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YouTubeのCC字幕機能の廃止にNO!〜米国ろう者YouTuberからの指摘と提案〜

ろう者YouTuberのリッキー・ポインターが、2020年5月2日に「YouTubeがCC字幕機能廃止を検討中」として問題提起をしたものを紹介する。すでに9月28日よりCC機能は廃止されたが、この問題(※文末リンク2)はコロナ禍でとくに情報脆弱者となりやすいマイノリティにとって、声を上げ続けていかなければならないことだ。https://tinyurl.com/y2upx9kz に私がCCでつけたので日本語字幕ONにしてご覧頂きたい。

CC字幕機能廃止?
障がい者を無視するユーチューブとグーグル

GoogleとYoutubeが「CC機能」の廃止を検討中と発表した。CCとは「Community Contribution=コミュニティによる貢献」という意味で、視聴者による字幕つけ機能のことだ。これにより口語を読めるようにしたり、多言語翻訳が可能となる。
 廃止の理由は、機能を悪用したいたずらが多く、利用者が少ないからだ。私自身も嫌がらせを報告したことがあり、その際に「懸念している」との回答を得たので、その後の改善を期待していた。しかし、今回機能自体の廃止を検討中と聞いて驚いている。しかもこれをYouTube動画で字幕もつけずに発表したので、他の方に要約していただくまで私には理解できなかった。現存機能を残す資金や、専属で字幕をつける人を雇うぐらいできる大企業なのに。

CC機能はアクセシビリティを向上させた

 現状では動画の更新に忙しくて字幕入力まで手が回らない人や、障がいがあって字幕つけのバイトを頼む金銭的な余裕のない人がほとんどだ。CC機能は、視聴者が作業に貢献して動画作成者を支える仕組みだ。私自身も視聴者に作業をしていただいたことがある。
 もちろん、現存のCC機能は完璧ではなく、読みにくさや文法の間違いは生じている。それでも環境や条件の違う人々が動画を楽しめている。たとえば、ろう者はバリアを感じずに済む。機能廃止はその人たちを切り捨てるものだ。

提案1: 字幕を必要とする人の意見があってこそ「皆様のご意見」だ

2社はこの決定を下すにあたって「皆様のご意見を伺いながら…」と繰り返すが、「皆様」とは誰のことか?おそらく健常者で金銭的余裕のある人のことであり、障がい者や字幕の必要な人の意見は含まれていない。字幕は大切な道具であり、私のように字幕なしでは理解できない人もいる現状を知り、意見を聞いてほしい。私からは「使いやすいデザインやいたずら防止の教育に向けた改善を。」とも提案した。


提案2: 当事者への教育を行い、字幕機能の正しい利用を広めよう

YouTubeはたくさんのハウツー動画を出しているが、なぜかその多くには字幕がない。機能を必要とする人自身が勉強する仕組みがないのだ。もし障がい者が教えてもらえたなら、このバリアを取り除ける。当事者に字幕つけの余裕がないなら、誰かが代りに作業すれば、すべてのビデオに字幕がつけられる。これは周知すべき会社側の怠慢であり、教育がなければいたずらも増え、機能を使う人が少ないのも当然だ。

提案3: 字幕を必要とする人を雇用しよう

2社はおそらく障がい者の動画作成者や視聴者について調べたり、意見交換はしていないだろう。それなら障がい者として議論してきて、この機能に詳しく、字幕の必要な私を雇うべきだ!こうまでして訴えるのは、しつこく言わないと前に進めないからだ。私たちを無視するなら、他の障がい者たちと本社を訪れたいと考えてる。

提案4: 障害を持つアメリカ人法 (ADA)を守ろう

字幕廃止に反対する私たちを「字幕をお好きな方」と表現したことは許されない。アクセシビリティは、趣味趣向の問題ではない。「字幕廃止によって投資収益率の向上を計り、皆様全体の利益を考えたい」だなんて、健常者お得意の言い回しだが「認知度の低さ」を盾にしてはいけない。「障がい者の皆さんとも素晴らしい未来を築きたい」と言うなら、IT業界は自分たちの思い描く「アクセシビリティ」を優先させるより、現存の機能を向上させるべきだ。法律は私たちすべての権利を保障しており、それはインターネットでも同様だ。

皆さんも公式ビデオ(※文末リンク1)に「CC機能の廃止に反対」とコメントしてほしい。ビデオに対する意見として会社の記録に残る。SNSなどで #SaveCommunityCaptions (#CCを守ろう)というハッシュタグとともに、ビデオや字幕をつけてアクセシビリティの向上に貢献してほしい。一緒に前に進もう。


★リンク1: 「Special SNEAK PEEK: The Future of Community Captions?」(Creator Insider 2020年4月24日付)YouTubeによる「CC機能廃止」に向けた公式見解。日本語でもいいので「CC機能の廃止に反対」とコメントを!https://tinyurl.com/y2a89vln
★リンク2: 「YouTube、視聴者による字幕翻訳機能を9月に終了 国内外で反発広がる」(Yahoo!ニュース 2020年7月31日付) https://tinyurl.com/y56c6cn8

補足:音声による自動文字起こしの問題点

以上は札幌いちご会発行のいちご通信No.210(2020年10月号)に寄せた翻訳原稿である。

さて、CC機能に替わって採用された自動の文字起こし(クローズドキャプション)で、ポインター氏はろう者のことを中心として意見を述べたが、私も自動の文字起こしには以下のような問題点を見ている。

1) 音声認識の規準は健常者の発音を中心とする。「方言」や「言語障がい者」の言葉は認識されないことがある。世界中のありとあらゆる言葉を認識できるように、仕事として音声認識のための発話のバイトを私個人もしたことがある。しかし、そのような仕事に言語障がい者やデジタルにうとい人(そしてだいたいこういう仕事の斡旋は英語で行われる)は就かないだろうし、テストで落とされてしまうと思う。これはYouTubeの一般的なユーザー層とは実は大きな隔たりを作っていると感じる。

2) 一般的に字幕は「一瞥して内容をつかめるもの」だが、とくに日本語と英語のように文法が真逆の言語については、話題や使用語彙に馴染みのある訳者のつける字幕のほうが圧倒的に読みやすい。

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