなく、心療内科という興味深い学問を愛した市井の心療内科医が、その魅力を周知したくて声を上げたと思ってください。
……すみません、恰好つけすぎました。
一番事実に近いのは、ニッチな分野にハマったヲタが、このまま界隈が廃れたら供給がなくなるので、少しでも大きな声を出したくなったということです。
【聡明な医療関係者の方へ】
「おまえ、そんなに盛り上げたかったら、しっかり研究して学会発表でもすればいいんじゃ……」
HAHAHA!! 正論!!
当分野でも、活発な学会活動や多学会に渡って研究をされている先生方も大勢いらっしゃいます。
私は医療関係者のみならず多くの方に、まずは心療内科の魅力を知っていただくことから始めようと思って、このような発信を行っております。ご了承ください。
1:心療内科って、何?
実はこの質問を卒業間近の医学部6回生にしても、ほとんどの子が知りません。
大学の医学部は循環器内科、消化器外科、産婦人科、皮膚科など、それぞれの科が講座を持っています。その講座が系統学的に講義をして、医学部教育が成り立っているわけです。
ここで衝撃の事実、第2弾。
心療内科の講座は、全国の大学医学部に10ヶ所もありません。
つまり、そもそも教えてくれる講座が大学にないので、医者のほとんどが講義を受けたことすらありません。
そら、授業で聞いたこともない科の医者に、誰も進んでならんわな……。
実際、私が卒業した大学にも心療内科学講座はありませんでした。
医学生でさえ当科についてよく知らないのに、況や一般の方からすれば当科がどういった診察・治療をしているか、相当見えにくい状況かと思います。
ここで、ひとつの疑問が生じてくるはずです。
「あれ、私の通っているメンタルクリニック、『心療内科』って看板に書いてあるけど……」
心配なさらないでください。
その先生方は、「精神神経科」で研鑽を積まれ心療内科領域も診察してくださる先生です。どういう仕組みになっているかは、後で述べます。
では、心療内科って何?というご質問に、端的に応えたいと思います。
① ストレスや心理的要因によっておこる病気(心身症)を診る科
② うつ病や神経症にともなう身体症状も診る
③ 身体疾患に関わる不安やうつ状態についても診る
④ 「精神科」とは異なるが、その境界は不明瞭
「……なんか、ややこしい話になってきたな」って思われたかもしれません。大丈夫です。今から噛み砕きます。
① ストレスや心理的要因によっておこる病気(心身症)を診る科
多分、このイメージを持っておられる方が多いと思います。
わかりやすく申し上げれば「試験前にお腹を下す」とか、「仕事が立て込んでくると頭痛がする」とか、「上司にパワハラ受けてたら、十二指腸潰瘍になった」とか、そういうことです。
意外なところで、「糖尿病治療中の患者さんが、食事制限にイライラしすぎてよけい食べてしまって、症状が悪化した」というのも当科の範疇です。
② うつ病や神経症にともなう身体症状も診る
あまり知られていないことかもしれませんが、うつや不安が強くなったことが原因で身体症状が出ます。たとえば、「食欲がない」、「身体が痛い」、「頭が重い」といった症状を緩和するのも当科がお手伝いします。
③ 身体疾患に関わる不安やうつ状態についても診る
これもイメージがつきやすいかもしれません。大きな病気だと告知されたり、治療に長く時間をかかることは誰にとってもつらい体験です。率直に申し上げると、治らない症状を抱える患者さんもおられます。それにともなう不安や気持ちの落ち込みをサポートすることは当科にとって大事な仕事だと思っています。
④ 「精神科」とは異なるが、その境界は不明瞭
上記のように、当科がお手伝いする疾患は内科的知識が必要になります。そのため、医師免許をとった後2年間の初期研修を終えた後、内科系に進んで後期研修をします。そのうえで、心身医学を学び、心療内科医になるのが一般的なコースです。
精神科医を目指す医師は、統合失調症をはじめとした多彩な精神疾患を診察・治療するため、精神科で研修をします。そのため、治療にあたる患者層は異なってきます。
ですが、各々キャリア形成は自由なので「精神科医ですが、心身医学を学びに来ました」とか、「心療内科医だけど、精神科研修に行きたいです」と診察できる幅を広げていく方が多いです。
以上の経緯から、「精神科救急まで対応可能な心療内科医」や「集中治療も出来る精神科医」というチートキャラのような先生も存在します。(チートじゃねぇな、その先生たちが熱心に研修された結果)
医師として対応できる疾患の幅が異なるだけではなく、疾患として身体と心はそう簡単に分けられるわけではないので、その境界は不明瞭となっています。
以上、「心療内科って何?」にお答えしてきましたが、多分皆さんが知りたいことってこういうことじゃないですよね。
「お前の科にかかったら、一体何をされるのか」
こっちの方がよっぽど気になりますもんね。わかるわかる。私もいきなり「SMバー行け」って言われたらちょっと身構えるし。出来れば何をされるか、心の準備をしていきたい。
では、ササノさん(仮名)にご登場いただきたいと思います。
誰やねん、ササノさん。
ササノさんは私の患者さんです。
「心療内科を広めるために、ササノさんの治療経過を話していいですか」とお尋ねしたところ、「僕で役に立つなら、いくらでもどうぞ!」と快諾してくれた快男児です。
では、ササノさんと私の初診(とその後の経過)をご覧ください。
2:心療内科って何してくれるの?
ササノさん(仮名)60代、男性 主訴:夜間の急激な血圧上昇
ある年の12月、ササノさんは大学病院の循環器内科・内分泌内科から紹介されて、当科へ受診された患者さんでした。分厚い紹介状と、添付されていた画像入りのROMから察するに、ここへ来るまでにいくつも検査を受けられているようでした。 紹介状の内容は以下のとおりです。
わかりやすく言えば、「夜中に急に血圧が上がって救急に担ぎ込まれてくるけれど、原因がはっきりしない。本人は不安で眠れなくなっているけど、薬もあんまり効かない。心療内科で診てほしい」というのが紹介状の中身になります。
実際にお会いしたササノさんは、穏やかな雰囲気の男性でした。若干ラフな服装で年齢に比して若く見えますが、不眠の影響もあるのかやや疲れた面持ちで入室されました。
「夜になると、血圧が上がるんです……」
緊張しながらもササノさんは話し出しました。ササノさんの病状は紹介状にある通りで、この春から急に血圧があがるようになったとのことでした。
「大学病院で検査までしたのに、原因がわからないと言われて……」
更に心療内科を受診するように言われたことが、ササノさんを困惑させていました。
「ストレスには強い方です。仕事だって休みたくない。毎日楽しいんです」
ササノさんは「心療内科=ストレスが原因だと言われた」と感じ、釈然としない思いがあるようでした。
「ササノさん。血圧が上がる原因はたくさんあって、血圧がまた上がるんじゃないかっていう不安だけでも、血圧は上がります。なので、ササノさんの身体に何が起こっているか一緒に考えたいと思います」
そうお伝えすると、賢明なササノさんは納得してくださったようで「これが僕の記録です」と初めて救急受診した前日からの血圧記録を見せてくれました。Excelで丁寧につけられた記録表は、ササノさんの多くを語ってくれました。
「とても助かります。これ、ササノさんが作られたんですか?」
「仕事柄、こういったことは苦になりません」
聞くと30年以上特許事務所にお勤めで、今もお仕事を続けられているようでした。記録上、血圧はやや高めに安定しているのに、10日に1度ほどの頻度で夜間急に血圧が上がり、その度に不安になって救急受診することが続いているようでした。
「何か、この9月(症状が出た頃)から変わったことはありませんか?」
「前の会社を定年になったので、9月から会社を変わりました」
ササノさんは能力が高く、請われて次の会社で嘱託で働くようになっていました。それもこの症状が出てから満足に働けていません。
「業務内容は変わっていませんか?」
「むしろ責任がある仕事じゃなくなったから、ずいぶん楽になりましたよ。仕事内容も面白いです。ただ勤務時間は伸びましたね。2時間半くらいかな?」
「それは、お身体に負担ではないですか?」
「別に困っていません。独身だし、帰るのちょっと遅くなったくらい。あ、でもお昼休憩はちょっと減ったかな」
こちらに慣れてきたのか、ササノさんはからからと笑いながら話すようになっていました。
「初めて血圧が上がった直前に何かありませんでしたか?」
「この前ですか……あ、研修旅行で海外に行きました。夜通し遊んで、とっても楽しかったです」
それ。最初に血圧が上がった原因は、多分それ。
だとしても、そこから高血圧発作が続く理由がはっきりしません。ひとまず私は身体診察に移ることにしました。
意外に思われるかもしれませんが、心療内科ではがっつり身体診察をします。思わぬ身体疾患が隠れていることもあるので、眼や舌、胸にお腹に腱反射とフルコースで診ます。ササノさんの場合、首の血管の聴診や胸部聴診も行いましたが、特に雑音は聴取できませんでした。強いて言うなら、呼吸が浅くやや早い。特筆すべきは、背中に回って後頚部(首の後ろ)の診察をした時でした。
「硬っ……」
首の筋肉が凝り固まっていて、指が入らない。思わず彼に尋ねました。
「あの、ササノさん。頭痛くなりません?」
「昔から結構ありますよ? 血圧あがると、頭も痛くなってくるから嫌になっちゃう」
『もしも脳血管のMRI撮ってなかったら、追加オーダーしとこう』と考えながら、ササノさんの肩から背中にかけて診察していくと、相当緊張していることがわかりました。
ひと通り、身体診察をさせてもらった後、その所見を私がカルテにまとめている間に、ササノさんに心理検査を記載してもらいました。
つらい症状を抱えていれば、不安や気持ちの落ち込みが出ることが普通です。でも、その症状がどの程度その人に負荷をかけるかは個人差があります。それを客観的に評価するツールとして、心理検査は機能します。
結果的にササノさんは不安がやや強く、気持ちの落ち込みはごく軽度ということがわかりました。
以上を踏まえて、私はササノさんに「病態仮説」を提示しました。
「病態仮説」とは、診察や心理検査の結果に基づいて「あなたの症状は、こんなことが原因で起こってるんじゃないかな」と医療者が考える仮説で、これを患者さんと共有することは、治療上重要な意味を持ちます。
ササノさんは「どうして夜になると血圧が上がるかわからない」し、この症状のせいで好きな仕事を休まされているし、(その挙句、何でか知らんけど心療内科に受診させられたし)、どうにかしてこの症状をおさめたいと考えています。つまり、ササノさんも納得する病態仮説を共有して、治療に繋げないといつまで経っても血圧は落ち着きません。
「ササノさん、人間の身体にはいちいち考えなくても、勝手に動いてくれる器官がいくつかあります。例えば心臓や呼吸、血圧や消化管なんかがそうです。それをコントロールしてくれてるのが自律神経系です。これには交感神経と副交感神経という2種類があります」
彼にわかりやすいように紙に書きますが、書いているこっちの方が漢字が多くて嫌になってきます。
「難しく考えなくていいので、身体の中にアクセルとブレーキがあると思ってください。今までササノさんの身体はこのアクセルとブレーキを上手に踏みわけて、血圧をコントロールしてきました。それが、この9月になって一気に環境が変わった」
ササノさんは新しくも楽しい(でも勤務時間が長い)環境下で、知らず知らずのうちにアクセルを踏んだ状態になったはずです。『アクセルを踏む→血圧上昇』と書くと、理系の素養があるササノさんはスムースに飲み込んでくれました。
「僕の血圧は、このせいで上がったんですね……」
「おそらく、旅行以外にも何かアクセルを踏むことが起こって、血圧が上がっているはずです。業務時間が延びて、休息時間が減っているのも気になります……仕事をお休みされてみては?」
「先生、休職しないといけませんか?」
彼はとてもショックを受けたようでした。
「ササノさんの身体に適切にブレーキを踏んでもらう必要があるので……お仕事を休むことは難しいですか?」
「いえ、職場も『ゆっくり休んで、戻ってきたらいいよ』と言ってくれています。そうじゃなくてね、先生、僕、『ゆっくり休む』のが苦手なんです」
「……と、いうと?」
「僕、仕事がないと落ち着かないんです。職場では休憩時間があるから皆に合わせて休みますけど、ひとりだとリズムがつかめない。定年後は在宅で仕事していたんですけど、そうすると3時間だけのつもりが、徹夜で仕事をしてしまったりして……これはまずいと思って3ヶ月で再就職したんです」
この人、休ませると逆効果の人だったのか……。多くの場合、仕事を休めば心身もブレーキを踏んで血圧も下がるはずが、ササノさんは「タスクがないとかえって不安」という性格傾向であり、休めば休むほどアクセルを踏み込んでいることがわかりました。
とはいえ、血圧を下げるためには彼に何とかブレーキを踏んでもらう必要があります。
私は、3つ提案をしました。
「ササノさん、仕事は続けましょう。ただ、ササノさんの心はそう感じていなくても、ササノさんの身体には今の業務量は負担がかかっています。だから、血圧が上がる。仕事の時間を調整してみてください」
「それと首と背中に緊張が強くて、呼吸も浅い。これを緩める呼吸法をお伝えするので、お家でやってみてください」
「睡眠薬は増やしません。これに心と体の緊張をとる抗不安薬か、ストレスに対する漢方を追加したいと思います」
ササノさんは漢方を選び、私は呼吸法を指導し、その日は終了となりました。
2週間後、ササノさんは業務時間を1時間減らしていました。血圧も少し上がる日もありましたが、まずまず安定しています。睡眠も改善しているようでした。
「このまま正月休みに入るので、このまま落ち着けばいいなと思います」
晴れ晴れとした顔つきで、ササノさんは帰っていかれました。
けれど、そうは問屋がおろさない。
正月休みが明けた頃、ササノさんは蒼褪めた表情で来院されました。
「先生、もう駄目です……僕は、仕事を辞めようかと思います」
どうやら、仕事が始まった途端ササノさんの血圧は上昇傾向になったようでした。そのことで不安が強くなったところに、久しぶりに高血圧発作が起こり、救急受診する結果になりました。
「それは驚かれましたね……あのね、仕事はいつでも辞められます。でも、今は仕事は辞めない方がいいです」
「環境が変わることで身体がアクセルを踏む → 血圧が上がる」のがササノさんの病態仮説です。退職して再就職したり、在宅になればまたきっと血圧は大きく変動するでしょう。それならばちょっとでも慣れた環境の中で負荷を減らしてもらうことにしました。そして、血圧が上がりそうになった時に降圧剤だけでなく、一番弱い抗不安薬を一緒に飲むようにしました。
2週間後、ササノさんは落ち着いた様子で受診されました。
「上手くいきました!」
ササノさんは更に勤務時間を短縮し、前の職場と同程度の生活リズムに戻していました。
「あと、ディスプレイの明るさとか椅子も工夫して、居心地よくしました」
早く帰れる分マッサージに通うようになり、身体もだいぶ柔らかくなっています。血圧も安定し、高血圧発作も内服の影響で高くなりすぎず、救急にも行かずに済みました。
「すごいっ! よく頑張りましたっ!!」
私は拍手でササノさんの頑張りを称えました。
これが、心療内科の診察風景です。
ササノさんはこのまま症状が安定し、1年ほどで降圧剤以外の薬を使わなくてもよくなったので心療内科を卒業していかれました。
3:心療内科医が今、考えていること
いかがだったでしょうか?
「思っていた心療内科と違う」
「ってか、内科の先生なんじゃね?」
「え、結局お前何が出来るのよ?」
いろんな感想があっていいと思っています。
心療内科医としてのアイデンティティは、各々あると思いますが、私が出来ることは「患者さんのつらさ(生きづらさ)に寄り添うこと」だと思って、仕事に臨んでいます。
ここでお伝えしておきたいのは、「つらさ=症状や疾患があること」ではありません。(実際、ササノさんも高血圧は治っていません。)治らない症状だって病気だって、世の中にはたくさんあります。
症状を抱えながら日々を過ごす患者さんが、生きづらく感じた時に「私で良ければ手を貸しますよ」とサポートに回るのが心療内科医の役目だと思っています。
心療内科医とは不思議な職業で、「世間からのニーズはある」と確信しているけれども、前述のとおり頭数はそんなにいません。
理由はたくさんあるんだけど、そのことはここでは議論しません。
私がここに立っているのは、心療内科を知ってもらいたい!!という一点なので、少しでも心療内科に興味を持ってもらえれば有り難いです。
診察場面をお伝えしたことで、患者さんのハードルが下がって受診してもらえればいいなと思っていますし、医療関係者の方々で「この医療、面白いんじゃ」と思ってもらえれば、一緒にお仕事出来たらいいなと思っています。
心療内科医たちもいろいろ策は考えているんです。
そもそも「心療内科が何か」を知ってもらえていない。
多くの方に知ってもらうには、どうしたらいいか。
当科のユニークな点のひとつに、「患者さんと治療者(医者や心理師)ごとに、治り方はたくさんある」というのがありまして、これが良いところでもあり、エビデンス(こう治療すると、効率がいいですよと言った研究結果)を集めにくいひとつの要因にもなっています。
これを逆手にとって、内輪でひとつの企画が立ち上がりました。
「患者さんの条件を固定して、治療者の条件を変えて、どう治っていくかの過程を小説にしよう」
つまり、例えばさっきのササノさんを「あもうが治療するとこうなる」、「別の医者が関わるとこうなる」、「心理師ならこう手伝う」というのをそれぞれ小説にしようというのがこの企画です。
作者は心療内科医、心理師、心療内科に知識のある他職種です。
COVID-19の影響で各々の職場が忙しくなり遅れていますが、近日公開予定です。このアカウントで告知しますので、興味を持たれた方は是非ご覧ください。
noteという場を借りて、心療内科の宣伝をしたようで大変恐縮ですが、一方で心療内科医たちは滅びてもいいかな、とも思っているんですよ。
「俺たちなんか、戦場カメラマンと一緒だ。需要がなくなるのが一番良い。もしも俺たちと同じスキルを全科の医師・心理師が会得したなら、そのときは滅びたらいい」
そう嘯く心療内科医もいるのです。私もその意見に賛成です。
なんかそれ、すごくカッコいいし。
でも、そんなカッコいい理由じゃなくて、人数が少ないというだけの理由で滅びようとしている!!!!
もうちょっと待って!! もう少し良さを語らせて!!
せめてそのカッコいい理由で滅びられる日まで、心療内科を繋いでいけますように。
私も日々研鑽を積んでいきます。