ipadに残ってた
呼吸法
春は通り過ぎていく。
立ち止まっている時間は少なく、冬から夏へと通り過ぎるだけの通り道だ。背中が焼ける。
三月に買った黒いジャケットは気に入っているけれど、春の光線には不向きだった。大抵の人は次の日の天気を気にして洋服を選ばない。昨日からきているこの服だってそうだ、昨日は確か20度もなかった気がする。太陽の光はジャケットに吸収され、じんわりと背中に広がる。
ビルとビルの間を風が勢いよく通り抜けた。空気はまだ太陽の熱を持たず、どこか冬の冷たさがまだ残っている。朝の光は青