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34歳、入籍しました。

「30歳までに結婚しなきゃ」という、謎の圧力。

30歳手前で長く付き合った人と別れたことで、私はこの圧力から解放された。
解放はされたものの、恋愛とかもう怖い、めんどくさい。
と、積極的に相手を探すこともなく過ごすこと5年。
ご縁があった人と入籍することになった。

恋愛や結婚というテーマは自分にとっては重要で、一記事書きたいと何度か下書きに収めたことはあるが、結局今まで公開できなかった。
あまりに個人的すぎる、自分の奥深くまでさらけ出さなければならない話題だからだ。
人によって感じ方が大きく異なるセンシティブなテーマだと思うので、違和感や嫌な気持ちがしたら無理せず読むのをやめていただけたらと思う。


都市部出身で女系家族に生まれた私は、幸運なことに、「30歳までに結婚しなさい」と直接的に言われたことはない。
しかしどこで植え付けられたのか、20代の私は「30歳までに結婚しなきゃ」と思いこんでいた。
誰に言われたわけでもないが、確実に存在する謎の圧力。

30歳という節目が見えてきた頃、なんとなく焦りが出てきた私は、当時6年ほど付き合っていた人に結婚の話を切り出してみた。
しかし、結局うまくいかずに別れることに。
「ああ、ここからだとたぶん30歳までには結婚できないな」
そう確信した瞬間、私は謎の圧力から自由になった。

踏ん切りがついた頃にはコロナ禍が始まり、リアルで人と会う機会が減った。
正直一人でも自分の生活を成り立たせることは充分できるし、一人でいることも気楽だ。
謎の圧力ももうないし、人と会わない生活も苦ではない。
私は結婚に焦ることもなく、積極的に相手を探すこともしてこなかった。
正直、独り身で生きることよりも、誰かと付き合って別れることで、また辛い経験を重ねることの方が怖かった。


私がパートナーを選ぶ上で最も大事にしていた条件は、話し合いができるか、である。
友人に勧められてマッチングアプリに登録してみたこともあるが、大して盛り上がりもしないメッセージのやり取りが面倒すぎて、自分には合わないと思った。
そもそも最初にかけるフィルターが顔と年収である。
顔写真なんていくらでも嘘がつける。
お金はないよりある方がいい、かといって収入でその人の何が分かるというのか。
自分が自活できるだけの仕事はずっと続けていきたいし、相手にもその人自身の生活を成り立たせるだけの収入と生活力があれば充分だと思う。
それよりも、実際に話してみて相手のことを知らないと、その人と話が合うか、価値観が合うかなんて分からないじゃないか。

「アプリで表示される人全員とは会えないから、条件で絞り込んでやり取りする人、会ってみる人を決めるんだよ」と言われたらそのとおりだ。
でも、そこまでに至る過程が自分の性格と価値観に合わなすぎて無理だった。


めんどくさいことはいいから、利害が一致して長期的に支え合える関係性の人が現れればいいのに、とも思った。
例えば『逃げ恥』のような契約結婚とか、『SPY×FAMILY』のようにそれぞれの利益のために家族になる、とかである。
ただ、そんなシチュエーションはなかなかない。
利害の一致のみで家族として生活するうちに本当の家族の絆ができていくなんて、それこそファンタジーではないかとも思う。

現実的なところで、赤の他人が一緒に生活する場として、シェアハウスが真っ先に思い浮かぶ。
しかし内向的な自分には合わなそうで、試す勇気はいっこうに出なかった。
さらに、シェアハウスは結構短期で人が入れ替わっていくイメージがある。
私は10年単位くらいの長期的な関係を前提としたかったので、そういう意味でもなんか違うな、と思った。

アロマアセク(※)の男女が同居生活を送る『恋せぬふたり』のような暮らしもいいなあと思ったことがある。
(※)アロマンティック・アセクシュアル。他人に恋愛感情も性的欲求も持たない人のこと。

長期的な関係を前提にするなら、恋愛を下地にするかは問わない。
私の恋愛対象は男性だが、それを前提に女性と生活を共にしていくのもありなのではと考えたこともある。
(具体的に誰という人はおらず、あくまでそう考えていた、という話)

結局のところ、恋人が欲しいのではなく、日常生活、ひいては人生のそれなりの期間を共にするパートナーが欲しい、というのが正直な気持ちだった。


誰かと付き合って別れることで、また辛い経験を重ねることが怖い。
といっても、過去ものすごく酷い目にあったわけではない。
ただただ、終わった恋を長く引きずってしまう。
別れてから吹っ切れるまでが長いし、その後次の人と始まるまでには数年が空く。
お付き合いに発展しなくても(それが自分の決断だったとしても)後味がよくないと精神的に削られる。
一つひとつの恋愛を軽く流すことができないのだ。

一方、自分の生活を支えるだけの収入はあり、健康上の問題もなく、一人で楽しめる術はたくさん持っている。
一人ラーメン、一人アフタヌーンティー、一人海外旅行にだって行ける。
客観的に見ても私は独りで楽しく生きられる人だと思う。

「恋人よりパートナーが欲しい」というのは、また傷つくくらいなら、もう恋愛はしなくていいという思いの裏返しでもあった。
「独りで生きていける」と思っていたのは、ポジティブな事実でありつつ、恋愛コンプレックスの裏返しでもあった。
恋愛に近づかなかった期間は好きなことをして楽しく暮らしていたが、心の中では色々こじらせていたと思う。
こうして、一般的に結婚適齢期とされる時期は過ぎ去ろうとしていた。


パートナーと知り合ったのは、昨年出演した市民ミュージカルでのことだった。
(正確にはあと2年ほど遡るのだが、そのときはオンラインで30人くらいいるうちの一人にすぎず、終わったら解散だったので、別に何もなかった)
ミュージカルの本番が終わったあと、紆余曲折あり今に至る。
恋愛や結婚というものに複雑な思いを抱いていたくせに、いざお付き合いしてみたら普通に恋愛できているので、なんとも都合のいい話である。

ちなみにこのnoteアカウントはパートナーに筒抜けなので、この記事は本人の了解を得た上で公開している。

私達はよくあるカップルのイメージからは比較的遠いところにいると思う。
私の方が5つも歳上だし、収入もある(社会人経験が長くて残業も多いから当然ではある)。
性格的には一般的な男女の傾向がそれなりに当てはまりつつも、私には男性的な面があり、彼には女性的な面がある。

彼は、家事はできる方がやるのが当たり前な考えでいてくれる。
同世代なら、ジェンダーの色眼鏡を取り払って家事を平等に分担するのはよくあることかもしれない。
とはいえ、私は一人暮らし歴が長く、家事は全て自力でやるのが当たり前だったので、自分で全部の家事をやらなくていいことに感動した。
私が残業にまみれているので、今のところ料理はほとんど作ってもらっていて感謝しかない。

私は、仕事は当然続けるもので、専業主婦はありえないと思っている。
専業主婦の方を批判するつもりはなく、家庭に集中するのは自分には退屈だろうと思っているだけでもある。
将来何らかの事情で彼の稼ぎが減ることがあったとしても、自分が働いて生活に必要なお金を稼げばいいと思っている。

彼は、名字をどうするかをフラットに考えてくれた。
名字については彼の生まれ順も影響しているが、本人の価値観も大きいと思う。
むしろ私は女性側が変えるものだという先入観があったから、自分の名字に揃えるという選択肢が示されたことに驚き、嬉しく思った。
結果的に私が名字を変える決断をしたが、女性側が自分の意思で決められることは今の時代においても珍しいだろうし、幸運なことだと思った。


私達こうありたいよね、と二人できちんと話したことはないが、個人的にはこんなことを思っている。

自立していたい。
一緒に過ごせる時間を慈しみつつ、それ以外の世界も尊重したい。
自分にできることはしっかりやるけど、何でも一人でやろうとせず、いい意味で依存することで真に自立できるはず。

対等でありたい。
率直に話し合える関係性でありたい。
そして感謝の心は忘れないようにしたい。

古い慣習に囚われず、自分達にとってベストな形を採りたい。
社会とうまくやっていくために、結果として慣習を受け入れる選択をすることはあると思う。
けれどもしっかり考えて納得した上での「慣習を受け入れる」という決断でありたい。


もとは赤の他人である、目の前にいるたった一人に対して、「幸せでいてほしい」と心から願えることは素晴らしいことだ。

年月を重ねる中で、意見が合わないこともあるし、大変な思いをすることもあるし、元気でいられず思いやりが持てなくなるときもあるのだろう。
とはいえ最終的にはどうにかなると信じている。
この決断が正解だったと思えるように、これからも日々を積み重ねていけたらと思う。


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