回転の仕方

人と話さない買い物って好きだ。もしくは機械的な対応をされること。自分の中にある高ぶりや寂しさが地続きになまま誰にも侵されないのがいい。それだけ自分が感情に浸りたいドラマチックな性格なのかもしれないなぁとも思うけど。

ユニクロがセルフレジを導入したのが気に入っていて、設置してある店舗でよく服を買う。

笑っちゃうくらい安くなってる服を適当に見繕って、一人でレジへ持っていく。なんとなく出かけて、なんとなく知らない人に会って、なんとなくその人の家で一晩泊まる時、次の日の服が足りない時にはちょうどいい。
ユニクロのセルフレジは小さなプールのような形をしていて、中に服を入れておくと勝手に金額を計算する。どういう仕組みかは知らないが、すごくハイテクなんだろうと思う。
静かに服を入れると機械がうまく作動しないことがあり、私は小さく折りたたんだ服をプールの中で泳がせるように振ってみる。
画面にぴょこんと金額が表示されて、私はカードを差し込む。次の瞬間には会計が終わっていて、プールの底に洋服が横たわっている服をカバンの中に詰め込み、店を後にする。
1番近いトイレで服を脱ぎ、カバンから汗拭きシートを取り出して汗を拭う。買ってきた服に着替えて、もらってきた袋に着てきた服を詰め込む。どうでもいい下着なんかはゴミ箱に捨ててしまう。
それから人に会って、エトセトラエトセトラ。

人と会っている間中、眠っている間にも、私にはこの意味のない一連の行動が、私の記憶の中にしか存在しないのだということに安心感、優越感を感じる。
私は私、という境界線を引いたような気持ちになる。人に知られるということと、知られることのない何かをするということはネガとポジの関係にあって、DNAみたいに互いを複製する。私の中の塩梅がちょうど良くなるように調整されていく。バランスが整うことは一瞬だけ、すぐにどちらかが欠けていく。

私はまた別のくだらない遊びをして、誰かに自分のことを語る。そういう風に回り続ける。

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